2024年 F1 第4戦 日本GP 開催概要

 

『デジタルフラッグ』をご存知ですか?

 

従来のフラッグ

モータースポーツではコース上の危険の存在やレースコントロールからの指示をフラッグを振ることによってドライバーに知らせています。

たとえば、コース上に危険がある現場の手前にあるオブザベーションポストではイエローフラッグが振られます。現場の次のポストではコース上がクリア(安全)という意味のグリーンフラッグが振られます。

 

 

 

 

デジタルフラッグ

F1をTVで観ていると、フラッグの代わりにコース脇に大きなディスプレイのようなものが設置されており、黄色や緑などの色の表示が表示されているのが分かると思います。

これは『デジタルフラッグ』や『灯火パネル』などと呼ばれ、従来のフラッグに代わる役割をしています。デジタルフラッグにフラッグと同じ色が表示されることによって、フラッグと同じ意味をドライバーに知らせています。

 

出典:panasonic.com

 

フラッグを振るといった動作は、デジタルフラッグでは点滅となります。例えば、黄色が点滅している表示の場合は、イエローフラッグが振られているという意味です。

国際モータースポーツ競技規則 付則H項においては、デジタルフラッグは赤旗、黄旗、緑旗、青旗、白旗の代用ができると記載されています。また、特別規則書に記載すれば、オイルフラッグやセーフティカー(SC)のような表示やオリジナルの表示による運用も認められるようになります。

デジタルフラッグはかなり高輝度なLEDを採用しており、日中でも視認性に優れています。また、24時間耐久レースなど、夜間の走行がある場合は従来のフラッグでは見えなくなってしまいますが、デジタルフラッグの場合は、夜間でも見やすく、運用に問題ありません。

デジタルフラッグの操作はオブザベーションポストのマーシャルが行います。F1ではハイテク化が進み、デジタルフラッグに連動して、ドライバーのステアリングにフラッグの情報が表示されるようになっています。

また、TVの中継画面に『YELLOW FLAG (イエローフラッグ)』と表示されることがありますが、これはデジタルフラッグと連動しているためです。

 

 

国内でのデジタルフラッグの運用

国内のサーキットにおいては、鈴鹿サーキットと富士スピードウェイでデジタルフラッグがすでに導入されています。他のサーキットにおいても、赤、黄色、緑といった信号(ランプ)によってフラッグの代わりとして運用しているところもありますが、国際モータースポーツ競技規則 付則H項に記載されているような仕様を満足できていなかったり、デジタルフラッグのような高度なこともできません。

国内で開催されるレースにおいては、従来のフラッグと併用してデジタルフラッグを使用していますが、デジタルフラッグは補助的な位置付けとされています。

従来のフラッグとデジタルフラッグの表示にズレが生じることは避けられないためです。したがって、オブザベーションポストで振られる従来のフラッグを基準として違反の判定が行われています。

ただし、デジタルフラッグの方が視認性が良く、フラッグが絡まったりすることもありません。デジタルフラッグをメインとし、従来のフラッグを補助としても良いように感じますが、いつまで従来のフラッグが優先として扱われるのかは分かりません。

 

 

まとめ

モータースポーツは最先端の技術の争いの場でもあるため、今後もモータースポーツの世界のデジタル化はどんどん進んでいくと考えられます。

デジタルフラッグには多くのメリットがありますが、現在運用されているデジタルフラッグは複数のフラッグやボードを同時に表示できないといった課題もあります。また、デジタルフラッグのようなデバイスを運用するためには、トラブルなどによって急に使えなくなってしまうことも想定しておく必要があります。

そのような場合においてもレースを中断することが無いように、人間がフラッグを振るといったアナログな行為はこれからも続くのではないかと思います。

 

 

国際モータースポーツ競技規則 付則H項

(2019年4月5日発行版)

2.5.3 灯火信号の仕様

振動表示される赤旗、黄旗、緑旗、青旗および白旗を補助するため、灯火を使用することできる。灯火が競技で使用される場合は、それを特別規則書に明記し、次の要件に配慮するものとする。

 

2.5.3.1 灯火の仕様

- 灯火として、FIAによって認可されたもので、標準的フィラメントランプと反射装置を使用したタイプ、発光ダイオード(LED)を使用したパネル型のタイプ、また、その他の十分に発光し忠実に色彩を表すことができるタイプのものが認められる。

- 灯火信号は、十分な光量および/または大きさを有し、眩しい日差しの下で250m離れた場所からでもはっきりと認識できるものであること。

- 灯火は3~4Hzの間隔で交互にフラッシュするものであること。

- 使用される灯火のタイプは、立ち上がり時間はほとんどなく、瞬時に光を発するものであること。

- 各灯火は70°以上の視認範囲を与えることができるものであること。

- 360°灯火は使用しないこととする。

- 使用される灯火は、周囲のあらゆる灯火状況のもとで、他の色に見間違わないようにするための十分な色彩度を有するものとする。

- 色彩コントラストを最大限に発揮するため、灯火は、つや消し黒の背景面上に取り付けられるものとする。これは太陽光が灯火正面の低い位置にある場合、または灯火の後方にある場合に視認性の確保を考慮したものである。

- 灯火には、次のマーシャルポストに自己の起動状態を知らせるリピーターが付属されているものとする。

- 常設の灯火の統合システムについては、各灯火の状況が自動的にレース管制に伝達されるものとする。

 

2.5.3.2 灯火の位置

- 通常、設置には、使用される各々の色2個を含むものとする。

- 灯火は、交互にフラッシュする1組となるように間隔をあけて配置され、合併しているように見えてはならない。

- 赤色と黄色の灯火は、互いに隣り合うように配置されてはならない。

- 灯火は、レーシングライン上の各ドライバーの主要視線から30°以内に設置されるものとする。

- 灯火は、ドライバーに対して最良状態の灯火表面が最も長時間見えるものとする。

 

2.5.3.3 灯火の操作

- それぞれの旗は、交互にフラッシュする1組のランプ、あるいはフラッシュライトパネルにより代替されるものとする。ピット出口の青色の信号は単体のフラッシュライトでもよい。

- 2本の黄旗の振動表示についても必要であると判断される場合には、旗信号としても提示されるものとする。

- 赤色灯火は、唯一レース管制から操作されるものとする。

- その他のすべての灯火は、マーシャルあるいはレース管制から操作され得るものとする。

- 灯火が個々の設置箇所で操作される場合、各コントロールボックスは、事故的な操作の可能性を回避すべく設計されているものとし、当該コントロールボックスはリピーターライトが組み込まれているものとする。

- 電気を使用するシステムには、電源が落ちることを自動的に防止できる機能が組み込まれていなければならない。

- 灯火信号は通常1度に1つの合図を示すものであるため、同時に複数の合図が必要とされる場合、フラッグマーシャルの存在が重要なものとなる。

 

2.5.3.4 その他の灯火信号

灯火パネルは、赤の縦縞のある黄旗、SCボードあるいはその他の信号の視覚的な代替物として使用することができるが、使用に際しては競技の特別規則書に明記されなければならない。

 

 

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