2021年
2022年シーズンの内容については
こちらを参照ください。
SUPER GTではセーフティカーを導入するまでもないけれども、安全上の理由で必要であると判断した場合に『フルコースイエロー(FCY)』が導入されます。
フルコースイエローが導入されると、コース全域で追い越しが禁止となり、速度が80km/hに制限されます。
すべての車両の速度が同時に80km/hに制限されるため、各車両のタイム差がキープされたまま、コース上の安全を確保することができます。
セーフティカー導入によるレース結果への影響
これまで、SUPER GTでは、コース上に車両がストップしてしまったなどの危険な状況が発生した場合、レースを中断することなく、安全にレースを継続するためにセーフティカーが導入されていました。
セーフティカーが導入されると、それまでのタイム差が無くなってしまうため、セーフティカー導入前にピットインを済ませたチームが有利になってしまいます。
2019年 SUPER GT 第5戦 富士スピードウェイ
2019年に富士スピードウェイで開催されたSUPER GT 第5戦では、24号車の李アライズコーポレーションADVAN GT-Rがマシントラブルにより、ピットロード入口にストップしました。その後、車両から炎が上がり始め、セーフティカーの導入が決定されました。
2番手を走行していた6号車WAKO’S 4CR LC500は、ストップしている24号車を確認するとセーフティカーが導入されることを予測し、ピットに飛び込みピット作業を完了させました。SUPER GTではセーフティカーが導入されると、ピットインすることが禁止されます。この場合は、セーフティカー導入の合図となる『SCボード』と『イエローフラッグ』が提示される直前にピットインしたと判断されたため、問題無しと判定されました。
これにより、6号車はライバルよりも先行してピットインを完了することができたため、その後のレースを有利に進めることができ、このレースを勝利しました。セーフティカーの導入のタイミングが結果を決定したレースのひとつです。
2020年シーズンのFCY導入延期
SUPER GTではセーフティカーの導入によってレース結果が決まってしまったり、大きく変わってしまうケースがあり、フルコースイエローの導入が期待されていました。
そこで、2020年シーズンのスポーティングレギュレーションにフルコースイエローの運用に関する内容が追加されました。フルコースイエローの導入に向けて、公式テストや各大会の公式練習の後などでフルコースイエローのシミュレーションが行われることもありました。
しかし、各車両に搭載するフルコースイエローを示す情報を示すディスプレイに遅延が発生することがわかり、公平性を考慮して2020年シーズン中のフルコースイエローの運用は見送られることになりました。
SUPER GTでのフルコースイエロー実践運用
2021年 SUPER GT 第2戦 富士スピードウェイ
ついに、2021年シーズンの富士スピードウェイで開催された第2戦からSUPER GTの決勝中に初めてフルコースイエローが運用されました。
各車両間のわずかな速度差やフルコースイエロー導入を予測したピットインタイミングを変更する作戦などによって、有利、不利が発生したものの、従来のセーフティカーの導入時と比較して、レース結果への影響度は少なくなったと考えられます。
フルコースイエローが導入されるとき
2021年シーズンのSUPER GTにおけるフルコースイエローの運用方法について解説します。
セーフティカーの運用はレース中に限られており、公式練習や公式予選で運用されることはありません。公式練習や公式予選などでもフルコースイエローが導入される場合があります。
SUPER GTのレギュレーションである『2021 SUPER GT Sporting Regulations』には、フルコースイエローの導入は”レース中”と定められていますが、実際には、レース中以外のセッションにおいてもフルコースイエローが導入される場合があるようです。
ただし、公式予選の場合は走行時間が短いため、フルコースイエローではなく、レッドフラッグでセッションを中断するのが妥当と考えられます。
フルコースイエローの導入
FCYボードの提示
(追い越し禁止)
※FCY原因の現場の手前のポストではダブルイエロー(イエローフラッグ2本)を提示
FCYボード + イエローフラッグ
(制限速度80km/h + 追い越し禁止)
FCY宣言と同時にタイミングモニターやレースコントロール無線によってチームへフルコースイエローの導入が伝えられます。
FCYボードが提示された後、FCYの導入に向けたカウントダウンが開始されます。SUPER GTでは、各車両に搭載されたディスプレイにおいてもカウントダウンが表示されます。
カウントダウンがゼロになったタイミングで、すべてのオブザベーションポストでは、FCYボードに加えてイエローフラッグの振動が提示されます。
この時点から、コース上での制限速度は80km/hに制限され、追い越しの禁止も継続された状態となります。この状態がフルコースイエローの状態となります。
フルコースイエローが導入されると
セーフティカーが導入された場合、セーフティカーを先導とした縦列走行となるため、それまで築いてきたタイム差が無くなってしまいます。
フルコースイエローの場合はすべての競技車両に対して一斉に速度が80km/hに制限されます。そのため、フルコースイエロー導入前のタイム差がそのままキープされます。
フルコースイエローが導入されている間にストップしてしまった車両の撤去作業などを行います。
2021年 SUPER GT 第4戦 ツインリンクもてぎ
SUPER GTでは、フルコースイエロー導入中の各車両の速度をレースコントロールで認識できるようになっています。
SUPER GTでのフルコースイエロー実践運用の2戦目となったツインリンクもてぎで開催された2021年 SUPER GT 第4戦では、フルコースイエロー中の減速違反があったとして、違反したチームに対して、レース結果に40秒加算のペナルティが科せられました。
フルコースイエロー導入中はピットイン禁止
SUPER GTではFCYボードが提示されてから、フルコースイエロー解除の合図となるグリーンフラッグが振られるまでの間はピットインが禁止されます。フルコースイエロー導入中にピットインした場合は60秒以上のペナルティが科されます。
フルコースイエローが導入される前にピットインしていた車両については、ピット作業後にコースインすることができます。FCYボードが提示される前にピットロード入口に設定されている『第1セーフティカーライン』を越えていた車両はピットインすることが認められます。
ピットアウトする車両とメインストレートを走行する車両はピットロード出口に設定されている『第2セーフティカーライン』を超える前であれば、順位が入れ替わっても問題ありません。
セーフティーカーラインの運用
SUPER GTではこれまでセーフティカーラインの運用は行われてきませんでしたが、フルコースイエローの導入によってSUPER GTにおいてもセーフティカーラインの運用が行われるようになります。
セーフティカーラインについての説明はこちらの記事を参照してください。
フルコースイエロー導入中はペナルティを消化できない
フルコースイエローが導入されている間にペナルティストップペナルティやドライブスルーペナルティを消化することはできません。
ただし、FCYボードが提示されたときに、ピットロード入口に設定されている第1セーフティカーラインを超えていた場合は、ピットインをしてペナルティを消化することが認められます。
フルコースイエローの解除
フルコースイエローの導入中にストップ車両の撤去作業が完了したなど、コース上の危険が取り除かれたと判断されたらレースが再開されます。
レース再開に向けて、フルコースイエロー解除宣言がタイミングモニターやレースコントロール無線を通じてチームへ伝えられます。そのあと、すべてのオブザベーションポストで提示されているFCYボードとイエローフラッグが撤去され、グリーンフラッグが振られます。これがフルコースイエロー解除の合図となり、レースが再開されます。
グリーンフラッグが振られるまでは80km/hの速度制限を守る必要があり、追い越しも禁止されます。
グリーンフラッグ
(FCY解除)
セーフティカーへの切り替え
フルコースイエローが導入された後、レースコントロールがコース上の危険な状況が解消されないと判断した場合は、フルコースイエローからセーフティカーの導入へ切り替わる場合があります。
その場合は、フルコースイエロー導入中にセーフティカーがコースインし、GT500クラスの先頭車両の前に介入します。そのあと、オブザベーションポストで提示されているFCYボードが『SCボード』に切り替わります。
イエローフラッグの振動はそのまま継続されます。この時点でフルコースイエローは終了し、セーフティカーの導入に切り替わるため、この時点で80km/hの速度制限は解除されます。その後は、セーフティカーの運用に切り替わります。
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