スタート直後のターン1でのアクシデント
ハンガロリンクで開催された2021年第11戦ハンガリーGPでは、フォーメーションラップ開始直前に降り出した雨によって、路面はウェット状態となり、すべてのマシンがインターミディエイトタイヤに履き替えてレースをスタートしました。
スタート直後のターン1で多重クラッシュが発生し、複数台のマシンが巻き込まれる大きなアクシデントとなりましたが、このアクシデントは、
- メルセデスのバルテリ・ボッタス選手がランド・ノリス選手へ追突したこと
- アストンマーティンのランス・ストロール選手がシャルル・ルクレール選手へ追突したこと
による2件の接触が原因で発生したと考えられます。
このアクシデントによってストップした車両を撤去するためにセーフティカーが導入されましたが、その後、レッドフラッグが振られ、レースは一時中断となりました。
今回は、この複数台のマシンによる接触について解説してみます。
Absolute chaos at Turn 1 of the Hungarian Grand Prix 😱#HungarianGP 🇭🇺 #F1 pic.twitter.com/MZycUtllCa
— Formula 1 (@F1) August 1, 2021
ボッタス選手が原因によるアクシデント
スタートに出遅れたメルセデスのバルテリ・ボッタス選手はターン1でのブレーキングに失敗し、タイヤをロックさせてしまいました。ボッタス選手は前方に走行していたマクラーレンのランド・ノリス選手に追突してしまい、2台のマシンはコントロールを失って、ターン1を真っすぐに進む形となりました。
その先に、レッドブルの2台のマシンが走行しており、ノリス選手のマシンはレッドブルのマックス・フェルスタッペン選手の側面に衝突し、ボッタス選手のマシンはセルジオ・ペレス選手の側面に衝突しました。
ボッタス選手の追突が原因となったアクシデントには3台が巻き込まれ、マシンを損傷したノリス選手とペレス選手はレースをリタイアすることになりました。
ストロール選手が原因によるアクシデント
アストンマーティンのランス・ストロール選手もターン1でのブレーキングに失敗し、フェラーリのシャルル・ルクレール選手に追突してしまいました。
追突によって弾かれてしまったルクレール選手のマシンはマクラーレンのダニエル・リカルド選手のマシンに衝突しました。
ストロール選手の追突が原因となったアクシデントには2台が巻き込まれ、マシンを損傷したルクレール選手はリタイアすることになりました。
スチュワードのよる裁定
スチュワードはターン1でのアクシデントの原因となったボッタス選手とストロール選手に対して、次戦のベルギーグランプリでの5グリッド降格ペナルティとペナルティポイント2を科しました。
ボッタス選手とストロール選手はこのアクシデントにより、すでにレースをリタイアしてしまっているため、次戦でのグリッド降格のペナルティは妥当と考えます。
また、スチュワードは裁定の理由を『天候を考慮したとしても、衝突の原因はボッタス選手とストロール選手にある』とし、国際モータースポーツ競技規則 付則L項 第4章 第2条 d) に違反したとしています。
まとめ
通常、複数台のマシンが巻き込まれたアクシデントであっても、アクシデントのきっかけとなった最初の接触に違反性があるかどうかが検証されます。
今回のハンガリーGPでのターン1でのアクシデントにおいては、ボッタス選手のノリス選手へ対する追突行為、ストロール選手のルクレール選手に対する追突行為のみが問われます。
アクシデントにより、たくさんのドライバーがリタイアを強いられたり、ケガを負うなどして重大な結果になったとしても、結果の重大性に応じて科せられるペナルティが重くなることは基本的にはありません。
結果として、大きなアクシデントに発展した場合は、重いペナルティを科すべきという意見もありますが、現在のF1をはじめとするモータースポーツにおいては、そのような判定はされていないと考えます。
また、マシンをぶつけられたことによってコントロールを失ってしまった結果、他のマシンに衝突してしまった場合、ぶつけられたことに対して過失が無ければ、他のマシンに衝突してしまった行為に対する責任を問われることはありません。
今回のハンガリーGPではボッタス選手に追突されたノリス選手がコントロールを失って、フェルスタッペン選手に衝突しましたが、ノリス選手には過失が無いため、責任を問われることもペナルティが科せられることもありません。
このように、複数台のマシンが関係するアクシデントについては、きっかけとなった車両同士の接触行為に対してのみが検証され、裁定が下されるようになっています。
第4章 サーキットにおけるドライブ行為の規律
第2条 追い越し、車両のコントロールと走路の範囲
d) 重大な過誤を繰り返したり、あるいは車両に対するコントロールの欠如(走路から離脱するような)が見受けられるときは、大会審査委員会に報告され、一切の当該ドライバーに対し失格に至るまでの罰則を適用することができる。