2024年
SUPER GTではセーフティカーを導入するまでもないけれども、レースコントロールが安全上の理由で必要であると判断した場合に『フルコースイエロー(FCY)』が導入されます。
フルコースイエローが導入されると、コース全域で追い越しが禁止となり、速度が80km/hに制限されます。
すべての車両の速度が同時に80km/hに制限されるため、各車両のタイム差がキープされたまま、コース上の安全を確保することができます。
SUPER GTでは、2020年シーズンからフルコースイエローの導入に向けてテストが行われてきましたが、2021年の富士スピードウェイで開催された第2戦から実践での運用が始まりました。
2023年シーズンではレギュレーション変更により、最初にすべてのオブザベーションポストで『イエローフラッグ』が振られコース全域が追い越し禁止となり、次に『FCYボード』が提示され、コース全域で80km/hの速度制限となる運用へ変更されました。
2024年シーズンのSUPER GTのフルコースイエローは2023年シーズンの運用方法で行われます。
セーフティカー導入によるレース結果への影響
これまで、SUPER GTでは、コース上に車両がストップしてしまったなどの危険な状況が発生した場合、レースを中断することなく、安全にレースを継続するためにセーフティカーが導入されていました。
セーフティカーが導入されると、それまでのタイム差が無くなってしまうため、セーフティカー導入前にピットインを済ませていたチームが有利になってしまう場合がありました。
2019年 SUPER GT 第5戦 富士スピードウェイ
2019年に富士スピードウェイで開催されたSUPER GT 第5戦では、24号車のリアライズコーポレーションADVAN GT-Rがマシントラブルにより、ピットロード入口にストップしました。その後、車両から炎が上がり始め、セーフティカーが導入されました。
GT500クラスの2番手を走行していた6号車WAKO’S 4CR LC500は、ストップしている24号車を確認すると、セーフティカーが導入されることを予測し、ピットに飛び込みピット作業を完了させました。
SUPER GTではセーフティカーが導入されると、ピットインすることが禁止されます。この場合は、セーフティカー導入を知らせる『SCボード』と『イエローフラッグ』が提示される直前にピットインしたと判断されたため、問題無しと判定されました。
これにより、6号車はライバルよりも先行してピットインを完了することができたため、その後のレースを有利に進めることができ、このレースを勝利しました。セーフティカーの導入のタイミングが結果を決定したレースのひとつです。
2020年シーズンのFCY導入延期
SUPER GTではセーフティカーの導入によってレース結果が決まってしまったり、大きく変わってしまうケースがあり、フルコースイエローの導入が期待されていました。
そして、2020年シーズンのスポーティングレギュレーションにフルコースイエローの運用に関する内容が追加されました。
フルコースイエローの実践導入に向けて、公式テストや各大会の公式練習の後などでフルコースイエローのシミュレーションが行われることもありました。
しかし、各車両に搭載するフルコースイエローの情報を示すディスプレイに遅延が発生することがわかり、公平性を考慮して2020年シーズン中のフルコースイエローの運用は見送られることになりました。
SUPER GTでのフルコースイエロー実践運用
2021年 SUPER GT 第2戦 富士スピードウェイ
2021年シーズンの富士スピードウェイで開催された第2戦からSUPER GTでのフルコースイエローの実践での運用がスタートしました。
各車両間のわずかな速度差やフルコースイエロー導入を予測したピットインタイミングを変更する作戦などによって、有利、不利が発生したものの、従来のセーフティカーの導入時と比較して、レース結果への影響度は少なくなったと考えられます。
2023年シーズンにおけるレギュレーション変更
SUPER GTで2021年にFCYの運用が開始されてから、まず、すべてのオブザベーションポストで『FCYボード』が提示されコース全域で追い越し禁止となり、その後、FCYボードに加えて『イエローフラッグ』が追加され、コース全域で80km/hの速度制限となる手順で運用されてきました。
2023年シーズンのレギュレーション変更では、FCYボードとイエローフラッグの提示順が逆となり、まず、すべてのオブザベーションポストで『イエローフラッグ』が振られて、コース全域が追い越し禁止となり、その後、イエローフラッグに加えて『FCYボード』が提示され、コース全域で80km/hの速度制限となる手順へ改訂されました。
これまで、SUPER GTではFCY導入時にアクシデントが発生したこともあるため、安全を考慮してレギュレーションが変更された可能性もあります。
フルコースイエローが導入されるとき
2024年シーズンのSUPER GTにおけるフルコースイエローの運用方法について解説します。
フルコースイエローはセーフティカーと同様に、コース上やコース脇にストップしてしまった車両の撤去作業を行う場合など、セーフティカーを導入するほとではないけれども、ダブルイエロー(黄旗2本)での対応では作業を行うコースマーシャルに危険が及ぶとレースコントロールが判断した場合に導入されます。
セーフティカーの運用はレース中に限られており、公式練習や公式予選で運用されることはありません。公式練習や公式予選などでもフルコースイエローが導入される場合があります。
ただし、公式予選の場合は走行時間が短いため、フルコースイエローではなく、基本的にはレッドフラッグでセッションを中断した後で対応します。
フルコースイエローの導入
イエローフラッグの提示
(追い越し禁止)
FCY宣言の後、ただちにコース脇にあるすべてのオブザベーションポストで『イエローフラッグ』が振られます。
この時点からコース全域で追い越しが禁止されます。イエローフラッグだけが振られている状態では、速度に制限はありません。
ただし、このあと80km/hの速度制限が行われるため、減速する準備をしておく必要があります。
※FCY原因の現場の手前のポストではダブルイエロー(イエローフラッグ2本)を提示
FCYボード + イエローフラッグ
(制限速度80km/h + 追い越し禁止)
FCY宣言と同時にタイミングモニターやレースコントロール無線によってチームへフルコースイエローの導入が伝えられます。
すべてのオブザベーションポストでイエローフラッグが振られた後、FCYの導入に向けたカウントダウンが開始されます。SUPER GTでは、各車両に搭載されたディスプレイにおいてカウントダウンが表示されます。
カウントダウンがゼロになったタイミングで、すべてのオブザベーションポストでは、イエローフラッグに加えてFCYボードが提示されます。
この時点から、コース上での速度は80km/hに制限され、追い越し禁止も継続された状態となります。これがフルコースイエローの状態となります。
※FCY原因の現場の手前のポストではダブルイエロー(イエローフラッグ2本)を提示
フルコースイエローが導入されると
フルコースイエローが導入されると、車両の速度は80km/hに制限され、1列の隊列を形成し、追い越しをすることなく走行する必要があります。
セーフティカーが導入された場合、セーフティカーを先導とした縦列走行となるため、それまで築いてきたタイム差が無くなってしまいます。
フルコースイエローの場合はすべての車両に対して一斉に速度が80km/hに制限されます。そのため、フルコースイエロー導入前のタイム差がそのままキープされます。
フルコースイエローが導入されている間にストップしてしまった車両の撤去作業などを行います。
2021年 SUPER GT 第4戦 ツインリンクもてぎ
SUPER GTでは、フルコースイエロー導入中の各車両の速度をレースコントロールで認識できるようになっています。
SUPER GTでのフルコースイエロー実践運用の2戦目となったツインリンクもてぎで開催された2021年 SUPER GT 第4戦では、フルコースイエロー中の減速違反があったとして、違反したチームに対して、レース結果に40秒加算のペナルティが科せられました。
フルコースイエロー導入中はピットイン禁止
SUPER GTではFCYボードが提示されてから、フルコースイエロー解除の合図となるグリーンフラッグが振られるまでの間はピットインが禁止されます。フルコースイエロー導入中にピットインした場合は60秒以上のペナルティが科せられます。
フルコースイエローが導入される前にピットインしていた車両については、ピット作業後にコースインすることができます。
FCYボードが提示される前にピットロード入口付近に設定されている『第1セーフティカーライン』を越えていた車両はピットインすることが認められます。
ピットアウトする車両とメインストレートを走行する車両はピットロード出口に設定されている『第2セーフティカーライン』を超える前であれば、順位が入れ替わっても問題ありません。
セーフティーカーラインの運用
SUPER GTではこれまでセーフティカーラインの運用は行われてきませんでしたが、フルコースイエローの導入によってSUPER GTにおいてもセーフティカーラインの運用が行われるようになります。
セーフティカーラインについての説明はこちらの記事を参照してください。
フルコースイエロー導入中はペナルティを消化できない
フルコースイエローが導入されている間にペナルティストップペナルティやドライブスルーペナルティを消化することはできません。
ただし、FCYボードが提示されたときに、ピットロード入口に設定されている第1セーフティカーラインを超えていた場合は、ピットインをしてペナルティを消化することが認められます。
フルコースイエローの解除
フルコースイエローの導入中にストップ車両の撤去作業が完了したなど、コース上の危険な状態が取り除かれたとレースコントロールが判断したら、レースが再開されます。
レース再開に向けて、『フルコースイエロー解除宣言』がタイミングモニターやレースコントロール無線を通じてチームへ伝えられます。
そのあと、すべてのオブザベーションポストで提示されているFCYボードとイエローフラッグが撤去され、グリーンフラッグが振られます。これがフルコースイエロー解除の合図となり、レースが再開されます。
グリーンフラッグが振られるまでは80km/hの速度制限を守る必要があり、追い越しも禁止されます。
グリーンフラッグ
(FCY解除)
セーフティカーへの切り替え
フルコースイエローが導入された後、レースコントロールがコース上の危険な状況が解消されないと判断した場合は、フルコースイエローからセーフティカーの導入へ切り替わる場合があります。
その場合は、フルコースイエロー導入中にセーフティカーがコースインし、GT500クラスの先頭車両の前に介入します。そのあと、オブザベーションポストで提示されているFCYボードが『SCボード』に切り替わります。
イエローフラッグの振動はそのまま継続されます。この時点でフルコースイエローは終了し、セーフティカーの導入に切り替わるため、この時点で80km/hの速度制限は解除されます。その後は、セーフティカーの運用に切り替わります。
フルコースイエローの運用ルールの追加
2022年シーズンからフルコースイエロー導入中に他の車両と並走状態にならないこと、80km/hの速度を保つことができない場合についてのルールが明文化されました。
- FCYボード提示後サイドバイサイドの位置にある場合、FCY走行中は後方の車両は前方車両の全長分から後方にさがる事
- FCY宣言の解除(緑旗提示)前に前走車の側方全長内を走行し緑旗提示後に追い抜く為のアドバンテージを得てはならない。
- 何らかの理由により速度を保てない場合は、後続車両にウインカーで意思表示をして走路をゆずること。
- 80km/hの速度を保つ事を怠り、前走車から大きく遅れる事で他車に明らかな不利益を与えないこと。
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