モータースポーツではサーキットを走行しているレーシングカーのラップタイムを『計時システム』によって自動で計測しています。ラップタイムは1000分の1秒単位で記録され、同時にセクタータイムや最高速度なども計測します。計測したタイムのデータはサーキット内のTVなどのディスプレイに配信され、これを『タイミングモニター』と呼んでいます。
レース中、ピットレーンのサインエリアに待機しているチーム監督やエンジニアがモニターを見つめている様子がTV中継で放送されることがありますが、これは、TVの中継映像を見ているのではなく、タイミングモニターを見ている場合がほとんどです。
そして、タイミングモニターで表示される自チームのドライバーのラップタイムや順位を争っているライバルとのギャップなどの情報から、ピットストップのタイミングを決めたり、ドライバーにプッシュの指示を出したりするなど、戦略を考えています。
サーキットでのラップタイムの計測方法
サーキットによって計時システムに違いがありますが、一般的なシステムの一例を説明します。
レーシングカーには『トランスポンダー』と呼ばれる発信機が取り付けられています。トランスポンダーはサーキットごとに異なるため、サーキットから貸与してもらい、使用後は返却する必要があります。もし、トランスポンダーを紛失した場合は弁償しなければなりません。
トランスポンダーは微弱な電波を出力しています。この電波には車両ごとに異なる信号も含まれており、この電波を受信することで、通過した車両を特定することができるようになっています。そのため、スポーツ走行や走行会などでトランスポンダーを車両に取り付けていない場合はラップタイムを計測することができません。
サーキットにはトランスポンダーが出力する電波を受信するための受信機が埋め込まれています。コントロールラインをはじめ、サーキットを3分割もしくは4分割したセクターとよばれる場所に受信機が埋め込まれています。
計時システムは基本的に車両が受信機の上を通過した時刻を記録しています。コントロールラインや各セクターで記録した通過時刻の情報を計算してラップタイムやセクタータイムを算出します。
ストレートエンドなどの最もスピードが出るところでは最高速度の計測を行なっている場合もあります。速度の計測には一定の間隔を空けて受信機を2箇所に埋め込みます。
2つの受信機の間の距離と2つの受信機を通過するのに要した時間が分かれば、速度を算出することができます。
ピットロードに受信機を埋め込むことで、ピットイン、ピットアウトのタイミングを記録したり、ピットロードを通過する速度を監視することもできます。
タイミングモニターには、計時システムで得られたデータを元に必要な情報を計算して、公式予選ではベストタイム順、決勝では通過順に順位付けをして表示します。
F1をはじめとした世界選手権においては、シリーズ独自の計時システムを導入しているケースがあります。サーキットのシステムは使わずに運用するため、事前にコースの路面に受信機を埋め込むなどの作業が行われます。
あくまでも一例ですが、サーキットではこのようにしてラップタイムや周回数が計測されています。
SGT鈴鹿、公式練習30分経過時点での各車の状況です!#POTENZA #BRIDGESTONE #SUPERGT #SUPERGT2020 #鈴鹿GT300KM pic.twitter.com/xGO5EkMsLj
— POTENZA_SUPERGT (@POTENZA_SUPERGT) October 24, 2020
市販製品によるラップタイムの計測
タイム計測を行なっていないスポーツ走行や走行会などで自分のラップタイムを知りたい場合があります。そのような場合は、『P-LAP III』のような市販の製品を使用することでラップタイムを計測することができます。
一部のサーキットに限られますが、コントロールラインにマグネットが埋め込まれているサーキットがあります。このような製品はコントロールライン(マグネット)の上を通過したときに磁気を検知して、自動でタイマーをスタート、ストップすることで、ラップタイムを計測しています。
計時システムのトラブル
現在は計時システムが無ければ、モータースポーツの運営を行うことは不可能となっています。過去にはレース中に計時システムのトラブルが発生したケースもありました。
2018年に鈴鹿サーキットで開催されたSUPER GTでは計時システムにトラブルが発生したため、決勝レースのスタート進行の開始時間が遅れることになりました。
2019年にツインリンクもてぎで開催された全日本F3選手権の公式予選では、計時システムのトラブルにより赤旗が提示され、走行が一時中断となりました。
万一、レース中に計時システムがストップしてしまった場合に、レースをストップしなくてもすむように、バックアップとして、人間が各車両の周回数をカウントし、記録しているサーキットもあります。しかし、複雑なことはできないため、できることには限界があります。
まとめ
モータースポーツを公平に運営するために、計時システムによって公平かつ自動でラップタイムや周回数の計測が行われています。TVの中継画面には計時システムで計測したデータがリアルタイムに表示され、年々、情報量が増えているように感じます。
レース観戦中に得られる情報が増えることで、モータースポーツをますます面白く観戦することができるようになります。これからも計時システムが進化することを期待したいですが、その裏側で高度な技術と携わる人達の努力によって成り立っていることを理解しておく必要があると思います。
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