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2021年 F1 第11戦 ハンガリーGP セバスチャン・ベッテル選手の失格

 

セバスチャン・ベッテル選手の失格

ハンガロリンクで開催された2021年第11戦ハンガリーGPでは、フォーメーションラップ開始直前に降り出した雨による滑りやすい路面によって、スタート直後に多重クラッシュが発生し、レッドフラッグが振られました。

メルセデスのルイス・ハミルトン選手1台だけのスタンディングスタートによってレースは再開され、オーバーテイクしづらいハンガロリンクにも関わらず、レースはエキサイティングな展開となりました。

レース後には、2位でフィニッシュしたアストンマーティンのセバスチャン・ベッテル選手のマシンに技術違反があったとして、ベッテル選手は失格となってしまいました。

今回は、ベッテル選手の技術違反について解説してみます。

 

 

1リットルの燃料サンプルを採取できず

レースを完走した車両は『パルクフェルメ』と呼ばれる指定されたエリアにマシンを止め、レース結果が発行されるまで、オフィシャルを除き、誰もマシンに触れることはできません。これを『車両保管』と呼び、レース結果が発行されるまで継続されます。

 

 

車両保管の間に、オフィシャルによって再車検が行われ、レースを完走したマシンがテクニカルレギュレーションに適合しているかどうかがチェックされます。すべての技術項目に対するチェックを行う時間が無いため、通常は車両重量など、いくつかの項目に絞って簡易な検査が行われます。

再車検で技術違反が発覚するとテクニカルレギュレーションに違反したとして、失格となりレース結果から除外されます。最近では高い精度でパーツを製造できるようになったため、あまり発生していませんが、かつてのF1では車両重量が不足していたり、マシンの底面に装着されているスキッドブロックが想定以上に削れてしまったことにより、レギュレーションに適合しなくなるなどして、レース後に失格となることがありました。

また、F1ではいかなる状況においても、マシンから1リットルの燃料サンプルを採取できる状態でなければならないことになっています。これはテクニカルレギュレーションの6.6.2に『参加者はイベント中にいつでもマシンから1リットルの燃料サンプルが採取できるようにしておかなければならない。』と定められています。

レース後に、セバスチャン・ベッテル選手のマシンから1リットルの燃料サンプルを採取することができなかったため、テクニカルレギュレーションに違反したと判定されました。

 

2021 Formula 1 Technical Regulations

ARTICLE 6: FUEL SYSTEM
6.6 Fuel draining and sampling

6.6.2 Competitors must ensure that a 1.0 litre sample of fuel may be taken from the car at any time during the Event.
After a practice session, if a car has not been driven back to the pits under its own power, it will be required to supply the above mentioned sample plus the amount of fuel that would have been consumed to drive back to the pits. The additional amount of fuel will be determined by the FIA.

 

スチュワードの裁定

スチュワードのレポートによると、チームは燃料タンクから燃料を抜き出す機会が何度か与えられたようですが、0.3リットルしか採取できなかったとのことです。

また、アストンマーティンのチーム代表はシミュレーションによる計算結果によると1.44リットルの燃料がタンク内に残っていると述べたとのことです。

しかしながら、最終的に1リットルの燃料サンプルを採取することができなかったため、テクニカルレギュレーション6.6.2に違反しているとして、セバスチャン・ベッテル選手を失格とし、レース結果から除外しました。

 

 

スチュワードの裁定に対して『控訴』する

モータースポーツでは、スチュワードの裁定に対して不服がある場合は、控訴する権利があることが認められています。そのため、アストンマーティンはセバスチャン・ベッテル選手の失格処分に対して控訴する意向をFIAへ通知しました。そのため、ハンガリーグランプリのレース結果は暫定の状態となっています。

ただし、アストンマーティンがスチュワードの裁定を覆すには、ベッテル選手のマシンから1リットルの燃料を抜き出すことが絶対条件となります。計算上、1.44リットル残っているとのことですが、燃料タンクから0.3リットルしか採取できていない状況で、あと0.7リットルをマシンから抜き出すのは困難と考えるのが妥当と考えます。

何もしなければ、失格の裁定を受け入れることになりますが、控訴をする権利を行使することによって、再度審議されることになり、無実が認められて裁定を覆すことができれば、レース結果が変わります。

このようにして、モータースポーツではスチュワードの裁定が絶対ではなく、不服があれば正当性を証明することができる権利が与えられています。