2023年
全日本スーパーフォーミュラ選手権は『FIA Formula 2 Championship』やアメリカの『インディカーシリーズ』などと並び、F1直下のトップフォーミュラカテゴリーとして日本を代表するモータースポーツカテゴリーのひとつです。
全日本スーパーフォーミュラ選手権は前身となる全日本F2000選手権、全日本F2選手権、全日本F3000選手権、全日本選手権フォーミュラ・ニッポンを経て、2013年に全日本選手権スーパーフォーミュラ(現在は全日本スーパーフォーミュラ選手権)に名称変更すると共に、日本だけではなくアジアのトップフォーミュラレースとして位置付けられています。
ダラーラ製『SF23』 (2023年シーズンから導入)
2023年シーズンのスーパーフォーミュラで使用されるマシンは2019年から採用されてきた『SF19』に変わって、2023年シーズンから新たに『SF23』が採用されます。
SF23はこれまでのSF19同様にイタリアのダラーラ・オートモービル社がスーパーフォーミュラのために開発したマシンです。ただし、SF23は新設計のマシンではなく、SF19のモノコックに新しいエアロパーツを装着したものでSF19をマイナーチェンジしたマシンと言えます。
2023年から導入されるSF23にはコース上でのオーバーテイクの増加を目的として空力性能が見直され、フロントウイング、リアウイング、ボディワークの形状が大きく変化しました。2022年には『赤虎』、『白虎』と呼ばれる開発中のマシンを使用して国内のサーキットでテスト走行が重ねられました。
SF23にはカーボンニュートラルに向けた取り組みとして、ボディを構成するカーボン素材に麻由来の天然素材などを使用し、原材料ならびに製造過程でのCO2の排出量を約75%抑制したBcomp社のバイオコンポジット素材が採用されています。また、リアウイング両端のリアライトにはウィンカーやハザードの機能が追加され、安全性向上に貢献しています。
【参考】ダラーラ製『SF19』 (2019〜2022年シーズン)
2014年から採用されてきた『SF14』に代わって、2019年から『SF19』が採用されました。SF19はSF14同様にイタリアのダラーラ・オートモービル社がスーパーフォーミュラのために開発したマシンです。
SF19には『クイック&ライト』と言われたSF14のコンセプトが踏襲されています。オーバーテイクをよりしやすくするために空力性能の見直しが行われました。また、リアウイング両端にリアライトが装着され、すでにF1で導入されているドライバーの 頭部を保護する安全デバイスである『HALO (ヘイロー)』も導入されました。これにより、走行性能の進化だけでなく安全性も強化されました。
制作 | ダラーラ・オートモービル (イタリア) |
全長 | 5,233 mm |
ホイールベース | 3,115 mm |
全幅 | 1,900 mm |
全高 | 960 mm |
最低重量 | 660 kg 以上 |
ギアボックス | リカルド製 6速パドルシフトシステム |
ブレーキ | ブレンボ製 キャリパー・カーボンディスク |
ステアリング | KYB製 電動パワーステアリングシステム |
フロントサスペンション | プッシュロッド トーションバースプリング |
リアサスペンション | プッシュロッド |
安全基準 | 2016 FIA セイフティレギュレーションに準拠 |
【参考】ダラーラ製『SF14』 (2014〜2018年シーズン)
スーパーフォーミュラでは2014年シーズンから2018年シーズンまでイタリア・ダラーラ社製の『SF14』が採用されました。当時のF1に迫る高い運動性能を持っており、導入初年度の2014年においてはレーシングカーの運動性能が最も試される鈴鹿サーキットの第1セクターでF1よりも速いタイムが計測されたことが話題となりました。
スーパーフォーミュラが開催される全てのサーキットにおいてSF14がそれまでのコースレコードを更新しました。
SF14はカーボンファイバー製モノコックを採用し、リカルド製6速シーケンシャルトランスミッション(パドルシフト)やブレンボ製ブレーキ等を搭載し、ドライバーを含めた車両重量は660kgです。
制作 | ダラーラ・オートモービル (イタリア) |
全長 | 5,268 mm |
ホイールベース | 3,165 mm |
全幅 | 1,910 mm |
全高 | 960 mm |
最低重量 | 660 kg (ドライバー搭乗時) |
ギアボックス | リカルド 前進6速、パドルシステム |
ブレーキ | ブレンボ キャリパー、ブレンボ カーボン製ディスク |
ステアリングシステム | KYB 電動パワーステアリングシステム |
フロントサスペンション形式 | プッシュロッド トーションバースプリング |
リアサスペンション形式 | プッシュロッド |
安全基準 | FIA 2010 F1規定に基づく |
2リッター直列4気筒直噴ターボエンジン
2014年シーズンからスーパーフォーミュラのエンジンは2リッター直列4気筒直噴ターボエンジンを採用しています。このエンジンは『NRE (Nippon Race Engine)』と呼ばれ、SUPER GTのGT500クラスの車両に搭載されるエンジンと共通の仕様となっています。
スーパーフォーミュラとSUPER GTのエンジンを共通することによって、開発面においてもコストダウンに貢献しています。スーパーフォーミュラでは、トヨタとホンダの2社が各チームにエンジンを供給しています。
2023年シーズンからマシンはSF19からSF23へ変更となりましたが、エンジンは変わらず2リッター直列4気筒直噴ターボエンジンであるNREを継続採用しています。
メーカー / 型式 | 本田技研工業株式会社製 / M-TEC HR-417E トヨタ自動車株式会社製 / TRD TRD01F |
排気量 | 2,000cc |
仕様 | 直列4気筒、ダイレクトインジェクション |
過給器 | ターボチャージャー(ギャレット製) |
最低重量 | 85 kg |
出力 | 405 kw (550 PS) 以上 |
出力制限方法 | 燃料リストリクターによる燃料流量制限 |
TOYOTA TRD TRD01F エンジン
オーバーテイクシステム
近年の四輪モータースポーツではレース中のオーバーテイクの機会を増やすため、様々なシステムの導入が検討されています。
F1では『DRS (Drag Reduction System)』が導入され、前方を走行する車両との距離が1秒以内となったときにDRSを作動させることができます。DRSを作動させると、リアウイングのエレメントが動き、一時的にドラッグと呼ばれる空気抵抗を減少させることで最高速度が伸びるようになり、オーバーテイクがしやすくなります。
アメリカのインディカーシリーズでは『プッシュトゥパス』と呼ぶシステムが導入されています。プッシュトゥパスを使用している間、一時的にターボエンジンの過給圧を上げ、エンジン出力を向上させます。使用できる時間はあらかじめ決められています。
スーパーフォーミュラでは『オーバーテイクシステム (OTS)』と呼ぶシステムが採用されています。オーバーテイクシステムが作動するとレギュレーションで規定されているエンジンへの燃料流量が1時間あたり5kg増加します。これにより、エンジンの出力が50馬力程度アップすると言われており、レース中のオーバーテイクの機会を増加させることに貢献します。
2018年シーズンまではオーバーテイクシステムを1回作動させると、エンジンの出力が20秒間増加するシステムとなっており、レース中に5回の使用が認められていました。
2019年シーズンからはマシンが『SF19』へ変更されることに併せて、オーバーテイクシステムの仕様も変更されることになりました。新たなオーバーテイクシステムは上限100秒の時間制に変更となりました。
2021年シーズンはレース中に使用できるオーバーテイクシステムの作動時間は200秒へ延長されました。
2022年シーズンまでオーバーテイクシステムが作動している間はロールバーのLEDランプが点滅し、観客がオーバーテイクシステムの作動を知ることができるようになっていましたが、2023年シーズンからオーバーテイクシステム作動中のランプの点滅が廃止されます。
これまで、ドライバーが後方から迫る車両のオーバーテイクシステムの作動をランプによって確認することができるため、オーバーテイクされないようにオーバーテイクシステムが使用されてきました。作動中のランプ点滅の廃止の目的はコース上でのオーバーテイクを増加させることが目的となります。
走行中のマシンからオーバーテイクシステムの作動を知ることができなくなりますが、スマートフォンアプリの『SFgo』でオーバーテイクシステムの作動を知ることができます。
オーバーテイクシステムの使用回数に制限はありませんが、1度オーバーテイクシステムを作動させるとインターバルタイムが設定され、この間はオーバーテイクシステムを使用することができません。オーバーテイクシステムを連続して使用することでブロックし続けることを防ぐためにこのような仕様となっています。
2022年シーズンまでインターバルタイムは100秒に設定されていましたが、2023年シーズンから開催されるサーキットによってインターバルタイムが変わります。
オーバーテイクシステムの残時間はロールバーに設置されているオーバーテイクランプの色で分かるようになっています。残時間が200秒から20秒の時は緑色に点灯します。残時間が20秒以下になると赤色に点灯します。オーバーテイクシステムを全て使い切るとLEDは消灯します。
オーバーテイクランプ (OTL)の点灯モード
グリーン(常灯)
残時間200秒~20秒
レッド(常灯)
残時間20秒未満
消灯
残時間0秒
インターバルタイム
開催サーキット | インターバルタイム |
富士スピードウェイ | 120秒 |
鈴鹿サーキット | 100秒 |
オートポリス | 100秒 |
スポーツランドSUGO | 110秒 |
モビリティリゾートもてぎ | 120秒 |
※2022年シーズンはすべてのサーキットで100秒に設定
タイヤはヨコハマタイヤのワンメイク
スーパーフォーミュラのタイヤはヨコハマタイヤのワンメイクです。2015年まではブリヂストンがタイヤを供給していました。
2017年シーズンの第4戦ツインリンクもてぎから、それまで使用されてきた『ミディアムタイヤ』に加えて、新たに『ソフトタイヤ』が導入されました。決勝ではソフトタイヤとミディアムタイヤの両方の仕様が義務付けられることとなりました。
ソフトタイヤは一般にミディアムタイヤよりも耐久性は低くなりますが、グリップ力が高い特性を持っています。ソフトタイヤのサイドウォールは赤くペイントされ、ミディアムタイヤと外見で区別できるようになっています。
ソフトタイヤの導入によって2019年シーズンまではソフトタイヤとミディアムタイヤの2スペックタイヤによってレースが争われてきました。しかしながら、パフォーマンスの高いソフトタイヤの寿命が想定よりも長かったことから、レースの大半をソフトタイヤで走りきることができていました。
そのため、2020年シーズン、2021年シーズンでは2スペックタイヤが廃止され、すべてのレースにおいてソフトタイヤの1スペックで開催されました。
メーカー | 横浜ゴム株式会社製 |
サイズ | フロント:250/620/R13 リア:360/620/R13 |
2023年シーズンからカーボンニュートラルタイヤを導入
2022年2月17日、横浜ゴムは2023年以降もスーパーフォーミュラへのタイヤ供給を継続することを発表すると共に、2023年シーズンからサステナブル素材を活用したカーボンニュートラルタイヤを供給することを明らかにしました。
横浜ゴムが持つノウハウを活用し、天然由来の配合剤やリサイクル素材等、再生可能原料を活用した新しいレーシングタイヤを開発しました。これまでのタイヤとほぼ同等の性能を維持しているとのことです。
コースレコード
サーキット | タイム | ドライバー | シーズン |
鈴鹿サーキット | 1分34秒442 | ニック キャシディ | 2020年 |
オートポリス | 1分24秒140 | 野尻 智紀 | 2020年 |
スポーツランドSUGO | 1分03秒953 | 山本 尚貴 | 2019年 |
富士スピードウェイ | 1分19秒972 | 野尻 智紀 | 2020年 |
モビリティリゾートもてぎ | 1分29秒757 | 野尻 智紀 | 2021年 |
スーパーフォーミュラ ロゴマーク
©JRP
スーパーフォーミュラ 視聴方法
2023年シーズンのスーパーフォーミュラは『J SPORTS』で放送されます。レース後はスーパーフォーミュラ公式YouTubeチャンネルで各レースのダイジェストが配信されます。
2023年シーズンからスマートフォンアプリ『SFgo』でスーパーフォーミュラの全セッションでライブ配信と見逃し配信が実施されます。
ABEMA TVでは全9戦のすべての決勝レースにおいて無料ライブ配信が行われます。
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