2022年F1第2戦サウジアラビアグランプリでは、レース中にアルファロメオの周冠宇選手に5秒間のタイムペナルティが科せられましたが、ペナルティを適切に消化しなかったとして、再度ペナルティが科せられる場面がありました。
5秒間のタイムペナルティ
レース序盤にアルファロメオの周冠宇選手がターン1でウイリアムズのアレクサンダー・アルボン選手をオーバーテイクしようとしてブレーキングを遅らせました。この時、周冠宇選手はタイヤをロックさせてしまい、ターン1をオーバーランしてしまいました。
トラックリミットに関するルールとしてトラックから逸脱した場合は、永続的なアドバンテージを得ることなくコースへ復帰しなければならないと定められています。
スチュワードは周冠宇選手がオーバーランしたことによって永続的なアドバンテージを得たと判断し、5秒間のタイムペナルティを科しました。
ペナルティの消化
レース中盤、ニコラス・ラティフィ選手のアクシデントによりセーフティカーが導入され、このタイミングで周冠宇選手はピットインし、5秒間のタイムペナルティの消化とタイヤ交換を完了させました。
このとき、5秒間のタイムペナルティの消化を行ったのですが、5秒間の静止状態の間、マシンがジャッキアップされた状態となっていました。ペナルティを消化するにはピット作業を行うことなく、静止状態で5秒間待機する必要があります。
スポーティングレギュレーションの54.4 c)においても、車両が静止状態でペナルティを消化している間はピット作業を行うことができないことが記載されており、ペナルティが適切に消化されなかったとして審議されました。
ドライブスルーペナルティ
スチュワードは5秒間のタイムペナルティを消化する前にジャッキアップしたことによって、適切に5秒間のタイムペナルティが消化されなかったと判断しました。
ペナルティを適切に消化しなかった行為に対して、スチュワードには当該のドライバーを失格にする権利があります。しかしながら、ジャッキアップされていたとはいえ、5秒間の静止状態が守られていたことを鑑み、スチュワードは失格ではなく、ドライブスルーペナルティを科しました。
まとめ
レース中に科せられたドライブスルーペナルティやタイムペナルティを適切に消化しなかったために再度ペナルティが科せられる場面は非常に珍しいのではないかと思います。
無線機の使用が認められないアマチュアレースにおいては、ドライバーがペナルティを科せられたことに気づかずに、結果としてペナルティを無視したとして失格となるケースが稀に発生します。
F1では無線機の使用が認められており、ドライバーとチームが無線機を通してコミュニケーションを行うことができるため、科せられたペナルティを無視することは基本的にはありえません。
今回はペナルティを消化しなかったのではなく、適切にペナルティを消化しなかった行為が審議対象となりました。失格ではなくドライブスルーペナルティとなったのはペナルティを消化しようとした行為が認められたことによると言えますが、結果として5秒間のタイムペナルティよりも重いペナルティが科せられてしまったのは、ペナルティを適切に消化しなかった行為が重大な違反であることを意味しているのではないかと考えます。