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2021年 SUPER GT 第1戦 岡山国際サーキット セーフティカー導入のレース展開への影響

 

セーフティカーの導入タイミング

岡山国際サーキットで2021年シーズンのSUPER GTが開幕しましたが、昨年に続き、今シーズンもレース展開はセーフティカー導入のタイミングが左右しそうです。

今回のレースでは33周目に360号車 RUNUP RIVAUX GT-Rが第1コーナーの立ち上がりでクラッシュしたことが原因で2回目のセーフティカーが導入されました。360号車のストップからセーフティカーが導入されるまでにしばらく時間があったため、ピットストップを完了していないほぼすべてのチームがこのタイミングでピットインしました。

ピットが混雑したことによって、順位変動があり、セーフティカーの導入前後でレース展開が変わりました。GT500クラスではセーフティカー導入前は37号車 KeePer TOM’S GR Supraと14号車 ENEOS X PRIME GR Supraがトップ争いをしていましたが、セーフティカー導入後は14号車と36号車 au TOM’S GR Supraのトップ争いへ変わりました。

14号車と36号車は歴史に残るような激しいバトルを魅せてくれましたが、セーフティカーが導入されていなければ、レース展開は全く異なっていたと考えられます。

GT300クラスにおいても、セーフティカー導入前は11号車 GAINER TANAX GT-Rと52号車 埼玉トヨペットGB GR Supra GTがトップ争いをしていましたが、セーフティカーの導入でレース展開が変わりました。

 

 

セーフティカー導入の課題

今回、セーフティカー導入の原因となったコース上に車両がストップしているような状況では、車両の撤去作業はFCY導入中でも危険だと考えられるため、セーフティカーを導入したレースコントロールの判断に問題は無かったと考えられます。

セーフティカーの導入は、モータースポーツのひとつであるとも言えますが、現在のSUPER GTにおけるセーフティカー導入は不確定要素が多く、チームの努力が無駄になってしまうこともあり、フェアとは言えないケースもあります。

SUPER GTではセーフティカー導入中のピットインが禁止されています。このルールがセーフティカーの導入がレース展開へ大きく影響する要因となっています。そのため、セーフティカー導入の可能性が高いと判断したほとんどのチームが同時にピットインしたため、ピットが混乱し、順位が大きく入れ替わる展開となりました。

セーフティカー導入中のピットインが禁止された経緯としては、2015年にスポーツランドSUGOで開催されたレースでセーフティカー導入中に、ほぼすべてのチームがピットインをしたことが原因で混乱が発生したことを受けての対応と認識しています。

今回のように、ピットが混乱する状況が発生するのであれば、セーフティカー導入中のピットインを禁止する必要はないと考えます。

GTアソシエイションも課題と考えているようで、昨年からフルコースイエロー(FCY)の導入の検討を進めています。SUPER GTで運用しようとしているFCYのシステムは海外で運用されているシステムをSUPER GTへ移植しただけのようですが、日本の電波法の規制がある関係で、無線通信が届かなかったり、遅延が発生するなどの技術的な課題があることが分かり、実際のレースで運用されない状態が続いています。

岡山国際サーキットで開催された今回のレースにおいてもFCYの導入が期待されましたが、実際に運用されることはありませんでした。

 

 

FCY導入に向けた課題

車両の撤去作業の安全性を考慮するとセーフティカーの導入はやむを得ず、妥当であるケースが大半ではありますが、現在のSUPER GTのレースはセーフティカーの導入に振り回されすぎているように感じます。そのため、できる限り早い段階でのFCYの導入を期待したいです。

SUPER GTでは各車両に搭載されるディスプレイにFCY導入に向けたカウントダウンが表示されるようになっています。しかし、サーキットを走行しているすべての車両のディスプレイに正しくカウントダウンが表示されないことがあるようで、これがFCYの実践運用の障害となっているようです。

FCY導入の手順は、FCY導入が決定したタイミングですべてのオブザベーションポストで『FCY』と書かれたボードが提示されます。この時点からコース全域で追い越し禁止となります。セーフティカー導入時のSCボードとイエローフラッグの提示と大きな違いは無いと考えます。

FCYボード提示から約10秒後にすべてのオブザベーションポストでイエローフラッグの振動が追加され、この時点でコース全域で速度が80km/hに制限されます。

FCY導入によるタイムロスを最小限にするため、速度を80km/hへ減速するタイミングを極力遅らせたいことから、カウントダウンが正しく表示されないことが不公平につながる可能性があるそうです。

また、レース再開時のグリーンの表示にタイムラグが発生することで不公平だけでなく、安全面にも課題がある可能性もあります。

 

 

FCYの運用に向けて

国内のモータースポーツですでにFCYを運用しているスーパー耐久では、オブザベーションポストで提示するFCYボード、イエローフラッグ、グリーンフラッグの運用のみでコントロールしています。

オブザベーションポストごとのフラッグやボードの提示/撤去のタイミングの違いによって有利/不利が発生することも考えられますが、FCYの導入はセーフティカーの導入よりもずっと公平であると考えられるため、車載ディスプレイはあくまでも補助的な位置付けとし、SUPER GTでもボードとフラッグによるFCY運用をスタートすべきではないかと考えます。

SUPER GTがさらにエキサイティングで魅力あるモータースポーツカテゴリーとなるために、早い段階でのFCYの導入を期待したいです。

 

 

ドライバー識別灯

今回のレースではドライバー識別灯が機能しておらず、どちらのドライバーが乗車しているのか外観で識別することができませんでした。昨年から導入されたドライバー識別灯も無線通信を使ってドライバーの名前だけではなく、レース中の順位も表示できるシステムとなっています。

技術的なトラブルが発生したのではないかと考えられますが、ドライバー識別灯ひとつにしてもSUPER GTのエキサイティングなレースを支えているコンテンツのひとつだと思いますので、次戦から確実に運用していただけるようお願いしたいと思います。