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2021年 SUPER GT 第5戦 スポーツランドSUGO 8号車に対するペナルティ

 

2年ぶりにスポーツランドSUGOで開催された2021年SUPER GT 第5戦では、GT500クラスのトップを走行していた8号車『ARTA NSX-GT』に対して、ピット作業違反があったとしてドライブスルーペナルティが科せられました。

その後、セーフティカーが導入され、科せられたペナルティの消化に戸惑っている間に、新たなペナルティが科せられ、トップ争いから脱落する展開となってしまいました。

今回は、8号車に科せられたペナルティについて解説してみます。

 

 

ピット作業違反

8号車に科せられたペナルティの発端は、トップを走行していた31周目に行ったピットストップで発生しました。タイヤ交換の際に、メカニックが外したタイヤが平置きにされていなかったことが違反と判定されました。

SUPER GTでは、タイヤ交換の際に、タイヤを平置きの状態にしなければならないルールが存在します。他のカテゴリーではあまりない、SUPER GT独自のルールと言えます。

 

 

SUPER GTのレギュレーションである『2021 SUPER GT Sporting Regulations』の第27条1. 2)に作業エリアにおける外したタイヤの平置き禁止が定められています。

SUPER GTは複数のチームが同時にピット作業を行うこともあり、車両同士が接近した状態でピット作業をしなければならない場合があります。このようなピットの作業エリアが密の状態で危険な状況が極力発生しないように定められたルールなのではないかと考えられます。

このレギュレーションに違反したとして、8号車に対して、ドライブスルーペナルティが科せられました。

 

2021 SUPER GT Sporting Regulations

第27条 ピットエリア

1. 2) タイヤ交換は2名以内で行い、一連の作業中の人員変更は認められない(装着予定のタイヤを平置きにする作業および外した平置き状態のタイヤ等の処理を行う作業員は7名に含まれる)。
タイヤ交換を行う2名以内の作業員は、平置きされた装着予定のタイヤを他の者からの援助を一切受けることなく装着しなければならない。
また、作業エリアにおいては、外したタイヤを地面に平置きの状態にしなければならず、他の者へ手渡したり、転がしたり、放り投げる等の危険な行為は許されない。平置き状態の外されたタイヤをピット作業エリア外へ片づける場合、手渡したり、転がしたり、放り投げる等の危険な行為は許されない。
インパクトレンチを持って待機している際、インパクトソケットは 車両輪郭の内側に入ってはならない。なお、ピット作業エリアに同時に持ち込めるインパクトレンチの数は2個までとする。
ホイールナットが落下した場合は必ずチームで回収し、回収したことを確認していないとピットから離れことはできない。

 

 

ペナルティの消化

ドライブスルーペナルティが科せられた8号車は、すぐにペナルティを消化することなく、数周の間、走行を続けました。この間に、最終コーナーで19号車『WedsSport ADVAN GR Supra』が車両火災によりストップし、セーフティカーが導入される展開となりました。

SUPER GTのレギュレーションでは、セーフティカー導入中にペナルティを消化することは認められていません。ところが、8号車はセーフティカー導入中に科せられたドライブスルーペナルティを消化しようとピットインしてしまいました。

 

2021 SUPER GT Sporting Regulations

付則–3 セーフティカー(SC)運用規定

総則
4. SC活動中にタイムペナルティの執行は中断される。
また、SC活動中にレースが終了し、タイムペナルティを規定通り実行できなかった場合、タイムペナ
ルティに相当するタイムを競技中に課されたタイムペナルティとして加算する。

 

 

ピットロード出口のシグナル無視

セーフティカー導入中にドライブスルーペナルティを消化しようとしたため、8号車は不要なピットインをしてしまいましたが、それだけでは終わらず、ピットロードを通過してコースインする際に、ピットロード出口のシグナルが赤の状態にあるにもかかわらず、コースインしてしまいました。

このとき、GT300クラスの車両の隊列がピットロード出口付近を走行していたため、ピットロード出口のシグナルは赤となっており、8号車はシグナルが緑の状態へ変わるまでピットロード出口で待機しなければならない状況でした。

このピットロード出口のシグナル無視の違反に対して、10秒間のペナルティストップが科せられました。

 

国際モータースポーツ競技規則 付則H項

2.10 セーフティカー運用手順
2.10.14

セーフティカーが活動中、競技車両はピットレーンに進入できるが、ピットレーン出口の緑色灯火が点灯している時に限りトラックに再合流することができる
セーフティカーならびにそれに続く隊列がピット出口を通過中、または通過しようとしている時以外は、緑色灯火は常に点灯している。トラックに再合流する車両は、セーフティカーに続く車両の隊列の末尾に到達するまで適切な速度で走行しなければならない。
特定の状況下では、競技長はセーフティカーにピットレーンの使用を要請できる。この場合、セーフティカーのオレンジライトが点灯していることを条件として、全車はセーフティカー後方に続いて追い越しをすることなくピットレーンに進まなければならない。この状況でピットレーンに入った車両は自己のガレージエリアに停車することができる。

 

 

まとめ

8号車はピット作業違反に対するドライブスルーペナルティに端を発した混乱により、ドライブスルーペナルティを適切に消化することができず、余計なペナルティまで科せられてしまいました。これにより、トップを快走していた8号車は優勝争いから脱落する展開となってしまいました。

8号車のようなトップチームがペナルティの消化方法を理解していなかったことは意外でした。セーフティカー導入中はドライブスルーペナルティやペナルティストップの消化が認められていないことは常識のようなルールであると言えるからです。

SUPER GT Sporting Regulationsには科せられたペナルティは3周以内に消化することと定められていますが、セーフティカー導入中は不可抗力のため、3周以内に消化できなくても、セーフティカー解除後すぐにペナルティ消化すれば、問題無かったと考えます。

また、科せられたドライブスルーペナルティはすぐに消化すべきだったと考えます。ペナルティの消化を数周伸ばしたために、セーフティカーが導入されてしまい、混乱が無かったとしても大きく順位を落とす展開に変わりはなかったかと思います。

セーフティカー導入前にペナルティを消化できていれば、トップ争いから脱落したとしても上位争いができる位置でレースを復帰できたはずです。

レース中に科せられたペナルティに不服があったとしても、チームやドライバーはペナルティを消化する義務があります。不服があれば、科せられたペナルティを適切に消化した上で、レース後に正式に抗議をすれば良いだけで、抗議のために、ペナルティを消化しなければ、失格や出場停止といった処分につながる可能性もあります。

8号車にとっては、富士スピードウェイでの第2戦に続き、ペナルティによりレースを失ってしまい残念な結果となりました。マシンパフォーマンスが高いのは明らかなので、オートポリスでの次戦での活躍に期待したいです。