セーフティカー

 

 

 


セーフティカーはコース上に危険な状態が存在し、レースを中断するまでもないときに導入されます。セーフティカー導入から解除の手順、導入中の禁止事項だけでなく、F1ではバーチャルセーフティカー(VSC)、WECではフルコースイエロー(FCY)の運用が始まり、SUPER GTでは独自の運用があるなど、ルールが複雑化していますので、わかりやすく解説します。

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セーフティカーが導入される時

コース上に危険な状態が存在し、レースを中断するまでもないとき、セーフティカーが導入されコース全域での追い越しが禁止されます。セーフティカー導入中にコース上の危険を除去する作業が行われ、安全が確認されるとレースが再開されます。セーフティカー導入は競技長の判断によって決定されます。

セーフティカーが導入される具体的な例としては以下のようなケースです。

  • アクシデントや車両のトラブルによりコース上に車両が停止した
  • スピンなどによりエンジンストールし再スタートできない車両がコース上に停止した。
  • 車両火災が発生した
  • 大雨によりレースの続行に危険がある
  • 停止車両がコース上でなくても、車両回収にあたりコースマーシャルに危険が及ぶ可能性がある
  • コース上に大きな落下物があり、コースマーシャルが回収するのが困難と考えられる場合

 

2015年F1シンガポールGPではコース上に侵入者が現れたため安全を考慮しセーフティカーが導入されました。

 

 

セーフティカーが導入されると

セーフティカーが導入されると、全てのオブザベーションポストで黄旗の振動とSCボードが提示され、コース全域で追い越しが禁止されます。

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セーフティカーがピットロード出口からコースインし、セーフティカーを先頭とした隊列を形成します。車両と車両の間隔は5車身を目安に走行しなければならず、不必要に前後の間隔を空けて走行している車両はペナルティの対象となります。

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セーフティカー導入中はコース全域が黄旗区間と同じような扱いとなるため、スピンやコースアウトしたりするとペナルティを科される場合があります。

アクシデントなどによりメインストレートの走行が困難な場合は、セーフティカーはメインストレートではなく、ピットロードを先導走行する場合があります。

 

 

順位は変わらないがタイム差はなくなる

セーフティカーが導入されると、コース上での追い越しは禁止されますが、セーフティカー先導となることにより走行速度はスローとなるため、セーフティカー導入前に築いてきた後方車両とのタイム差は無くなります。そのためセーフティカーが解除された後、レースは仕切り直しとなります。

最近導入されたF1のバーチャルセーフティカーやWECのフルコースイエローはセーフティカー先導ではなく、全車両の区間タイムや速度を規制することによって、各車両のタイム差をキープしたまま、レースを中断することなく速度を落とさせることに成功しています。

 

 

セーフティカーを追い越しても良い場合

セーフティカー導入中はセーフティカーを先頭とした隊列を形成して走行しますが、先頭のセーフティカーを追い越してもよい場合があります。

  • セーフティカーから合図された場合
  • セーフティカー導入時、ピットアウトしたセーフティカーが第2セーフティカーラインを超えていない場合
  • レース再開時、ピットインするセーフティカーが第1セーフティカーラインを超えた場合

セーフティカーの後方の車両がトップの車両ではない場合、セーフティカーはその車両を先に行かせるように合図することがあります。これは、そのままレースを再開するとトップの車両の前に周回遅れの車両が存在する状態となるため、レース展開を考慮した対応です。

セーフティカーを追い越しても良い合図はセーフティカーが緑色の回転灯を点灯させている時です。この時、セーフティカーの後ろを走行している車両はセーフティカーを追い越しても構いません。

 

 

セーフティカー中でも追い越しが許可される場合

セーフティカー導入中はコース全域で追い越しが禁止されますが、追い越しが認められるケースがあります。

  • ピットインする車両が第1セーフティカーラインを超えた場合
  • セーフティカースタートのとき、グリッドを離れる際に少し出遅れた車両は追い越して元の順位に戻ることができます。

 

 

セーフティカーライン

ピットロード入口付近に第1セーフティカーライン、ピットロード出口付近に第2セーフティカーラインが設定されますが、国内のJAF公認レースにおいてはセーフティカーラインの運用は行わないため、FIA公認レースを開催しないサーキットにおいては、セーフティカーラインの設定がないところもあります。

 

富士スピードウェイ

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(2016年 富士スピードウェイ一般競技規則書)

 

第1セーフティカーライン

ピットロード入口付近に第1セーフティカーラインが設定されています。ピットインしようとピットロードへ進入している車両は第1セーフティカーラインを超えたら追い越しても問題ありません。

同様に、レース再開時にピットインしようとピットロードへ進入しているセーフティカーも第1セーフティカーラインを超えたら追い越しても構いません。

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国際モータースポーツ競技規則 付則H項
(2016年3月11日発行版)

2.9 セーフティカー運用手順

2.9.2 - 第1セーフティカーライン:
ピットに進入しようとしている車両に、セーフティカーまたはトラック上を走行する他の競技車両の追い越しを許可するのが妥当と思われる位置。また、セーフティカーが介入終了時にピットに入った時に、競技車両がセーフティカーを追い越すことができる位置でもあること。

 

第2セーフティカーライン

ピットロード出口付近に第2セーフティカーラインが設定されています。ピットアウトしようとしている車両が第2セーフティカーラインを超えたらコース上の車両はそのピットアウト車両を追い越してはいけません。

同様に、セーフティカー導入時にコースインしようとピットアウトしているセーフティカーが第2セーフティカーラインを超えたら、コース上の車両はセーフティカーを追い越してはいけません。

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国際モータースポーツ競技規則 付則H項
(2016年3月11日発行版)

2.9 セーフティカー運用手順

2.9.2 - 第2セーフティカーライン:
ピットを離れようとする車両が、トラック上を走行している競技車両と同等の速度に加速すると思われる位置。従って、トラック上の車両は、このラインに到着する前であればピットを離れる他の車両を追い越すことができるが、ラインを超えてからの追い越しは許されない。 

 

JAF公認(国内格式)レースにおいての運用

国内のレースにおいてはセーフティカーラインの運用は通常行われていません。

国際モータースポーツ競技規則 付則H項
(2016年3月11日発行版)

2.9 セーフティカー運用手順

2.9.2 JAF公認競技会における措置:
JAF公認競技会においては、本項2.9.2の適用は行わない。ただし、国際格式競技については当該条項を適用することができる。その際には、当該競技会に関連する競技規則(選手権規定、シリーズ統一規則、競技会特別規則書など)に明記されなければならない。

 

スーパーフォーミュラでのセーフティカーラインの運用

JAFが発行する日本語版のH項に記載のあるとおり、JAFが公認するレースにおいてはセーフティカーラインの運用はありませんが、スーパーフォーミュラではセーフティカーラインの運用があります。

これは2015年に富士スピードウェイで開催されたスーパーフォーミュラ第3戦でセーフティカーが導入されたとき、セーフティカー解除のタイミングで第1セーフティカーラインを通過する前のセーフティカーを競技車両が追い越したことにより、ルールを明確化するために規定されたと言われています。

 

 

セーフティカー中のピットイン

国際モータースポーツ競技規則付則H項においてはセーフティカー導入中のピットインは可能です。SUPER GTなど、カテゴリーによってはセーフティカー導入中のピットインが禁止されている場合もあります。その時は特別規則書に規定されます。

セーフティカーを先頭とする隊列がメインストレートを通過するときはピットロード出口のシグナルが赤に変わりますので、その間はピットアウトすることができません。隊列が通過後にシグナルが緑に変わり、コースインすることができます。

 

 

セーフティカー解除の手順

 

レースコントロールでセーフティカー解除を決定

コース上の危険が取り除かれたあと、レースコントロールによって競技の再開が決定されます。セーフティカーの解除が決定しても、セーフティカーの回転灯が点灯している間はセーフティカー導入中と同様に隊列を形成して走行を行う必要があります。

 

セーフティカーの回転灯が消灯

セーフティカーの回転灯が消灯すると、その周回の最後でセーフティカーがピットインしレースが再開されることを意味します。セーフティカーの回転灯が消灯した時点で、隊列のペースは先頭の車両がコントロールすることができ、セーフティカーとの間隔を十分に空けます。セーフティカーも隊列を引き離すために速度を上げて走行します。

 

セーフティカーがピットイン

セーフティカーがピットインすると全てのポストで黄旗とSCボードが撤去され、続いて緑旗が振られレース再開となります。

 

レース再開 (コントロールライン通過まで追い越し禁止)

先頭の車両は自分のタイミングでレーシングスピードまで加速しレースが再開されます。全ての競技車両がコントロールラインを通過すると緑旗が撤去されます。

レース再開時、コントロールラインを通過するまでは追い越しが禁止されます。

F1においては第1セーフティカーラインを通過した時点でレースが再開したとみなして追い越しが許可されます。

 

 

2台のセーフティカーが導入される場合

1周の距離が7kmを超えるサーキットにおいては、2台のセーフティカーの使用が認められます。2台目のセーフティカーのコースインはピットロードではなく、あらかじめ決められたコースの中間地点付近からコースインします。

セーフティカーがピットインする時においてもピットロードへ入るのではなく、中間地点のポイントからコースアウトします。この中間地点にまセーフティカーラインがあり、このラインはインターミディエイトセーフティカーラインと呼ばれます。

 

国際モータースポーツ競技規則 付則H項
(2016年3月11日発行版)

2.9 セーフティカー運用手順決勝レースの非競技化

2.9.8 セーフティカー配備の命令が下された場合、セーフティカーの活動中、すべてのマーシャルポストは黄旗の振動表示と「SC」のボードを表示し、スタートライン上ではオレンジライトが点灯される。

2.9.9 セーフティカーはオレンジライトを点灯させながらピットレーンからスタートし、レースの先頭車両の位置に関係なくトラック上に合流する。

2.9.10 その後、すべての競技車両はセーフティカーの後方に隊列を作って整列し、その隊列はセーフティカーから車両5台分の距離で続き、以下の例外を除いて、セーフティカーがピットに戻った後車両がスタートライン(もしくは次の決勝レースの非競技化終了地点)に到達するまで追い越しは禁止される。
次の状況においては、追い越しが許される。

  • セーフティカーから合図された場合
  • 後述2.9.18の場合
  • ピットに進入する車両は、2.9.2に規定される第1セーフティカーラインを超えた後、他の車両およびセーフティカーを追い越すことができる。(※1)
  • トラック上を走行する車両は、ピットを離れる車両が2.9.2に規定される第2セーフティカーラインを超えるまではピットを離れる車両を追い越すことができる。(※2)
  • トラック上の車両は、セーフティカーがピットまたは各中間配置地点に戻る時、セーフティカーラインを通過すればセーフティカーを追い越すことができる。(※3)
  • セーフティカーがピットレーンを使用している間、指定されたガレージエリアに停車している車両を追い越すことができる。
  • 明らかに問題を抱えて車両がスローダウンしている場合。

JAF公認競技会における措置:
JAF公認競技会においては前述の(※1)~(※3)については、これを適用しない。ただし、国際格式競技については当該条項を適用することができる。その際には、当該競技会に関連する競技規則(選手権規定、シリーズ統一規則、競技会特別規則書など)に明記されなくてはならない。

2.9.11 セーフティカーが活動中、必要以上の減速走行、異常走行、またはいつなんどき他のドライバーへ危険が及ぶかもしれない走行をしている車両がある場合、審査委員会に報告するものとする。これにより当該車両がトラック、ピット入口、またはピットレーンのいずれを走行しているかを把握するものとする。

2.9.12 競技長から指示があった場合、搭乗するオブザーバーは、セーフティカーと先頭車両の間にいる車両に対してグリーンライトを使ってセーフティカーの前に出るよう合図する。これらの車両は減速したまま他の車両を追い越したりせず走行を続け、セーフティカー後方の隊列につく。
セーフティカーの後部にはレース先頭車両のゼッケンを表示する電気式制御パネルを取り付けることもできる。その表示がなされている時、セーフティカーと、表示されたゼッケンのレース先頭車両までの間の車両は、セーフティカーを追い越せる。

2.9.13 セーフティカーは、少なくとも先頭車両がその後方につき、残りの全車両がさらにその後方に整列するまで活動を続ける(なお、複数のセーフティカーが活動している時は、当該セーフティカーが受けもつ区間にいる全車両がその後方に整列するまで)。
セーフティカーの後方についたら、レース先頭車両(またはその区間の先頭車両)は車両5台分以内の車間距離で続き(後述2.9.15の状況下では除く)、残りの車両はできる限り詰めて隊列を保たなければならない。

2.9.14 セーフティカーが活動中、競技車両はピットレーンに進入できるが、ピットレーン出口の緑色灯火が点灯している時に限りトラックに再合流することができる。
セーフティカーならびにそれに続く隊列がピット出口を通過中、または通過しようとしている時以外は、緑色灯火は常に点灯している。トラックに再合流する車両は、セーフティカーに続く車両の隊列の末尾に到達するまで適切な速度で走行しなければならない。
特定の状況下では、競技長はセーフティカーにピットレーンの使用を要請できる。この場合、セーフティカーのオレンジライトが点灯していることを条件として、全車はセーフティカー後方に続いて追い越しをすることなくピットレーンに進まなければならない。この状況でピットレーンに入った車両は自己のガレージエリアに停車することができる。

2.9.15 競技長がセーフティカーを呼び戻す時は、セーフティカーはオレンジライトを消灯するものとする。これはセーフティカーがその周回を終了した時点でピットレーンに入ることの合図となる。この時点でセーフティカー後方に位置する先頭車両が走行ペースを決定することができ、必要であればセーフティカーとの車間距離を車両5台分以上としても構わない。
セーフティカーがピットに戻るまでの間、事故の可能性を回避するために、車上のライトが消灯された地点から、各ドライバーは、加速、減速、または他のドライバーを危険に晒したり再スタートを妨げたりする戦術的操作といった異常な行為を行なうことなく一定の速度で走行しなければならない。
セーフティカーがピット入口に進入すると同時に、マーシャルポストの黄旗とSCボードが撤去され、それらに代わり緑旗が振動表示され、スタートライン上と非競技化終了中間配置地点で緑色灯火が点灯する。これらは最終の車両がスタートラインを通過するまで表示される。
セーフティカーが複数台ある場合、呼び戻しは正確に同時進行させなければならない。

2.9.16 セーフティカーが活動中の各周回は、決勝レース周回として数えられる。

2.9.17 最終周回の開始時点でもまだセーフティカーが出動中である場合、あるいは最終周回に出動した場合、セーフティカーはその周回の終了時にピットレーンに入り、競技車両は追い越しすることなしにそのままの状態でチェッカーフラッグを受ける。

 

 

セーフティカースタート

雨などの影響により通常のスタート方法では危険と判断される場合は、レースコントロールは安全を考慮してセーフティカー先導によるスタートを決定します。また、レースが赤旗によって中断された後の再スタート方法もセーフティカースタートとなります。

 

セーフティカーのオレンジライト点灯がSCスタートの合図

セーフティカースタートの合図はフォーメーションラップ開始1分前の時点でグリッドの先頭に着けているセーフティカーがオレンジの回転灯を点灯させます。

通常のスタートの手順においてはフォーメーションラップ開始5分前にグリッド先頭のセーフティカーが走り出し、コースを1周回した後にグリッド最後尾に着きます。

そのため、フォーメーションラップ開始まで5分を切っているにもかかわらずセーフティカーがグリッド前方で留まっているとき、セーフティカースタートになる可能性が高いと言えます。

 

フォーメーションラップは行わない

セーフティカースタートの場合はフォーメーションラップはなく、セーフティカーが動きだした時点でレースが開始されます。

セーフティカーを先頭とした隊列が全車ピットロード出口付近を通過したら、ピットロード出口のシグナルが緑に変わり、ピットスタートの車両はコースインし、隊列の最後尾に加わることができます。

 

スタート後は通常のセーフティカーと運用は同じ

その後はセーフティカーの運用ルールと同じですが、再開は天候の状況を鑑みて判断されます。セーフティカー先導により何周も走行を行う場合もあれば、すぐに再開される場合もあります。

F1においては2017年のレギュレーション変更により、セーフティカースタート後のレース再開はスタンディングスタートによって行われることになりました。

 

国際モータースポーツ競技規則 付則H項
(2016年3月11日発行版)

2.9 セーフティカー運用手順
セーフティカー後方からのスタート

2.9.18
例外的な状況下では、決勝レースがセーフティカーの後方からスタートすることもある。この場合、1分前シグナルまでのいずれかの時点でオレンジライトが点灯する。これがドライバーに対してレースがセーフティカーの後方からスタートするという合図となる。
グリーンライトが点灯されると、セーフティカーはグリッドを発ち、全車両がセーフティカー後方に車両5台分以内の距離を保ちながらグリッド上でのオーダーのままでそれに従う。フォーメーションラップはなくなり、決勝レースはグリーンライトが点灯した時点でスタートする。第1周目に限って追い越しが認められるのは、ある車両がそのグリッドポジションから遅れた際に、他の残りの競技車両が著しく遅れをとらないためにその後方の車両が抜かざるを得ない場合にだけである。この場合、ドライバーは当初のスターティングオーダーに戻るためのみに追い越しを行うことができる。
セーフティカー後方の隊列の最終車両がピットレーン終了地点を通過した直後、ピット出口の灯火は緑色になるものとする。ピットレーン上の車両は、その時点でトラックに入り、セーフティカー後方の隊列に加わることができる。
グリッドを発つ際に出遅れたいかなるドライバーも、残りの車両がラインを通過した後でも停止した状態であれば、他の走行車両を追い越してはならず、セーフティカー後方の隊列の最後尾に整列しなければならない。複数のドライバーが該当する場合は、グリッドを離れた順に列の最後尾に整列しなければならない。
審査委員会の判断により、最初の周回で不要に他の車両を追い越したとされるいかなるドライバーに対してもタイムペナルティーが課される。

2.9.19
FIA国際モータースポーツ競技規則第8条3項に従いローリングスタートのためのオフィシャルカーとしてセーフティカーを使用することができる。これは、スタートについて規定している特別規則書が当該事項に適応している場合において、スタート合図が出された後、セーフティカーとしての役割に戻るまではオフィシャルカーとしてセーフティカーを使用することができるというものである。

 

 

バーチャルセーフティカー (VSC)

バーチャルセーフティカーはF1で2015年から採用されているルールで、セーフティカーを配備するほどではないけれども、コース上の特定の箇所で大幅に減速をする必要があるときに導入されます。

バーチャルセーフティカーの導入が決定されると、コース各地に設置してあるFIA灯火パネルに”VSC”が表示されると共に、レースコントロールから各チームへ”VSC DEPLOYED”のメッセージが配信されます。TV国際映像においても同様のメッセージが表示されます。

VSC中は全ての競技車両は減速しなければならず追い越しは禁止されます。そして、マーシャルセクター区間を予めFIAによって決められたタイムよりも遅いタイムで走行しなければなりません。

速度はGPSにより15メートルの移動毎の所要時間から算出され随時監視されています。違反したドライバーに対して、スチュワード(レース審査委員会)はペナルティを科すことができます。

マーシャルセクター区間とはコースの各所に設置されているFIA灯火パネル(VSCと表示されるデジタルフラッグ)から次のFIA灯火パネルまでの区間のことです。

レース中においてはタイヤ交換以外の目的でピットインすることが禁止されます。セーフティカー同様にバーチャルセーフティカー導入中もレースの周回数としてカウントされます。

バーチャルセーフティカーの終了手順は、まずレースコントロールから各チームへ”VSC ENDING”のメッセージが配信され、それから10〜15秒後にFIA灯火パネルが”VSC”から緑色に変わりVSC解除となります。

バーチャルセーフティカーは2014年第15戦F1日本グランプリで発生した、ジュール・ビアンキ選手の事故を受けて導入が検討されました。第17戦アメリカGPのフリー走行で試験的に導入され、2015年シーズンからバーチャルセーフティカーの運用が開始されました。

国際モータースポーツ競技規則付則H項ではダブルイエロー(黄旗2本振動)区間においては十分な減速をする必要がありますが、徹底されていない事実があるため、強制的に競技車両を減速させることを目的としています。

 

2017 F1 SPORTING REGULATIONS
(2017/4/30)

40) バーチャルセーフティーカー(VSC)

40.1 競技長の指示により、プラクティス走行(フリー走行、予選)あるいはレースを中立化するためにVSC手順が開始される場合がある。通常VSCが使われるのは、走路のいずれかの区間で二重の黄旗の振動表示が必要とされ競技参加者あるいは競技役員が危険に晒されている可能性があるが、セーフティカーを出動させることが正当化されるほどの状態ではない場合である。

40.2 VSC手順開始の指令が出されると、”VSC DEPLOYED”のメッセージが公式メッセージ送信システムにより全チームに送信され、FIAのすべての灯火パネルに”VSC”と表示される。

40.3 VSC手順が使用されている間、一切の車両は不要に遅くあるいは不規則な動きで、またはその他のドライバーもしくは一切の他者を危険に晒すような方法で運転されてはならない。これは、一切のそのような車両が、走路、ピット入り口あるいはピットレーンのいずれで運転されている場合にも適用される。

40.4 レース中に開始された場合、VSC手順が使用されている間は、タイヤ交換の目的以外で、車両はピットに進入することはできない。

40.5 すべての競技車両は減速し、各マーシャルセクターについて少なくとも1回は(マーシャルセクターは各FIA灯火パネルの間の走路の区画と定義される)、FIA ECUが設定した最低タイム以上をかけて走行していなければならない。さらに、VSC手順が使用されている間にピットレーンに入る一切のドライバーは、ピットレーンに入る第1セーフティカーライン地点でFIA ECUが設定した最低タイム以上でなければならない。
FIA灯火パネルが緑色に変わった時も、すべての車両はこの最低タイム以上でなければならない(下記第40条7参照)
レース中に開始された場合、競技審査委員会は、上記の最低タイム以上での走行をできなかった一切のドライバーに、第38条3項a)、b)、c)またはd)のいずれかのペナルティを課すことができる。

40.6 下記a)~d)に挙げられる場合を除き、VSC手順が使用されている間は、いかなるドライバーも他車を走路上で追い越すことはできない。
例外は:
a) ピットへ入ろうとしている時、第1セーフティカーラインに到達した後、走路に残っているその他の車両を追い越すことができる。

b) ピットを出ようとしている時、第2セーフティカーラインに到達する前で、ドライバーは走路にいるその他の車を追い越すことあるいは追い越されることができる。

c) ピット入り口、ピットレーンあるいはピット出口にいる場合、ドライバーはその3箇所のうちの1箇所にいるその他の車両を追い越すことができる。

d) 明らかな問題が発生して低速で走行する一切の車両がある場合。

40.7 競技長がVSC手順を終了させることが安全であると判断した場合、”VSC ENDING”のメッセージが公式メッセージ送信システムにより全チームに送信され、その後10秒から15秒後の任意の時にFIA灯火パネルに表示されている”VSC”が緑色に変わり、ドライバーは即時セッションあるいはレース継続をすることができる。30秒後、緑色のライトが消される。

40.8 VSC手順が進行中に完了されるレース中の各周回は、レースラップとして算入される。

 

 

フルコースイエロー (FCY)

WEC(世界耐久選手権)ではセーフティカーを導入するまでもないが、安全上の理由で必要であると判断した場合にフルコースイエロー(FCY)が導入されます。

フルコースイエローが導入されると、タイミングモニター上でメッセージが表示されると共に、全てのポストで黄旗の振動表示とFCYボードが提示されます。競技車両の車速は80km/hに制限され、1列の隊列を形成し、追い越しをすることなく走行する必要があります。

フルコースイエロー中のピットインは制限されませんが、ドライブスルーペナルティやペナルティストップを消化することはできません。

フルコースイエローの解除は、タイミングモニター上に解除のメッセージが表示されると共に、ポストで提示されていた黄旗とFCYボードが撤去され緑旗が提示されることによりドライバーやチームに知らせます。

2016 WEC SPORTING REGULATIONS 
(2016年4月8日発行版)

10.12 レースの非競技化:セーフティカー
10.12.1 フルコースイエロー “FCY”

a) レースディレクターは、安全上の理由で必要であると判断した場合は、フルコースイエロー期間を宣言することができる。一旦FCYの状態になると、車両は80kphに減速し、1列縦隊に整列し、前後の車両間 隔を維持する。FCYの間は、追い越しは厳禁とされる。モニター上にメッセージが表示されると直ちに、全車は減速しなければならない。すべてのマーシャルポストでは、黄旗の振動表示がなされ、FCYと記載されたボードも提示される。FCYが使用されている間に、不要に遅く、一定しない動きで、あるいはその他のドライバーに危険を及ぼす恐れがあるような方法で運転されている一切の車両は競技会審査委員会に報告される。これは、そのような車両が走路にある時、ピット入り口にある時あるいはピットレーン出口ロードにある場合にも適用される。

b) ピットレーンの出入り口は開放されたままとし、車両はピットへ自由に進入できる。ピットレーンに進入しようとする車両は、一旦第1セーフティカーラインを通過したならば、走路上の車両を追い越すことができる。ピットレーンを出ようとする車両は、第2セーフティカーラインに到達するまでは、その他の車両を追い越すことができる。ピットレーンの出入り口でも、速度は最大80kphに制限される。

c) 一旦問題が解決したならば、レースディレクターは、モニター上のメッセージ提示により、走路を緑信号に戻す。この時点で、すべてのマーシャルポストは、黄旗とFCYボードを緑旗の振動表示に変える。レースおよび追い越しは、制約を受けることなく、車両同士の位置関係やラインに対する車両の位置に関わりなく、通常に再開される。

d) FCY期間終了後も、問題が解決しておらず、安全面が危険にさらされている場合には、セーフティカーの介入がなされる。

e) FCY手順が実行されている時、ドライバーがドライブスルーおよび/あるいはストップ・アンド・ゴーのペナルティを消化する目的で、すでにピット入口にいない限り、FCY手順中にペナルティを消化することはできない。FCY手順中ドライバーがラインを通過した回数は、走路上でラインを通過できる最大回数に追加される。

 

 

SUPER GTにおけるセーフティカー運用手順

SUPER GTのセーフティカー運用ルールは基本的にH項に準拠していますが、独自の規定があるため複雑な運用になっています。

 

セーフティカーが導入されたら

競技長にの判断によりセーフティカーの導入が決定されたら、全てのオブザベーションポストにおいて黄旗の振動とSCボードの提示が行われ、コース全域で追い越しが禁止されます。同時にセーフティカーがピットロード出口からオレンジの回転灯を点灯させコースインします。競技車両はセーフティカーを先頭とした隊列を形成し走行を行います。これまでの手順はH項の運用手順と同じです。

クラス順に隊列を形成

SUPER GTではセーフティカーが導入されたら、メインストレートでGT500クラスとGT300クラスの隊列を形成し直します。他のカテゴリーには無い独自のルールです。

セーフティカーがコースインし1周回を走行し、最初にピットロード入口付近に差し掛かったらピットロード出口のシグナルが赤に変わります。

メインストレートでは競技役員がGT500とGT300のクラスボードを提示します。GT500クラスはイン側、GT300クラスはアウト側にボードが提示されます。GT500クラスはGT500クラスのボードの前に1列に停止し、GT300クラスはGT300クラスのボードの前に1列に停止します。

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続いて各クラスのトップ車両をクラス毎の隊列の先頭になるように、トップの前の周回遅れ車両をパスさせます。競技役員の指示とセーフティカーがオレンジライトを点灯させたままグリーンライトを点灯させることにより、周回遅れ車両に対してセーフティカーをパスするように知らせます。最初にGT500クラスの頭出しを行なったあとにGT300クラスの頭出しが行われます。

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全ての頭出しが完了するとセーフティカーが動き出します。セーフティカーの後にGT500、その後ろにGT300の隊列が続いて走行を再開します。頭出しの時にセーフティカーを追い越したGT500クラスの周回遅れ車両はGT300クラスの車両を追い越してGT500クラスの隊列の最後尾に着けることが認められています。

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この後の手順はH項に準拠します。コース上の危険が、取り除かれるまでセーフティカー先導による周回が行われ、セーフティカーのオレンジの回転灯が消灯すると次の周回からレース再開となります。セーフティカーの回転灯が消灯されたあとはトップの車両が隊列のペースをコントロールすることができます。

セーフティカーがピットインすると全てのオブザベーションポストで黄旗とSCボードが撤去され緑旗の振動が提示され、レース再開となります。このとき、コントロールラインを通過するまでは追い越しが禁止されます。

 

セーフティカー中のピットイン禁止

SUPER GTにおいてはセーフティカー導入中のピットインは禁止されています。黄旗とSCボードが提示されてからピットインすると60秒以上のペナルティストップが科せられます。

セーフティカーが導入される前に既にピットインしていた車両はピット作業が認められます。セーフティカーが1周回しピットロード入口に差し掛かる時にピットロード出口のシグナルが赤に変わるので、それまでにコースインすればタイムロスはありません。

レース再開の時、セーフティカーがピットインし、全てのオブザベーションポストで黄旗とSCボードが撤去され緑旗が提示された後から競技車両はピットインすることが許可されます。

 

 

セーフティカーの速度

TV中継を観ているとセーフティカーの速度はレーシングカーと比べてかなり遅いように感じますが、実際は100km/h前後の速度で走行しています。F1のように非常に速い速度で走行するカテゴリーではセーフティカーも競技車両に合わせて速い速度で走行する必要があります。

セーフティカードライバーにはひどい雨の中でもコースアウトやスピンしたりせずに走行し続ける必要があるため、高いドライビングスキルが求められます。

セーフティカーの速度は常に一定ではなく、セーフティカーが導入された直後は隊列を形成するために速度を落としたり、レースの再開が近づいてきたら競技車両のタイヤの温度を下げすぎないように速度を上げたりするなど、レースコントロールの指示に従い状況に応じて速度を変えて走行しています。

特にレース再開時にセーフティカーの回転灯が消灯した後は、競技車両との間隔を広げるために全開で走行する必要があります。

 

 

各シリーズのセーフティカー

通常、セーフティカーはレースを開催しているオーガナイザーの車両を使用しますが、専用の公式セーフティカーを採用しているレースカテゴリーもあります。車両は自動車メーカーがブランドイメージ向上を目的としてレースファンへのアピールするために供給しています。

F1の場合はF1マシンの走行を先導するにあたり、サーキット常設のセーフティカーでは走行速度が遅すぎてタイヤの温度が冷えてしまい安全面への影響が考えられるため、全レースで共通のセーフティカーを導入することになったと言われています。

F1 : Mercedes-Benz AMG GT S

出典:www.mercedes-benz.com

MotoGP : BMW M2クーペ

出典:www.motogp.com

WTCC : VOLVO V60ポールスター

出典:www.fiawtcc.com

SUPER GT :  Honda NSX
出典:supergt.net