モータースポーツには四輪レースだけでも、F1やSUPER GTのように様々なレースシリーズがあり、マシンも違えば、レースの距離や時間、チャンピオンの決め方なども様々です。
モータースポーツ初心者にとっては、複雑で難しいルールが多いと思われがちですが、基本的なルールについては共通する部分が多いかと思います。
本記事では四輪レースに関する基本的なルールについて解説します。
レーシングカーの種類
四輪のモータースポーツで使用されるレーシングカーは以下の3種類に大きく分類することができます。
- フォーミュラカー
- プロトタイプカー
- ツーリングカー
フォーミュラカー
フォーミュラカーはF1 (FIA Formula 1 World Championship)に代表される、タイヤが剥き出しのレース専用の車両規格に沿って開発された車両のことです。『オープンホイール』と呼ぶ場合もあります。
日本では全日本スーパーフォーミュラ選手権、アメリカではインディカーシリーズ (NTT IndyCar Series)など、各国で独自の進化が進んでいます。
近年ではエンジンではなくモーターを動力源としたEVフォーミュラカーを使用したフォーミュラE (ABB FIA Formula E Championship)が新たにシリーズとして加わり、人気を集めています。
スーパーフォーミュラ (SF14)
代表的なカテゴリー
ヨーロッパ
- FIA Formula 1 World Championship (F1)
- FIA Formula 2 Championship (FIA F2)
- FIA Formula 3 Championship (FIA F3)
- ABB FIA Formula E Championship (フォーミュラE)
アメリカ
- NTT IndyCar Series (インディカーシリーズ)
- Indy Lights (インディライツ)
日本
プロトタイプカー
プロトタイプカーはWEC(FIA World Endurance Championship:世界耐久選手権)に代表され、フォーミュラカーとは異なり、タイヤがカウルと呼ばれるボディに覆われている形状が特徴的です。
ボディデザインも屋根ありのクローズドタイプと、屋根なしのオープンタイプがあるなど、メーカーによって様々な形状をしています。WECの1戦となっている『ルマン24時間耐久レース』が特に有名です。
代表的なカテゴリー
ヨーロッパ
- WEC (世界耐久選手権)
- ヨーロピアン・ルマン・シリーズ
アメリカ
- アメリカン・ルマン・シリーズ
アジア
- アジアン・ルマン・シリーズ
ツーリングカー
ツーリングカーは市販車をベースとし、レーシングカーに仕立てた車両のことで、日本ではAUTOBACS SUPER GT SERIESやピレリ スーパー耐久シリーズなどのシリーズが有名です。
フォーミュラカーと区別するために箱車と呼ばれることがあります。ナンバー付のTOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ RaceやTOYOTA GAZOO Racing Netz Cup Vitz Raceなどのワンメイクレースも各地で開催されています。
代表的なカテゴリー
ヨーロッパ
- WTCR (World Touring Car Cup)
- DTM (ドイツ・ツーリングカー選手権)
- ブランパンGTシリーズ
- ニュルブルクリンク24時間耐久レース
アメリカ
- NASCAR
日本
走行セッションの種類
モータースポーツの走行セッションは主に、以下の3セッションに分類されます。
- フリー走行
- 公式予選
- 決勝
フリー走行と公式予選は1周のラップタイムの速い順に順位が決定され、決勝は規定の周回数を完走したときのコントロールラインの通過順位によって競われます。
フリー走行
フリー走行は開始時間と終了時間が規定され、時間内であれば、自由に走行して構いません。『プラクティス』と呼ばれる場合もあります。
主に各サーキットやそのときの天候に合わせた車両のセットアップが行われますが、ドライバーがサーキットに慣れるため、タイヤの特性を知るためなど、様々な用途に使用されます。
ベストタイム順で順位が決められますが、フリー走行の結果は記録には残らないため、公式予選に向けて1周のタイムアタックを重視するチームもいれば、決勝に向けての長距離走行をテストするチームもあるため、単純にフリー走行のタイムだけで速い、遅いを判断することはできません。
公式予選
決勝のグリッド(スタート)順を決めるためのセッションです。タイムアタックを行い、1周のラップタイムによって順位が競われます。英語では『Qualifying(クォリファイ)』と言います。
以前はフリー走行のように開始時間と終了時間が規定され、時間内にタイムアタックを行い、順位が競われていましたが、現在はF1のようにQ1、Q2、Q3といった短時間のセッションを複数回行い、後方のグリッドから決定する方式が主流になっています。Q1、Q2、Q3のQは『Qualifying』を意味します。
同タイムが記録された場合
公式予選で複数のドライバーによって同じタイムが記録された場合は、先に記録したドライバーの順位が上になります。
1997年のF1ヨーロッパグランプリでは、ジャック・ヴィルヌーヴ選手、ミハエル・シューマッハ選手、ハインツ・ハラルド・フレンツェン選手の3名のドライバーが1分21秒072の同タイムを記録したことがありました。この時もレギュレーションに従い、タイムを記録した順に順位が決定されました。
F1における公式予選の流れ
F1の公式予選はQ1、Q2、Q3の3セッションから構成されます。出走台数が20台の場合、最初に18分間のQ1が行われ、各ドライバーのタイミングでタイムアタックを実施し、最も遅い5台の順位(16位~20位)が決定されます。上位の15台はQ2に進出し、Q1で記録したタイムは消去されます。
Q1のチェッカーから7分間のインターバルの後、15分間のQ2が行われ、Q1同様にタイムアタックを実施し、最も遅い5台の順位(11位~15位)が決定されます。上位の10台はQ3に進出し、Q2で記録したタイムは消去されます。
Q2のチェッカーから8分間のインターバルの後、12分間のQ3が行われ、残りの10台の順位(1位~10位)が決定されます。
予選中にコース上に停止した車両は以後のセッションを走行することができません。
決勝
公式予選によって決められたグリッド順からスタートし、規定周回数を完了したときのコントロールラインを通過した順に順位が決められます。『レース』とはこの決勝の走行セッションのことを指します。
同タイムが記録された場合
決勝で複数の車両が同タイムでコントロールラインを通過し、フィニッシュとなった場合は、写真判定によって順位が決められます。
各車両にはトランスポンダーと呼ばれる発信機が取り付けられており、トランスポンダーがサーキットのコントロールラインなどに埋め込まれたセンサーの上を通過したことを検知することによってタイム計測が行われています。
トランスポンダーの取り付け位置の違いや、車両のボディ形状の違いなどがあるため、同タイムでフィニッシュした場合でも写真判定をすると、ほとんどの場合はどちらが前でフィニッシュしたのか判断することができます。
決勝におけるレース形式
レース形式は主に以下のの2種類に分けられます。
- 規定された周回数を走行するもの
- 規定された時間を走行するもの
規定された周回数を走行するもの
F1、SUPER GT、スーパーフォーミュラなどのレースに代表され、レースの走行距離(周回数)があらかじめ決められています。
シリーズの規則によってレース距離が決められていますので、その距離に合わせてサーキット毎に周回数が決められています。規定された周回が完了したときにコントロールライン付近でトップの車両からチェッカーフラッグが振られレースが終了します。
レースを完走できなくても(チェッカーフラッグを受けられなくても)、規則で決められた規定周回数を完了していると完走扱いとなります。
レース距離が周回数で規定されていても、最大時間によってレースの終了が規定されています。F1においては規定周回数を完了していなくても、スタートから2時間経過した時点の周回がファイナルラップ(最終周)となります。これは”2時間ルール”と呼ばれF1の世界ではよく知られています。
レース距離の例
F1
305kmを超える最小周回数
SUPER GT
250〜1000kmを超えた最初の周回
SUPER FORMULA
110〜300km
5) 選手権競技会
5.3 すべてのレース距離(本規則第36条9に規定されている、スタートシグナルから第43条1に規定されるレース終了合図まで)は、305kmを超える最少周回数と同等とする。ただし、所定のレース距離が走破される前に2時間が経過してしまう場合は、2時間が経過し終えた周回の次の周回終了時点で先頭車両がコントロールライン(以下、ライン)を通過した時にレース終了合図が表示される。ただし、これによって予定された周回数を超えることがないことを条件とする。下記の状況下でのみ、上記について例外がある:
a) モナコでのレース距離は、260kmを超えて走破した最少周回数と同等である。
b) レースが中断された場合(第41条参照)、中断の長さは4時間の最大総レース時間を上限とし、この時間に追加される。
c) フォーメーションラップがセーフティカーの先導で開始された場合(第36条14 c)参照)レース周回数はセーフティカーが走行した周回数引く1周まで減らされる。
第6条 SUPER GTシリーズ競技会
2. 本シリーズ競技会として申請されるレースの走行距離は、最短250㎞から最長1,000㎞を超えた最初の周回までとし、レース毎に競技会特別規則でレース距離(以下「当初のレース距離」という)を定める。
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第6条 参加車両
5. 本競技会のレース距離は、下記の通りとする。
1) 1大会1レース制の場合は、最短110km、最長300kmとする。
2) 1大会2レース制の場合は、各々のレースを最短110km、最長300kmとする。
3) 1大会2ヒート制の場合は、1ヒート最短75km、最長180kmとし、合計300km以内とする。
規定された時間を走行するもの
WECやスーパー耐久などのシリーズに代表され、主に耐久レースで採用されている方式です。レース時間はシリーズで統一されておらず、レース毎にそれぞれ決められており、WECのルマン24時間レースが特に有名です。
規定された時間が経過した周回がファイナルラップ(最終周)とされ、その周回が完了したときにトップの車両からチェッカーフラッグが振られます。時間で規定されているレースは規定周回数がない場合が多く、その場合は、どんなに周回数が多くてもチェッカーフラッグを受けることができないと完走扱いになりません。
チャンピオンの決め方
F1やSUPER GTなどの複数のサーキットでレースが行われるシリーズ戦においては、それぞれのレース結果に応じたポイントが与えられ、年間を通して獲得したポイント数で争われます。最もポイントを獲得したドライバーがシリーズチャンピオンとなります。
レース毎の獲得ポイントはシリーズによって異なり、シリーズ毎の特別規則書に規定されています。F1の場合は1位から10位までに以下のポイントが与えられます。
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 | 7位 | 8位 | 9位 | 10位 |
25 | 18 | 15 | 12 | 10 | 8 | 6 | 4 | 2 | 1 |
F1の場合、タイトルはドライバーだけでなく、コンストラクター(チーム)にも与えられます。1チーム2台体制で参戦していますので、2人のドライバーの獲得ポイントの合計がコンストラクターズポイントとして加算されます。
同ポイントで並んだ場合は、優勝の数が多い方が上位となります。どちらのドライバーも優勝していない場合は2位の数が多いドライバーが上位となります。それでも決まらない場合は3位の数、4位の数・・・が多いドライバーが上位となります。それでも決められない場合は、審査委員会の審議により決められる場合もあります。
シリーズによっては公式予選でポールポジションを獲得したドライバーや決勝でファステストラップを記録したドライバーへポイントが与えられる場合もあります。
6) 世界選手権
6.1 フォーミュラ1世界選手権のドライバーに対する選手権タイトルは、実際に行われた競技会で獲得したすべてのポイントの合計が最も多いドライバーに与えられる。
6.2 フォーミュラ1世界選手権のコンストラクター選手権タイトルは、2台の車両(第8条6参照)で獲得した合計ポイントが最も多い競技参加者に与えられる。
6.3 コンストラクターとは、そのエンジンあるいはシャシーの知的所有権を有する付則6に掲載の部品を設計した者(法人および非法人を含む)をいう。エンジンもしくはシャシーの銘柄は、そのコンストラクターにより帰属される名称とする。
これに掲載された部品の設計および使用についての義務は、コンストラクターが付則6の規定に従い、いずれの掲載部品の設計および/あるいは製造を第三者より調達することを妨げるものではない。
シャシー銘柄がエンジン銘柄と異なる場合、選手権タイトルは前者に与えられるものとし、前者は車両の名称において常に後者の前に位置するものとする。
6.4 両選手権タイトルともに各競技会で次のポイントが授与される。
1位: 25ポイント
2位: 18ポイント
3位: 15ポイント
4位: 12ポイント
5位: 10ポイント
6位: 8ポイント
7位: 6ポイント
8位: 4ポイント
9位: 2ポイント
10位: 1ポイント
上記のポイント配分に加え、レースで最速ラップを達成したドライバーに1ポイント、また当該ドライバーが運転した車両のコンストラクターに1ポイントが授与されるが、その周回タイムが罰則を受けることなく達成され、ドライバーが最終のレース順位認定で上位10位以内にいることが条件とされる(第45条参照)。最速ラップが上位10位以内に入っていないドライバーによって達成された場合にはポイントは授与されない。
6.5 決勝レースが本規則第41条により中断され、再スタートができなかった場合、先頭車両が2周回あるいはそれ未満しか満たしていない場合はポイントが与えられず、先頭車両が2周回以上走行したがレースの当初予定距離の75%を走破していない場合にはハーフポイントが与えられ、先頭車両がレースの当初予定距離の75%以上を走破した場合はフルポイントが与えられる。
フォーメーションラップがセーフティカーの先導で開始された場合(第36条14c)参照)、オリジナルのレース距離は第5条3c)によって計算された距離であるとみなされる。
ただし、4時間の最大総レース時間は(第5条3b)参照)予定されていたレースのスタート時刻より開始される。
6.6 シリーズで1位、2位、3位となったドライバーは、FIAの年間表彰式に出席しなければならない。
7) デッドヒート(同着)
7.1 同着になった競技参加者のポジションすべてに与えられる賞とポイントは、加算したうえ平等に分けられる。
7.2 複数のコンストラクターまたはドライバーが同一ポイントでシリーズを終了した場合(そのどちらかの場合においても)、選手権の上位者は下記の方法により決定される。
a) 1位の回数が一番多いもの。
b) 1位の回数が同じ場合は、2位の回数が一番多いもの。
c) 2位の回数も同数の場合は、3位の回数が一番多いもの、などのように勝者が決まるまで続ける。
d) 以上の方法によっても結果が出ない場合には、FIAが適切と思われる基準に従って勝者を決定する。
33) 予選セッション
33.1 予選セッションは、決勝前日にP3の終了後2時間以上開けて開始される。
予選セッションは次のように行われる:
a) 最初の18分のセッション(Q1)に、全車両はコース上に出ることが許され、このピリオドの終了時点で、最も遅い5台の車両がその後のすべてのセッションに参加することを禁じられる。
次に、残った15台の車両が達成したラップタイムは消去される。
b) 7分間の休憩の後に、15分間のセッション(Q2)が再開され、残った15台の車両はコース上に出ることが許される。このピリオドの終了時点で、最も遅い5台の車両がその後のすべてのセッションに参加することを禁じられる。
次に、残った10台の車両が達成したラップタイムは消去される。
c) 8分間の休憩の後に、12分間のセッション(Q3)が再開され、残った10台の車両はコース上へ出ることが許される。
上述の手順は、競技会に公式に参加資格のある台数が20台の場合を想定したものである。22台エントリーの場合には6台の有資格車両がQ1およびQ2の終了後に除かれ、24台エントリーの場合には7台の有資格車両がQ1およびQ2の終了後に除かれる、というように、参加資格のある車両台数がさらに多ければ取り除く車両台数を増やして対応する。
33.2 予選中、車両をサーキット上に停止したドライバーは、そのセッションのそれ以降に参加することは認められない。
33.3 予選終了時点で各ドライバーが達成したタイムが正式発表される。
33.4 F1技術規則に定義されている補助オイルタンク(AOT)は、すべての予選セッション中、空にしておかなければならない。