2022年 F1 第7戦 モナコGP 開催概要

 

2021年 F1 第22戦 アブダビGP セーフティカーの運用手順

 

全22戦に渡って争われてきた2021年シーズンのF1はアラブ首長国連邦にあるヤスマリーナサーキットで最終戦アブダビグランプリを迎え、劇的な展開を制したマックス・フェルスタッペン選手が優勝し、自身初となるドライバーチャンピオンを獲得しました。

劇的な展開のきっかけとなったセーフティカーの運用方法について物議を醸すことになりましたが、改めて実際に起こったこととセーフティカーの運用手順について振り返ってみたいと思います。

 

 

レース終盤のセーフティカー導入

レース35周目、レッドブルのマックス・フェルスタッペン選手はアントニオ・ジョビナッツィ選手のマシンがコース脇にストップしたことにより導入されたバーチャル・セーフティカー(VSC)の間に新品のハードタイヤに交換しました。

その後、ファステストラップを連発するも、独走するメルセデスのルイス・ハミルトン選手に追いつくことができず、ハミルトン選手が徐々にタイトル獲得へ近づいていく展開となっていました。

ところが、レース終盤の53周目にウイリアムズのニコラス・ラティフィ選手とハースのミック・シューマッハ選手が接触し、ラティフィ選手のマシンがガードレールにクラッシュしたことにより、セーフティカーが導入されることになりました。

そして、残り1周でセーフティカーが解除され、セーフティカー導入中にソフトタイヤへ履き替えたフェルスタッペン選手がファイナルラップでハミルトン選手をオーバーテイクし、アブダビグランプリの優勝と2021年シーズンのワールドチャンピオンを獲得しました。

 

 

メルセデスの抗議

レース後、メルセデスはスチュワードに対して、2件の抗議を提出しました。

1件目は『セーフティカー導入中にフェルスタッペン選手が、ハミルトン選手を追い越したこと』についてです。

セーフティカー解除の直前にフェルスタッペン選手がハミルトン選手に並びかけ、フェルスタッペン選手のノーズが一瞬だけハミルトン選手を追い越したシーンが国際映像においても放送されました。

しかしながら、この抗議については、セーフティカーが解除され、コントロールラインを通過したタイミングでフェルスタッペン選手がハミルトン選手の後ろにいることが確認されているため、スチュワードによって棄却されました。

 

2件目は『周回遅れの車両がセーフティカーを追い越した次の周にセーフティカーが解除される手順が守られなかったこと』についてです。

スポーティングレギュレーションの48条12ではセーフティカー導入中においても、公式メッセージシステムで『LAPPED CARS MAY NOW OVERTAKE (周回遅れ車両は追い越すことができる)』と表示された場合、周回遅れの車両は前方を走行する車両とセーフティカーを追い越すことが認められています。

これは、セーフティカーが解除された後に周回遅れの車両が隊列の中にいることで、トップ争いの邪魔をしてしまうなど、レース展開に影響を及ぼすことを避けるために導入されたルールです。

今回のアブダビグランプリでは、この表示が行われる前に『LAPPED CARS WILL NOT BE ALLOWED TO OVERTAKE (周回遅れ車両はオーバーテイクすることができない)』と表示されたため、混乱の原因になりました。

その後、57周目に『LAPPED CARS 4 (NORRIS) – 14 – 31 – 16 – 5 TO OVERTAKE SAFETY CAR (周回遅れの4(ノリス) – 14(アロンソ)  – 31(オコン) – 16(ルクレール) – 5(ベッテル)はセーフティカーをオーバーテイクできる)』とメッセージが表示され、ハミルトン選手とフェルスタッペン選手の間にいた5台の周回遅れ車両だけがセーフティカーをオーバーテイクすることが認められました。

また、スポーティングレギュレーションの48条12では周回遅れ車両がセーフティカーをオーバーテイクした次の周回の最後でセーフティカーが解除される旨が記載されていますが、実際には次の周回ではなく、その周で解除されました。

レギュレーションに記載の運用方法と異なっていたことは事実ですが、スポーティングレギュレーションの15条3には、セーフティカーの運用ルールについてはレースディレクターの決定が優先される旨の内容が記載されています。

また、セーフティカーを追い越すことができる周回遅れ車両はすべてではない場合があることがレギュレーションによって定められています。

そのため、ハミルトン選手とフェルスタッペン選手の間にいた5台だけがセーフティカーを追い越すことが認められたことは、間違ったことではありません。

その結果、スチュワードはセーフティカーの運用ルールに問題が無かったと判断し、2件目のメルセデスの抗議も棄却しました。

これらのメルセデスが行った2件の抗議が棄却されたことによって、アブダビグランプリの決勝結果は正式に決定し、フェルスタッペン選手のドライバーズチャンピオンが確定しました。

 

 

メルセデスの控訴の意向

モータースポーツでは抗議が認められなかった場合においても、控訴する権利があることが認められています。

そのため、メルセデスはセーフティカーの運用手順が48条12どおりに行われなかったことに対して控訴する意向であることを明らかにしています。

アブダビグランプリの決勝結果は正式に決定していますが、メルセデスが控訴することによって、アブダビグランプリの結果が覆る可能性はゼロではありません。

メルセデスが正式に控訴すれば、レースディレクターが周回遅れの車両がセーフティカーを追い越した次の周回でセーフティカーを解除するのではなく、その周でセーフティカーの解除を判断したことがレギュレーションに合致していたかどうか、セーフティカーの運用が通常とは若干異なる手順で行われていたことがレースディレクターの裁量の範囲内だったのかどうかといったところが、争点となりそうです。

2021年12月16日、メルセデスはセーフティカーの運用手順に対して行う予定だった控訴を取り下げることを発表しました。メルセデスは裁定結果に納得はしていないものの、F1の将来のために、FIAに公平なルールづくりを求めています。

これにより、マックス・フェルスタッペン選手のドライバーズチャンピオンは確定となりました。

 

 

まとめ

最終的にメルセデスが控訴の意向を取り下げたため、アブダビグランプリのレース結果は正式に決定しましたが、セーフティカーの運用手順がレギュレーションどおりに行われなかった可能性がある問題が発生したことは事実です。

通常のセーフティカーの運用手順どおりに周回遅れ車両がセーフティカーを追い越して、次の周回にセーフティカーが解除されていれば、レースはセーフティカー先導のままで終了していたことになるため、ドライバーズチャンピオンはハミルトン選手が獲得していたことになります。

アブダビグランプリはハミルトン選手がパフォーマンスの高さを発揮して終始レースをリードするレース展開だったため、ファイナルラップでの逆転はかなり劇的な展開でした。

いくらレースをリードしていても、セーフティカー導入によって、レース展開がひっくりかえるのは、いかがなものかと感じることもありますが、これもモータースポーツの一部であると言えます。

逆転を狙うために『セーフティカーが導入されれば…』を期待するのも当然で、実際にそうなったときにチャンスをものにするもの実力のうちだと考えます。

実際、レースディレクターは通常のセーフティカーの運用であれば、セーフティカー先導のままレースが終了していたところを、残り1周でもレースを再開しようとするために、セーフティカー解除の手順を急いだのだと思います。

レースが再開されれば、残り1周とはいえ、ソフトタイヤを履いたフェルスタッペン選手が断然有利な展開になることは誰が見ても分かることだったので、レースディレクターの判断がレース結果を左右したと言えます。

フェアでは無かったと言われても仕方ありませんが、これもモータースポーツ。レギュレーションが不十分なのであれば、更に改善していくべきだと考えます。

大前提として、F1はスポーツなのでレギュレーションどおりに競技が行われることが重要です。

 

 

スポーティングレギュレーション(抜粋)

2021 FURMULA ONE SPORTING REGULATIONS

48) SAFETY CAR

48.12 If the clerk of the course considers it safe to do so, and the message “LAPPED CARS MAY NOW OVERTAKE” has been sent to all Competitors via the official messaging system, any cars that have been lapped by the leader will be required to pass the cars on the lead lap and the safety car.

This will only apply to cars that were lapped at the time they crossed the Line at the end of the lap during which they crossed the first Safety Car line for the second time after the safety car was deployed.

Having overtaken the cars on the lead lap and the safety car these cars should then proceed around the track at an appropriate speed, without overtaking, and make every effort to take up position at the back of the line of cars behind the safety car. Whilst they are overtaking, and in order to ensure this may be carried out safely, the cars on the lead lap must always stay on the racing line unless deviating from it is unavoidable. Unless the clerk of the course considers the presence of the safety car is still necessary, once the last lapped car has passed the leader the safety car will return to the pits at the end of the following lap.

If the clerk of the course considers track conditions are unsuitable for overtaking the message “OVERTAKING WILL NOT BE PERMITTED” will be sent to all Competitors via the official messaging system.

 

15) OFFICIALS

15.3 The clerk of the course shall work in permanent consultation with the Race Director. The Race Director shall have overriding authority in the following matters and the clerk of the course may give orders in respect of them only with his express agreement:

a) The control of practice, sprint qualifying session and the race, adherence to the timetable and, if he deems it necessary, the making of any proposal to the stewards to modify the timetable in accordance with the Code or Sporting Regulations.

b) The stopping of any car in accordance with the Code or Sporting Regulations.

c) The stopping of practice, suspension of a sprint qualifying session or suspension of the race in accordance with the Sporting Regulations if he deems it unsafe to continue and ensuring that the correct restart procedure is carried out.

d) The starting procedure.

e) The use of the safety car.