市街地コースはモータースポーツイベントを開催するために公道(一般道)を閉鎖して作られた特設のサーキットです。『ストリート・サーキット』と呼ばれる場合もあります。
日本ではあまり一般的ではありませんが、海外では市街地コースは多く存在し、F1の開催地にもなっており、『F1モナコグランプリ』が有名です。
市街地コースの特徴
市街地コースではロードコースと同じようにレースイベントが行われますが、普段は公道として使用されている場所を使用するため、ロードコースよりも路面の凹凸が大きく、サーキット用の特殊なアスファルト舗装でもないことから、路面のグリップは低くなります。
また、雨天時の水捌け性能を向上させるためにカマボコ型の形状となっていることから、路面はフラットな形状ではないことが多いです。また、交差点を使用した90度の直角コーナーが多くなる傾向があります。
フォーミュラカーが一般道を走行すると、ダウンフォースによってマンホールや側溝の蓋が浮き上がることがあるため、それらはボルトや溶接で固定されます。
市街地コースはロードコースと異なり、広いエスケープゾーンを確保することが困難です。そのため、コースを外れるとそのままガードレールやコンクリートウォールにクラッシュすることになるため、市街地コースでのレースは完走率が低くなり、セーフティカーが導入される頻度が高くなります。その結果、荒れたレース展開になる傾向にあります。
出典:formula1.com
市街地コースでのF1の開催
市街地コースと言えば、F1モナコグランプリの開催である『モンテカルロ市街地コース』が有名ですが、F1ではモナコGPの他にシンガポールGPやアゼルバイジャンGPなど数多くの市街地コースでレースが行われています。
オーストラリアGPの開催地である『アルバートパーク サーキット』やカナダGPの開催地である『ジル ヴィルヌーヴ サーキット』は公園の周回道路を活用したサーキットであり、これらも市街地サーキットと言えます。
F1以外のレースカテゴリーでは、EVフォーミュラカーであるFormula Eは基本的にロードコースではなく市街地コースで開催されます。また、インディカーシリーズでも市街地コースで数多くのレースが開催されています。
マカオグランプリ
市街地コースで開催されるモータースポーツイベントとして、毎年11月にマカオの市街地を使用した『ギア・サーキット』で行われる『マカオグランプリ』が世界的に有名です。
特にF3マカオグランプリのレースは長い歴史があり、かつて、各国で開催されていたF3選手権の世界一決定戦に位置付けられていました。
1990年のミハエル・シューマッハ選手とミカ・ハッキネン選手のバトルは伝説となっており、2001年には佐藤琢磨選手が日本人ドライバーとして初めて優勝しました。
2019年、新たなFIA F3規定となった現在でもマカオでのレースは世界一決定戦の位置付けとして開催され、世界中の若手ドライバーが集まる注目のレースが開催されています。
近年ではFIA GT3車両によるFIA GTワールドカップやWTCR(世界ツーリングカーカップ)といった規模の大きなレースも開催されています。
日本での公道レースの開催
世界では市街地コースを使ったレースが数多く開催されていますが、日本での公道を使ったレースの開催は実現に至っていません。
日本では道路交通法の影響により、公道を閉鎖することはできても、制限速度を大きく超える速度でのレースの開催を認めてもらうことが困難となっています。そのため、公道を使用した市街地コースでのレースの開催が難しいのが現状です。
最近では日本でも公道を使用して、レーシングカーによるデモランが開催されることはありますが、制限速度を守った範囲で行われています。
以前に沖縄県で公道を使用した特設の市街地コースでSUPER GTの開催が計画されたこともありましたが、未だに日本における市街地コースでのレース開催は実現に至っていません。
公道を閉鎖して開催されるラリーのようなスピード競技の開催は緩和される方向にありますが、警察と地元住民の協力がなくては実現できません。