黄旗 (イエローフラッグ)

 

 

 


 

黄旗(イエローフラッグ Yellow Flag)は競技車両がコース上に止まったり、グラベルにはまって動けなくなったりすると、現場の手前のオブザベーションポストで提示されます。黄旗の提示は振動(旗を振る)で行われます。

黄旗が振られると、その先のポストでは緑旗が振られ、黄旗から緑旗までは黄旗区間とされ、追い越しが禁止されます。黄旗区間が追い越し禁止になるということはよく知られていますが、レース観戦する上で重要な旗になりますので、実際に黄旗がどのように運用されているのか解説します。

 

 

規則

国際モータースポーツ競技規則 付則H項
(2018年3月26日発行版)

2.4.5.1 b) 黄旗:
これは危険信号であり、次の2通りの意味をもってドライバーに表示される。

1本の振動:
速度を落とし、追い越しをしないこと。進路変更する準備をせよ。トラックわき、あるいはトラック上の一部に危険箇所がある。ドライバーがスピードを落としたことが明らかでなければならない。これは、ドライバーが、手前で制動したこと、および/またはそのセクターで速度を著しく落としたことを意味する。

2本の振動:
速度を大幅に落とし、追い越しをしないこと。進路変更する、あるいは停止する準備をせよ。トラックが全面的または部分的に塞がれているような危険箇所がある、および/あるいはマーシャルがトラック上あるいは脇で作業中である。フリー走行および予選中は、ドライバーが有意義なラップタイムを達成しようとしていないことが明らかでなければならない。これは、ドライバーが当該ラップを放棄するべきであることを意味する(次のラップで走路が十分片付いている場合がありうるので、ピットへ入らなければならないことを意味するものではない)。

黄旗が表示されるのは、通常、危険箇所直前のマーシャルポストだけである。しかし、幾つかのケースにおいては、競技長は事故現場手前の複数のポストで黄旗の表示を命じることができる。

最初の黄旗から事故現場を過ぎて、緑旗が表示されている地点までの間、追い越しは禁止される。

ドライバーに知らせる必要があるような事故がない限り、ピットレーンで黄旗を表示しないこととする。

競技長あるいはレースディレクターは、2本の黄旗がプラクティス、予選あるいは決勝中に出された場合には、走路のすべて、あるいは任意の区画で速度制限を課すことができる。

  • 全コース上に1つの速度制限が課された場合、黄旗1本とFCY(「フルコース・イエロー」の意味)が書かれたボードによってそれが知らされる。適切である場合には、事故のあった手前のポストにて2本振動の黄旗が振動表示し続けられる。
  • 決勝では全コースにて可変の速度制限を課すことができ、それは黄旗1本とVSC(「バーチャル・セーフティーカー」の意味)と書かれたボードで知らされる。適切である場合には、事故のあった手前のポストにて2本振動の黄旗が振動表示し続けられる。
  • 決勝で、ある区間について速度制限が課される場合、その区間の開始地点と終了地点は、走路の端で明瞭に印付けがされ、2本の黄旗とSLOW(「スローダウン」の意味)と書かれたボードが出される。それらは区間内の各マーシャルポストで提示される。1本の黄旗の振動表示がその区間の手前のポストで提示される。あらゆる場合において、速度制限の終了地点は、次のマーシャルポスト、もしくは適切な各マーシャルポストで緑旗によって知らされる。各レースまたは選手権の競技規則にて、これらの実施要件が記載される場合がある。

 

 

2017年12月22日発行版 改定内容

FIAが2017年12月22日に発行した国際モータースポーツ競技規則付則H項において、1本振動、2本振動の記述に文言が追加されました。上記のH項において、赤字で示す個所が変更点となります。

黄旗区間での減速が明文化されました、特に黄旗2本(ダブルイエロー)の区間を通過した車両においてはタイムアタックを断念しなくてはなりません。黄旗区間を通過したにも関わらず、ベストラップが記録されれば、ラップタイムの抹消や何らかのペナルティが科される可能性があると言えます。

 

 

黄旗の1本振動

コース上に危険が存在するときに黄旗が提示されます。実際には以下のような場合に黄旗1本が提示されます。

  • 競技車両がコース外に停止している。
  • 競技車両がグラベル上に停止している。
  • トラブル車両が非常に遅いスピードで走行して、後続車両に危険を及ぼしている。
  • コースマーシャルが停止車両の回収を行っている。
  • コース上に大きな落下物がある

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黄旗の2本振動 (ダブルイエロー)

コース上に車両が停止していたり、部分的に塞がれているような場合に黄旗2本が提示されます。ドライバーは大幅に速度を落とし、すぐに停止ができる準備をする必要があります。

黄旗が2本提示されるケースとしては以下のような場合が考えられます。

  • コース上やコース脇に競技車両が停止し、後続車両の走行に影響を及ぼしている。
  • マーシャルがコース脇で停止車両の回収作業などを行っている。

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黄旗が提示されると

事故現場の手前(後方)のオブザベーションポストで黄旗が提示されると、現場の先(前方)のポストでは緑旗が提示されます。黄旗から緑旗までの区間は黄旗区間と定義され、黄旗区間中は追い越しが禁止されるなどの制限があります。

 

 

黄旗区間での追い越し

黄旗区間中の追い越しは禁止されます。

スーパー耐久のような複数のクラスが同時に走行するレースにおいてはクラス違いによる速度差が大きいですが、いくら速い車両でも黄旗区間での追い越しは禁止です。同様に周回遅れ車両であっても追い越しは禁止です。

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黄旗区間中の追い越しに対する検証

黄旗区間中に追い越しがあった場合、レースコントロールでは追い越したドライバーが黄旗を確実に確認できたかどうかが審議されます。

黄旗が出た瞬間にそのポストの前を通過した車両のドライバーは黄旗を確認することが困難と判断され、ペナルティにはなりません。

2016年SUPER GT第6戦(鈴鹿サーキット)では38号車ZENT CERUMO RC Fが36号車au TOM’S RC Fを黄旗区間中で追い越したと審議されました。国際映像では38号車が追い越す前に黄旗を提示しているオブザベーションポストの前を通過しているのが確認できましたが、レースコントロールは黄旗が提示されたのはポストを通過する直前でありドライバーが黄旗を確認するのは困難と判断され違反にはなりませんでした。

判定の経緯はTV番組の『SUPER GT プラス』内にてSUPER GTのDSO(Driving Standard Observer)を務める服部尚貴氏によって説明されました。

黄旗区間中でもレースコントロールがやむを得ないと判断した場合は追い越してもペナルティとならない場合があります。

  • 低速で走行している明らかなトラブル車両を追い越した。
  • レーシングラインを外して後続車両に先に行ってもらうようにゆずっている車両を追い越した。
  • 低速でコースインしてきたピットアウト直後の車両を追い越した。

 

 

黄旗区間での減速義務違反

黄旗区間では、ドライバーは減速して走行しなければならないため、黄旗区間中のスピンやオーバーラン、接触についても厳しく監視されます。

レースコントロールは減速して走行していればスピンやオーバーランしないはずと考えています。また、事故現場の近くを縁石を踏んで走行するなどした場合も減速義務違反としてペナルティとなるケースがあります。

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公式予選においては、黄旗区間を通過したにも関わらず、そのラップがベストタイムとなった場合は、黄旗区間で確実に減速していたかどうかが問われます。減速していなかったと判定された場合にはベストラップ抹消などのペナルティとなります。

2017年SUPER GT第3戦オートポリスでは公式予選中に36号車au TOM’S LC500がコースオフしグラベルにスタックしてしまったためイエローフラッグが振られました。その後、38号車ZENT CERUMO LC500と6号車WAKO’S 4CR LC500はこの黄旗区間を通過しましたが、そのままコントロールラインを通過しベストラップを記録しました。しかし、レースコントロールは予選終了後にこの2台の黄旗区間での減速が不十分だったと判断し、黄旗区間を通過したラップのタイム(ベストラップタイム)は抹消されてしまいました。

 

 

黄旗の撤去

停止車両の撤去が完了したなど、事故現場の危険が取り除かれたら、事故現場手前(後方)のポストの黄旗が撤去されます。合わせて現場先(前方)のポストの緑旗も撤去されます。

停止車両がガードレールの開口部などへ完全に引き込まれなくても、グラベルの奥やコーナーのイン側など、レースコントロールが安全と判断した場所へ車両を移動させた時点で黄旗を撤去するケースもあります。運用はシリーズやサーキットによって異なります。

 

 

複数手前のポストからの提示

競技長は黄旗現場の複数手前のポストから黄旗の提示を命じることができます。コース上に大きな危険が存在しているときに、競技車両を確実に減速させたい場合に運用されます。

ただし、運用には競技長判断が必要となるため、現場のコースマーシャルの判断で手前のポストから黄旗を提示することはできません。

具体的には以下のような場合が挙げられます。

  • コース上に複数の車両が停止している
  • 黄旗提示のポストがブラインドコーナーの先にある
  • 事故現場にオイルが漏れており、ドライバーに早めの減速を促す必要がある。
  • 車両回収中のため、競技車両の走行速度を十分に下げる必要がある。

 

 

落下物での提示

通常、落下物に対してはオイルフラッグを提示して対応しますが、落下物が大きく競技車両の走行に危険を及ぼすと考えられる場合は黄旗が提示されます。

 

 

マーシャルによる落下物回収

コース上の落下物がレーシングライン上にあるなど競技車両の走行に影響がある場合は、マーシャルによって落下物の回収が行われます。回収は競技車両の合間をぬって行われますが、回収中はマーシャルがコース上に存在し危険な状況であるので黄旗が提示されます。

 

 

スーパーフォーミュラの公式予選での運用

スーパーフォーミュラでは黄旗区間を通過した車両のタイムは採択されない規則があります。黄旗区間を減速しているかどうかではなく、黄旗区間を通過した全ての車両が対象となります。同様の規則が全日本F3選手権にも導入されています。

 

2017年全日本スーパーフォーミュラ選手権 統一規則

第27条 プラクティスセッション(公式予選等)

9. 公式予選中、黄旗提示区間を走行した車両の当該周回タイムは、公式予選結果として採用しない。

 

 

2017年全日本フォーミュラ3選手権 統一規則

第27条 プラクティスセッション(公式予選等)

6. 公式予選中、黄旗提示区間を走行した車両の当該周回タイムは、公式予選結果として採用しない。

 

 

赤旗が提示された時の運用

ローカルルール的な運用となりますが、事故等により赤旗中断となった場合に、原因となった事故現場を後続車両に知らせるために、赤旗に加えて、現場手前のポストでは黄旗(ダブルイエローの場合もあり)を併用する場合があります。

 

 

フォーメーションラップ

フォーメーションラップでは全てのポストで緑旗が提示されますが、グリッド直前のポスト等において減速を促すために黄旗を提示することが一般的となっています。規則により運用が明記されているわけではありませんので、サーキット毎に運用方法が異なります。

 

 

ローリングラップ

ローリングスタートのレースにおいてはローリングラップ中は全てのポストで黄旗が提示されます。レースがスタートしたら黄旗が撤去されます。