2024年 F1 第24戦 アブダビGP 開催概要

 

2022年 F1の『バーチャル・セーフティカー (VSC)』の運用ルール

2022年

 

2023年シーズンの内容については
こちらを参照ください。

 

バーチャル・セーフティカー(VSC)は、セーフティカーを導入するほどではないけれども、コース上に何らかの危険な状態があり、ドライバーやコースマーシャルの安全を確保するため、ダブルイエロー(イエローフラッグの2本振動)での対応では不十分と判断された場合に導入されます。

バーチャル・セーフティカーはF1で2015年から導入されている独自のルールです。

 

 

 

バーチャル・セーフティカーが導入される時

バーチャル・セーフティカーはコース上の危険な状況に対して、イエローフラッグでの対応では、ドライバーやコースマーシャルに危険を及ぼす可能性があると判断され、かつ短時間でコース上の危険を除去できるような場合に導入されることが多いです。

セーフティカー(SC)なのか、バーチャル・セーフティカー(VSC)なのか、イエローフラッグなのか、状況に応じてどのような方法で対応するのかレースディレクターが判断します。

以下のような場合に、バーチャル・セーフティカーが導入されることがあります。

 

コース脇にマシンがストップした場合

トラブルなどでマシンがコース脇にストップした場合、マシンの撤去作業を行うために、バーチャル・セーフティカーが導入される場合があります。

コースマーシャルが待機するガードレールの開口部の近くのような比較的安全な場所にマシンがストップした場合、バーチャル・セーフティカーが導入され、コースマーシャルが手押しでマシンの撤去作業を行う場合があります。

ホイールローダーのような重機を使ってマシンの撤去作業を行う場合も、安全のため、バーチャル・セーフティカーもしくはセーフティカーを導入する場合が多いです。

 

コース上の落下物を撤去する場合

コース上に破損したマシンの破片などの落下物があり、安全にレースを継続できないと判断された場合は、落下物を撤去するために、バーチャル・セーフティカーが導入される場合があります。

バーチャル・セーフティカーが導入されると、各車両のスピードが遅くなるため、その間に、コースマーシャルが落下物の撤去を行います。

かつては、コースマーシャルがコース上の落下物の撤去をする場合、イエローフラッグで対応していましたが、現在のF1では安全を考慮して少なくともバーチャル・セーフティカーを導入しています。

 

 

バーチャル・セーフティカーの導入

レースコントロールでバーチャル・セーフティカーの導入が決定されると、コース各地に設置してあるFIA灯火パネル(デジタルフラッグ)に『VSC』の表示が行われます。

同時に、レースコントロールから各チームへ『VSC DEPLOYED』のメッセージが配信されます。国際映像においても同様のメッセージが表示されます。

 

バーチャル・セーフティカーが導入されている間、すべて車両は減速して走行しなければならず、追い越しが禁止されます。そして、マーシャルセクター区間をあらかじめFIAによって決められたタイムよりも遅く走行しなければなりません。

マーシャルセクター区間とはコースの各所に設置されているFIA灯火パネル(VSCと表示されるデジタルフラッグ)から次のFIA灯火パネルまでの区間のことです。

各車両の速度がGPSによって15メートルの移動毎の所要時間から算出され、随時監視されています。違反したドライバーはペナルティが科せられる場合があります。

レース中においてはタイヤ交換以外の目的で、バーチャル・セーフティカー導入中にピットインすることが禁止されます。セーフティカー導入時と同様にバーチャル・セーフティカー導入中もレースの周回数としてカウントされます。

セーフティカーはフリー走行や公式予選では導入されず、レース中だけの運用となりますが、バーチャル・セーフティカーはレース中だけでなく、フリー走行の間にも導入することができます。

 

 

バーチャル・セーフティカーの解除

コース上の危険な状況が解消されると、レースコントロールはバーチャル・セーフティカーを解除します。

バーチャル・セーフティカーはいきなり解除の状態になるわけではなく、まず、レースコントロールから各チームへ『VSC ENDING』のメッセージが配信されます。タイミングモニターや国際映像においても同様のメッセージが表示されます。

 

『VSC ENDING』のメッセージが表示されてから、10秒から15秒が経過した後、FIA灯火パネルが『VSC』の表示からグリーンの点滅に変わります。この時点からバーチャル・セーフティカーが解除となります。

 

 

バーチャル・セーフティカー導入の経緯

バーチャル・セーフティカーは2014年に鈴鹿サーキットで開催されたF1 第15戦 日本グランプリで発生した、マルシャのジュール・ビアンキ選手の事故を受けて導入が検討されました。

ダンロップコーナーでタイヤバリアにクラッシュしたザウバーのエイドリアン・スーティル選手の車両の撤去作業を行っている時、ジュール・ビアンキ選手が雨の影響によりコントロールを失い、作業を行っていたホイールローダーと衝突しました。

2014年のF1第17戦アメリカGPのフリー走行でバーチャル・セーフティカーが試験的に導入され、2015年シーズンからバーチャル・セーフティカーの正式運用が開始されました。

国際モータースポーツ競技規則 付則H項ではダブルイエロー(イエローフラッグの2本振動)の区間においては十分な減速をする必要がありますが、減速が不十分である場合があるため、すべての車両を強制的に減速させることでレースの安全性と公平性を両立することが目的であると考えられます。

 

 

フルコースイエロー(FCY)との違い

他のレースカテゴリーではバーチャル・セーフティカーではなく、『フルコースイエロー (FCY)』の導入が拡大しています。バーチャル・セーフティカーとフルコースイエローの基本的には同じですが、制限される速度が異なります。

バーチャル・セーフティカーはマーシャルセクター区間を通過するタイムと速度が監視されます。具体的に速度が○○km/hに制限されるわけではありません。

フルコースイエローはすべての車両の速度が制限されます。レースカテゴリーごとに制限される速度に違いはあります。例えば、SUPER GTではフルコースイエロー導入中の制限速度は80km/hですが、スーパー耐久では60km/hと定められています。

バーチャル・セーフティカーとフルコースイエローにわずかな違いはありますが、導入されると、どちらも一斉にすべての車両に対して制限速度が設定されると理解しておいて問題ありません。

 

 

 

レギュレーション

2022 FORMULA 1 SPORTING REGULATIONS

2022/3/15発行版

56) VIRTUAL SAFETY CAR (VSC)

56.1 The VSC procedure may be initiated to neutralise a practice session, sprint session or a race upon the order of the clerk of the course.

a) It will normally be used when double waved yellow flags are needed on any section of track and Competitors or officials may be in danger, but the circumstances are not such as to warrant use of the safety car itself.

56.2 When the order is given to initiate the VSC procedure a message “VSC DEPLOYED” will be sent to all Competitors using the official messaging system and all FIA light panels will display “VSC”.

56.3 No car may be driven unnecessarily slowly, erratically or in a manner which could be deemed potentially dangerous to other drivers or any other person at any time whilst the VSC procedure is in use. This will apply whether any such car is being driven on the track, the pit entry or the pit lane.

56.4 When initiated during a sprint session or a race, no car may enter the pits whilst the VSC procedure is in use unless it is for the purpose of changing tyres.

56.5 All competing cars must reduce speed and stay above the minimum time set by the FIA ECU at least once in each marshalling sector and at both the first and second safety car lines (a marshalling sector is defined as the section of track between each of the FIA light panels).

All cars must also be above this minimum time when the FIA light panels change to green (see Article 56.7 below).

When initiated during the sprint session or a race, the stewards may impose any of the penalties under Article 54.3a), 54.3b), 54.3c) or 54.3d) on any driver who fails to stay above the minimum time as required by the above.

56.6 With the exception of the cases listed under a) to d) below, no driver may overtake another car on the track whilst the VSC procedure is in use.

The exceptions are:
a) When entering the pits a driver may pass another car remaining on the track after he has reached the first safety car line.

b) When leaving the pits a driver may overtake, or be overtaken by, another car on the track before he reaches the second safety car line.

c) Whilst in the pit entry, pit lane or pit exit a driver may overtake another car which is also in one of these three areas.

d) If any car slows with an obvious problem.

56.7 When the clerk of the course decides it is safe to end the VSC procedure the message “VSC ENDING” will be sent to all Competitors via the official messaging system and, at any time between 10 and 15 seconds later, “VSC” on the FIA light panels will change to green and drivers may continue the session or continue racing immediately. After 30 seconds the green lights will be extinguished.

56.8 Each lap completed whist the VSC procedure is in use during a sprint session or the race will be counted as a lap.

 

 

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