二輪のMotoGPではお馴染みのロサイル インターナショナル サーキットでF1カタールグランプリとして、初めてのF1が開催されました。
F1カタールグランプリの公式予選Q3では、イエローフラッグを無視したとして、3名のドライバーがスチュワードに召喚され、レッドブルのマックス・フェルスタッペン選手とメルセデスのバルテリ・ボッタス選手に対してグリッド降格のペナルティが科せられました。
イエローフラッグはモータースポーツの基本ルールとも言えますが、イエローフラッグに関するレギュレーションを再確認し、ペナルティに至った経緯を紹介します。
『イエローフラッグ』とは?
イエローフラッグは車両同士の接触によるアクシデントが発生したり、メカニカルトラブルなどで車両がストップしたりするなどして、コース上やコース脇に危険な状態がある場合に、現場の手前のオブザベーションポストで振られます。
現場の次のオブザベーションポストではグリーンフラッグが振られ、その先のコースが安全であることをドライバーに知らせます。
イエローフラッグからグリーンフラッグまでは黄旗区間と定義され、この区間の間では、ドライバーは減速をしなければならず、他の車両を追い越すことが禁止されます。
コース上に車両がストップするなどした場合は、特に危険と判断され、イエローフラッグが2本振られます。
イエローフラッグが2本振られている状態のことを『ダブルイエロー』と呼びます。
このとき、ドライバーは大幅に減速をする必要があり、フリー走行や公式予選では有意義なラップタイムを記録してはならないことがレギュレーションで定められています。
『有意義なラップタイム』の定義が曖昧ではありますが、イエローフラッグが2本振られた区間を通過したラップはそれなりに速いラップタイムを記録すること自体がレギュレーションに違反すると判断されます。
つまり、その周回はタイムアタックを諦めなければならないと考えるべきです。
イエローフラッグに関するレギュレーションは、FIA公認のモータースポーツの共通ルールである『国際モータースポーツ競技規則 付則H項』に定められています。
公式予選Q3でのイエローフラッグ
F1カタールグランプリの公式予選Q3の終盤、アルファタウリのピエール・ガスリー選手が高速の左コーナーとなるターン15の縁石に乗り上げた際にフロントウイングを壊し、その影響でタイヤがパンクしたことにより、スロー走行となりました。
ピットロードの入口はターン15のすぐ先に位置しているため、ガスリー選手はピットインすることができず、そのままメインストレートをスロー走行することになり、その後、メインストレート右側にストップしました。
これにより、メインストレートではイエローフラッグが振られました。
Disaster for Pierre Gasly at the end of qualifying 😩
The Frenchman suffered a puncture, bringing an early finish to his session
Thankfully for Gasly, his previous fastest lap set means he starts P4 👏#QatarGP 🇶🇦 #F1 pic.twitter.com/Ah5WmjNT93
— Formula 1 (@F1) November 20, 2021
スチュワードの裁定
スチュワードは、公式予選Q3でイエローフラッグが振られていたにも関わらず、減速が不十分だったとして、日曜日の決勝前にレッドブルのマックス・フェルスタッペン選手、メルセデスのバルテリ・ボッタス選手、フェラーリのカルロス・サインツ選手ら3名のドライバーに対して事情聴取を行い、審議しました。
カルロス・サインツ選手に対する裁定
スチュワードは、サインツ選手に対して事情聴取を行うと共に、映像とテレメトリーデータを検証した結果、サインツ選手はレギュレーションを遵守していたとして、ペナルティを科すことはありませんでした。
サインツ選手は、イエローフラッグが振られていることを確認できなかったものの、メインストレートの右側でガスリー選手がストップしているのを確認したため、黄旗区間にいる可能性があると考えて減速したと主張し、スチュワードもテレメトリーデータで減速していることを確認したとのことです。
バルテリ・ボッタス選手に対する裁定
スチュワードは、ボッタス選手に対して事情聴取を行うと共に、映像とテレメトリーデータを検証した結果、ボッタス選手はイエローフラッグを確認していなかったことを認めました。
したがって、スチュワードはメインストレートにストップしている車両がいたにも関わらず減速しなかったと判断しました。
イエローフラッグの1本振動を無視したとして、ボッタス選手に対して3グリッド降格のペナルティとペナルティポイント1を科しました。
3グリッド降格ペナルティ
(ペナルティポイント1)
マックス・フェルスタッペン選手に対する裁定
スチュワードは、フェルスタッペン選手に対して事情聴取を行うと共に、映像とテレメトリーデータの検証を行いました。
公式予選Q3でフェルスタッペン選手が黄旗区間を通過する際に、現場手前のオブザベーションポストでは、イエローフラッグが2本振られていました。
しかし、ポスト脇のライトパネルにはイエローフラッグの表示は無く、フェルスタッペン選手のマシンのディスプレイにもイエローフラッグを示す表示は行われず、音声による通知も行われませんでした。
ただし、スチュワードはコースマーシャルによって振られるフラッグはライトパネルと同等の扱いであり、ドライバーは助けを借りずに独力でドライブしなければならない、また、サインツ選手のようにコース脇にストップしている車両がいることを確認した場合には、黄旗区間である可能性があることを認識し、減速すべきであると主張しました。
これらを考慮し、スチュワードは、フェルスタッペン選手がダブルイエローを無視したと判断して、5グリッド降格のペナルティとペナルティポイント2を科しました。
5グリッド降格ペナルティ
(ペナルティポイント2)
BREAKING: Qatar grid penalties confirmed by the race stewards for Max Verstappen (five places) and Valtteri Bottas (three places) #QatarGP 🇶🇦 #F1 pic.twitter.com/GRrHdpaXv8
— Formula 1 (@F1) November 21, 2021
まとめ
イエローフラッグは四輪(クルマ)のモータースポーツだけでなく、二輪(バイク)においても、コース上の危険を知らせる重要なフラッグであり、モータースポーツファンにとっても常識かと思います。
イエローフラッグが振られている区間を通過する場合、ドライバーは減速をして走行する必要があります。特に、記録されたタイムで順位を争う公式予選においては、減速していることが明確でなければならず、黄旗区間を通過した車両に対しては厳しい検証が行われることが当然のようになっています。
減速していることが認められなければ、ラップタイムが削除されるだけと勘違いしている人がいるのですが、黄旗区間で減速しないことはレギュレーションに違反する行為であることから、ラップタイムが削除されるだけでは済まされません。
黄旗区間を通過して記録されたラップタイムの良し悪しに関わらず、減速していることが明確てなければ、今回のようにペナルティが科せられます。
また、イエローフラッグが2本振られている(ダブルイエロー)区間を通過した場合は、タイムアタックを諦めなければなりません。タイムを更新しなくても、それなりに速いラップタイムを記録してしまうこと自体が違反となります。
当然、イエローフラッグが1本振られている場合よりも、2本振られている場合の方がより安全に走行しなければならないため、違反に対するペナルティは厳しくなります。
イエローフラッグはF1に限らず、モータースポーツの基本ルールです。正しい知識を身に付けていれば、モータースポーツを観戦する場合だけでなく、ドライバーとしてモータースポーツに参加する場合にも、きっと役立つと思います。
イエローフラッグによって、公式予選の終盤に繰り広げられるタイムアタック合戦が妨害されてしまうこともありますが、モータースポーツが安全を優先することによって成り立っているため、このような場合もあることを認識しモータースポーツを楽しむ必要があると考えます。
2.5.5 マーシャルポストで使用される信号
b) 黄旗:
これは危険信号であり、次の2通りの意味をもってドライバーに表示される。
1本の振動:
速度を落とし、追い越しをしないこと。進路変更する準備をせよ。トラックわき、あるいはトラック上の一部に危険箇所がある。ドライバーがスピードを落としたことが明らかでなければならない。これは、ドライバーが、手前で制動したこと、および/またはそのセクターで速度を著しく落としたことを意味する。
2本の振動:
速度を大幅に落とし、追い越しをしないこと。進路変更する、あるいは停止する準備をせよ。トラックが全面的または部分的に塞がれているような危険箇所がある、および/あるいはマーシャルがトラック上あるいは脇で作業中である。フリー走行および予選中は、ドライバーが有意義なラップタイムを達成しようとしていないことが明らかでなければならない。これは、ドライバーが当該ラップを放棄するべきであることを意味する(次のラップで走路が十分片付いている場合がありうるので、ピットへ入らなければならないことを意味するものではない)。
黄旗が表示されるのは、通常、危険箇所直前のマーシャルポストだけである。しかし、幾つかのケースにおいては、競技長は事故現場手前の複数のポストで黄旗の表示を命じることができる。
最初の黄旗から事故現場を過ぎて、緑旗が表示されている地点までの間、追い越しは禁止される。
ドライバーに知らせる必要があるような事故がない限り、ピットレーンで黄旗を表示しないこととする。
競技長あるいはレースディレクターは、2本の黄旗がプラクティス、予選あるいは決勝中に出された場合には、走路のすべて、あるいは任意の区画で速度制限を課すことができる。
あらゆる場合において、速度制限の終了地点は、次のマーシャルポスト、もしくは適切な各マーシャルポストで緑旗によって知らされる。各レースまたは選手権の競技規則にて、これらの実施要件が記載される場合がある。