イモラで開催された2021年F1第2戦エミリア・ロマーニャGPの決勝では31周目のターン1でメルセデスのバルテリ・ボッタス選手とウイリアムズのジョージ・ラッセル選手が並走状態で接触し、大きなアクシデントとなりました。
ラッセル選手がメインストレートでDRSを使用してボッタス選手の背後から接近し、両者がターン1で並走状態となったとき、右側のラッセル選手が突如コントロールを乱し、ボッタス選手がいる左側へスピンしたため両者が接触しました。
このアクシデントにより、2台の車両の撤去と路面への落下物を除去するため、レースはレッドフラッグが振られ中断となりました。
The incident that brought out red flags in Imola 🚩#ImolaGP 🇮🇹 #F1 pic.twitter.com/Z18dCPXwOZ
— Formula 1 (@F1) April 18, 2021
スチュワードによる裁定
このアクシデントでボッタス選手とラッセル選手は共にリタイヤとなりましたが、アクシデントの原因についてはレース後に審議されることになりました。
スチュワードは両ドライバーからの事情聴取を行い、さらに様々なアングルの映像とテレメトリーデータの分析の結果、このアクシデントをレーシングアクシデントと判定し、ボッタス選手とラッセル選手に違反性が無いことを明らかにしました。
スチュワードはレーシングアクシデントの判定に至った経緯を以下のように説明しています。
ラッセル選手はDRSを使用してボッタス選手に接近しました。ボッタス選手はドライとなったレーシングラインの右側をキープして走行していましたが、右側に車両1台分のスペースを確保していました。
ターン1のアプローチでボッタス選手とコース端までのスペースが狭くなりましたが、両者の動きに問題はありませんでした。ターン1までは路面はドライでしたが、両者が最も接近したとき、ラッセル選手がウェットパッチに乗り、コントロールを乱した結果、ボッタス選手に接触しました。
ラッセル選手はDRSを作動させていたため、ダウンフォースが低い状態でした。
このような理由から、スチュワードはレーシングアクシデントと判定しました。
ボッタス選手は右側に1台分のスペースは残してはいたものの、そのスペースは限りなく1台分に近く路面はまだウェットの状態でした。
接触が発生したターン1はわずかに左へ曲がっているものの、ほとんどストレートの状態で、ラッセル選手とボッタス選手との速度差がかなりあったため、路面がドライの状態であれば、ラッセル選手は容易にボッタス選手をオーバーテイクできたのではないかと考えられますが、ラッセル選手はDRSを作動させたままウェットの路面のラインを走行するのは少しリスクがあったかもしれません。
アクシデント直後は、ボッタス選手、ラッセル選手ともに相手のドライバーを責めるような行動をしていましたが、スチュワードのレーシングアクシデントの判定は冷静であり妥当であると考えられます。
F1の安全性が高まったとは言え、今回のエミリア・ロマーニャGPのようにレーシングラインだけが乾いたウェットの路面でDRSの作動を許可することは危険が伴う可能性があることが分かりました。イモラはオーバーテイクが難しいサーキットでもあり、DRS無しではエキサイティングなレース展開は期待できなかったと思います。
ウェットとドライが混在した路面コンディションでエキサイティングな面白いレースと安全性の高いレースを両立するには、まだ課題がありそうだと感じました。
レギュレーション
第4章 サーキットにおけるドライブ行為の規律
第2条 追い越し、車両のコントロールと走路の範囲
d) 重大な過誤を繰り返したり、あるいは車両に対するコントロールの欠如(走路から離脱するような)が見受けられるときは、大会審査委員会に報告され、一切の当該ドライバーに対し失格に至るまでの罰則を適用することができる。