2020年
2021年シーズンの内容については
こちらを参照ください。
『フルコースイエロー(FCY)』はWECに代表される海外のレースカテゴリーではすでに運用されていますが、SUPER GTにおいても2020年からフルコースイエローの運用が開始します。
これまではコース上に車両が停止してしまうなど、危険な状況が発生した場合、レースを中断することなく、安全にレースを継続するためにセーフティカーが導入されていました。
セーフティカーが導入されると、それまでのタイム差が無くなってしまうため、セーフティカー導入前にピットインを済ませたチームが有利になってしまいます。SUPER GTではセーフティカーの導入によってレース結果が決まってしまったり、大きく変わってしまうケースがあり、フルコースイエローの導入が期待されていました。
国内のモータースポーツにおいては、スーパー耐久シリーズが2018年シーズンからフルコースイエローをすでに導入していました。
SUPER GTと同様にスーパーフォーミュラにおいても2020年シーズンからフルコースイエローが導入されます。
出典:supergt.net
2019年 SUPER GT 第5戦 富士スピードウェイ
2019年に富士スピードウェイで開催されたSUPER GT 第5戦では、24号車の李アライズコーポレーションADVAN GT-Rがマシントラブルにより、ピットロード入口にストップしました。その後、車両から炎が上がり始め、セーフティカーの導入が決定されました。
2番手を走行していた6号車WAKO’S 4CR LC500は、ストップしている24号車を確認するとセーフティカーが導入されることを予測し、ピットに飛び込みピット作業を完了させました。SUPER GTではセーフティカーが導入されると、ピットインすることが禁止されます。この場合は、セーフティカー導入の合図となる『SCボード』と『イエローフラッグ』が提示される直前にピットインしたと判断されたため、問題無しと判定されました。
これにより、6号車はライバルよりも先行してピットインを完了することができたため、その後のレースを有利に進めることができ、このレースを勝利しました。セーフティカーの導入のタイミングが結果を決定したレースのひとつです。
フルコースイエローが導入される場合
フルコースイエローはセーフティカーと同様に、コース上やコース脇に停止してしまった車両の回収作業を行う場合など、セーフティカーを導入するほとではないけれども、ダブルイエロー(イエローフラッグの2本振動)での対応では作業を行うコースマーシャルに危険が及ぶとレースコントロールが判断した場合に導入されます。
すでにフルコースイエローが導入されているシリーズではレース中だけでなく、フリー走行や公式予選中においてもフルコースイエローが導入される場合がありますが、SUPER GTにおいてはフルコースイエローの導入は決勝中のみと定められています。
フルコースイエローの導入
レースコントロールでフルコースイエローの導入が決定されると、タイミングモニターやレースコントロール無線によってチームへフルコースイエローの導入が伝えられます。同時に、FCY導入に向けての10秒のカウントダウンが開始されます。
このとき、コース脇にある全てのオブザベーションポストで『FCYボード』が提示されます。この時点からコース全域で追い越しが禁止されます。
フルコースイエロー導入と解除の情報は全ての車両に搭載されるディスプレイに表示されるため、全てのドライバーがフルコースイエロー状態であることを認識できるようになっています。
FCYボード (追い越し禁止)
※FCY原因の現場の手前のポストではダブルイエロー(黄旗2本)を提示
FCY導入に向けての10秒のカウントダウンがゼロになったタイミングで、全てのオブザベーションポストで提示されているFCYボードに加えて、イエローフラッグが振られます。この時点から速度が80km/hに制限され、速度の監視が開始されます。
FCYボード+イエローフラッグ
(追い越し禁止+80km/h速度制限)
セーフティカーが導入された場合、セーフティカーを先導とした縦列走行となるため、それまで築いてきたタイム差が無くなってしまいます。
フルコースイエローの場合はすべての競技車両に対して一斉に速度が80km/hに制限されます。そのため、フルコースイエロー導入前のタイム差がそのままキープされます。
フルコースイエローの解除
フルコースイエローの導入中に停止車両の回収作業が完了したなど、コース上の危険が取り除かれたと判断されたらレースが再開されます。
レース再開に向けて、フルコースイエロー解除宣言がタイミングモニターやレースコントロール無線を通じてチームへ伝えられます。そのあと、全てのオブザベーションポストで提示されているFCYボードとイエローフラッグが撤去され、グリーンフラッグが振られます。これがフルコースイエロー解除の合図となり、レースが再開されます。
グリーンフラッグが振られるまでは80km/hの速度制限を守る必要があり、追い越しも禁止されます。
グリーンフラッグ (FCY解除)
フルコースイエロー導入中はピットイン禁止
SUPER GTではFCYボードが提示されてから、フルコースイエロー解除の合図となるグリーンフラッグが振られるまでの間はピットインが禁止されます。フルコースイエロー導入中にピットインした場合は60秒以上のペナルティが科されます。
フルコースイエローが導入される前にピットインしていた車両については、ピット作業後にコースインすることができます。FCYボードが提示される前にピットロード入口に設定されている『第1セーフティカーライン』を越えていた車両はピットインすることが認められます。
ピットアウトする車両とメインストレートを走行する車両はピットロード出口に設定されている『第2セーフティカーライン』を超える前であれば、順位が入れ替わっても問題ありません。
セーフティーカーラインの運用
SUPER GTではこれまでセーフティカーラインの運用は行われてきませんでしたが、フルコースイエローの導入によってSUPER GTにおいてもセーフティカーラインの運用が行われるようになります。
セーフティカーラインについての説明はこちらの記事を参照してください。
フルコースイエロー導入中はペナルティを消化できない
フルコースイエローが導入されている間にペナルティストップペナルティやドライブスルーペナルティを消化することはできません。
ただし、FCYボードが提示されたときに、ピットロード入口に設定されている第1セーフティカーラインを超えていた場合は、ピットインをしてペナルティを消化することが認められます。
セーフティカーへの切り替え
フルコースイエローが導入された後、レースコントロールがコース上の危険な状況が解消されないと判断した場合は、フルコースイエローからセーフティカーの導入へ切り替わる場合があります。
その場合は、フルコースイエロー導入中にセーフティカーがコースインし、GT500クラスの先頭車両の前に介入します。そのあと、オブザベーションポストで提示されているFCYボードが『SCボード』に切り替わります。
イエローフラッグの振動はそのまま継続されます。この時点でフルコースイエローは終了し、セーフティカーの導入に切り替わるため、この時点で80km/hの速度制限は解除されます。その後は、セーフティカーの運用に切り替わります。
システムトラブルによる運用の遅れ
2020年シーズンの開幕戦からSUPER GTにフルコースイエロー『FCY』が導入される予定でしたが、システムのトラブルにより、導入が先送りされることになったようです。
FCYの導入に向けて各車両のディスプレイにカウントダウンが表示されますが、テストの結果、このカウントダウンにタイムラグがあることが分かり、公平を期すために、テストを継続することになったようです。
したがって、FCYの導入が正式に決定するまでは、イエローフラッグでは不十分なコース上のアクシデントに対しては、これまでと同様にセーフティカー『SC』が導入されることになります。
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