2022年
FIA Formula 1 World Championship『FIA フォーミュラ・ワン世界選手権』は四輪レースの世界最高峰に位置するモータースポーツのレースシリーズのひとつで一般的に『F1 (エフワン)』と呼ばれます。
『国際自動車連盟『FIA : Federation Internationale de l’Automobile』の認定を受け、自動車レースの最高峰の世界選手権として世界各国で開催されており、日本では鈴鹿サーキットでF1日本グランプリが開催されています。
F1は1950年にイギリスのシルバーストーンサーキットで初めて開催され長い歴史があります。2020年シーズンにはシルバーストーンサーキットで70周年記念グランプリが開催され、2022年はF1にとって72年目のシーズンとなります。
F1マシンはレース専用のオープンホイールと呼ばれるタイヤが剥き出しの車両デザインとなっているのが特徴的です。日本国内では、このような種類のレーシングカーを『フォーミュラカー』と呼んでいます。
2022年シーズンのF1は2021年シーズンと同様に、20人のドライバーと10チームによってF1史上最多となる全23戦で争われます。
出典:formula1.com
F1マシン
F1に参戦するチームのことを『コンストラクター』と呼びます。F1マシンは各コンストラクターがF1の技術規則であるテクニカルレギュレーションに則って独自に開発を行っています。
2022年シーズンにおいては、全10チームのコンストラクターがF1に参戦しており、各チーム2台ずつ、合計20台のF1マシンによって争われます。
F1マシンはテクニカルレギュレーションと呼ばれる技術規則によって、ボディサイズや各パーツの形状が制限される場合が多いため一見同じに見えますが、設計はそれぞれのチーム毎に行われているため形状は異なります。
F1マシンが速く走行できる理由はウイングなどの空力デバイスによってフロア下部に負圧を発生させ、マシンを地面に押しつけながら走行しているからです。この下方向の力はダウンフォースと呼ばれ、F1マシンが高速で走行できるようにするための重要な要素になっています。
マシンを下方向に押し付けて走行することにより非常に速い速度でコーナリングすることが可能となっています。ストレートエンドでのトップスピードにおいては他のカテゴリーのレーシングカーと比較してF1が飛び抜けて速いわけではありません。F1マシンのコーナリングスピードが他のカテゴリーよりも突出しているのです。
シャーシは軽量で強固なカーボンファイバー(CFRP)製のモノコックが採用され、安全性が確保されていることを確認するためにFIAのクラッシュテストに合格する必要があります。
トランスミッションは8速+リバース1速とレギュレーションで規定されています。オートマチックトランスミッションやCVTは禁止されています。ステアリングにあるパドルでシフトアップ、シフトダウンを行うパドルシフトを採用しているため、ギアチェンジ時のクラッチ操作は不要です。
ブレーキはカーボンファイバー製のディスクブレーキが採用されています。非常に高いブレーキ性能を発揮するだけでなく、安全性や信頼性を確保するために高い技術力が要求されるため、ブレーキパッドやブレーキディスクはブレンボ社、ヒトコ社、カーボンインダストリー社といった世界でも有数の限られたブレーキメーカーだけが供給しています。
2022年 テクニカルレギュレーションの変更
2022年シーズンからF1マシンのテクニカルレギュレーション(技術規則)の内容が大きくかわり、F1マシンの大きさや形状が2021年から大きく変わります。
新しいテクニカルレギュレーションは2021年シーズンから導入される予定でしたが、新型コロナウイルス『COVID-19』の感染拡大の影響による各チームの開発負担を軽減するために、導入が1年先送りとなりました。
2021年シーズンまでのF1マシンの底面にはレギュレーションで段差を付ける必要がありました。この方式を『ステップドボトム』と呼びます。2022年から採用されるテクニカルレギュレーションでは、ステップドボトム方式に代わり、マシンの底と地面との間に流れる空気を利用することによりダウンフォースを生み出す『グランドエフェクト』による空力コンセプトが導入されます。
かつてのF1ではグランドエフェクトを進化させることによって、F1マシンの高速化を推進してきましたが、F1マシンが高速になると共に安全性の低下が懸念されるようになり、グランドエフェクトを制限するためにステップドボトム方式が採用されました。
2022年シーズンから導入されるテクニカルレギュレーションでは、グランドエフェクトにより得られるダウンフォースが増加しますが、それと引き換えにウイングなどの空力デバイスの形状が簡素化されるため、それらで得られるダウンフォース量は減少します。
また、最低重量が752kgから790kgへ引き上げられることに伴い、2022年シーズンからスタートする新しいF1マシンは2021年シーズンのマシンよりもラップタイムは遅くなります。
タイヤもこれまでの13インチタイヤから新たに18インチタイヤへ変更されることもあり、F1マシンの外観が大きく変化します。
パワーユニット
2014年から使用されている現在のF1のパワーユニットは1.6リッターV6ターボエンジンにERS (Energy Recovery System)と呼ばれるハイブリッドシステムが組み合わされたもので、2022年シーズンのF1パワーユニットはメルセデスベンツ、フェラーリ、ルノー、レッドブル・パワートレインズの4社が供給しています。
ホンダは2021年シーズンをもってF1参戦活動を終了しました。ホンダは他のパワーユニットサプライヤーから1年遅れとなる2015年から第4期となるF1活動をスタートし、マクラーレンへのパワーユニット供給を行いました。
復帰当初はパワー不足と信頼性に苦しみましたが、2019年第9戦オーストリアグランプリで第4期活動初めてとなる優勝を挙げ、2021年シーズンは王者メルセデスと熾烈なチャンピオン争いをし、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン選手がドライバーズチャンピオンを獲得しました。
2022年シーズン以降はレッドブルが設立したレッドブル・パワートレインズがホンダのパワーユニットの知的財産を引き継ぎます。『HONDA』の名称はF1から消滅しますが、ホンダが開発したパワーユニットは残ります。
パワーユニットを構成するコンポーネント
F1のパワーユニットはICE、MGU-K、MUG-H、TC、ES、CE、EXの7つのコンポーネントから構成されています。
- TC (ターボチャージャー)
- EX (エキゾーストシステム)
F1のパワーユニットはハイブリッドであるため、MGU-KとMGU-Hから構成されるエネルギー回収システム(ERS)が搭載されています。
MGU-Kはブレーキング時の減速エネルギーを電気エネルギーに変換し、MGU-Hはエンジンの排気熱を電気エネルギーに変換します。MGUは『Motor Generator Unit』の略でKは『Kinetic (動的)』、Hは『Heat (熱)』を意味します。
MGU-Kの回生量は1周あたり2MJに制限されていますが、MGU-Hの回生量に制限はありません。
変換された電気エネルギーはバッテリーなどのES (Energy Store)に蓄えられ、加速時にMGU-Kのモーターによって発生する駆動力がエンジンの出力をアシストします。MGU-Kの最大出力は120kW(約161馬力)でESからMGU-Kへのエネルギー放出量は1周あたり4MJに制限されています。
MGU-Hによるアシスト量に制限はありません。ただし、MGU-Hはコンプレッサーとタービンに直結しなければならず、直接駆動力を発生させることができないため、MGU-Hによってコンプレッサーを強制的に回し、ターボラグの改善などに役立てます。
エンジン (ICE)とMGU-Kの合計によるパワーユニットの最大出力は1000馬力に迫ると言われています。1レースで使用できる燃料の量が105kgに制限されているだけでなく、瞬間的な燃料流量が100kg/hに制限され、また、年間を通して使用できるコンポーネントの数にも制限があるため、レースをコンスタントに速く走行するためには、低燃費、高出力、高信頼性のパワーユニットである必要があります。
このように、F1のパワーユニットはエンジンの排気量が1.6リッターとコンパクトですが、ターボチャージャーおよびMGU-KとMGU-Hの2種類のハイブリッドシステムによって、高出力だけでなく高燃費も実現しています。
2021年シーズンに続き、2022年シーズンにおいても、パワーユニットを構成する各コンポーネントをシーズンを通して使用できる数に制限があります。
EXを除く各コンポーネントは3基もしくは2基、EXは8基を使用することができます。規定の数を超えてコンポーネントを使用する場合はグリッド降格のペナルティとなるため、チャンピオンシップで優勝することを考えるとパワーユニットの信頼性が重要となります。
DRS (Drag Reduction System)
現在のF1ではコース上でのオーバーテイク(追い越し)を増加させるためにDRS (Drag Reduction System)と呼ばれる独自のシステムが導入されています。
DRSは2011年シーズンからF1に導入され、DRSが作動するとリアウイングのエレメントが動いて空気抵抗が減少します。これにより最高速度を増加させることができるため、オーバーテイクしやすくなります。
DRSはサーキット毎にあらかじめ定められているDRS Detectionポイントで前方を走行するマシンとの差が1秒以内となったとき、ストレートなどに設定されているDRSゾーンでDRSを作動させることができます。
前方を走行するマシンは周回遅れの車両でも構いません。また、フリー走行や公式予選ではDRSゾーンでいつでもDRSを作動させることができます。
また、FIA F2やFIA F3などのカテゴリーにおいてもDRSが導入されています。
F1と日本との関係
日本人F1ドライバー
1987年に中嶋悟が日本人初のF1フル参戦ドライバーとなってから、鈴木亜久里、片山右京、井上隆智穂、中野信治、高木虎之介、佐藤琢磨、山本左近、中嶋一貴、小林可夢偉といったフル参戦ドライバーをはじめ、スポット参戦も含めると数多くのF1ドライバーを排出しました。
2021年シーズンはホンダの育成ドライバーである角田裕毅選手がアルファタウリからF1デビューを果たしました。2022年シーズンもアルファタウリからF1参戦を継続します。
日本企業
F1と日本との関係は深く、1964年にホンダが国内の自動車メーカーとして初めてF1に参戦しました。1965年にはF1初勝利を挙げ、第2期となる活動ではホンダエンジンの圧倒的なパワーとアイルトン・セナやアラン・プロストといったドライバーらの活躍によって、日本ではF1ブームが起きました。
タイヤメーカーのブリヂストンが1997年〜2010年の間、F1へタイヤを供給しました。2002年にはトヨタもF1へ参戦し、2015年からはホンダが第4期のF1活動を開始しました。スポンサーやテクニカルパートナーとしてF1に参加する日本企業も数多く誕生しました。F1における活躍は世界にブランド力を発信できるため、ビジネス面においても日本の企業はF1と深い関係を築いてきました。
日本でのF1開催
日本では1976年に富士スピードウェイにて『F1世界選手権イン・ジャパン』が初めて開催され、翌年も富士スピードウェイにて開催されましたが1978年から1986年の間は空白の期間となります。しかしながら、1987年に鈴鹿サーキットで初めてF1が開催されてから、2019年まで日本でのF1開催は絶えることなく毎年開催されてきました。
F1日本グランプリはF1開催地の中でも歴史あるグランプリとなっており、2018年には鈴鹿サーキットでのF1開催が30回目を迎えました。
2020年、2021年は新型コロナウイルス『COVID-19』の感染拡大の影響を受け、当初のスケジュールでは鈴鹿サーキットでF1日本グランプリが開催される予定でしたが、残念ながら開催中止となってしまいました。
2022年シーズンは2019年以来となる鈴鹿サーキットでのF1日本グランプリの開催が予定されています。
F1 視聴方法
2021年シーズンに続き、2022年シーズンにおいても、F1は『フジテレビNEXT』と『DAZN』で放送されます。レース後はF1公式YouTubeチャンネルで各レースのダイジェストが配信されます。
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