バーチャルセーフティカー (VSC)

バーチャルセーフティカーはF1で2015年から採用されているルールで、セーフティカーを配備するほどではないけれども、コース上の特定の箇所で大幅に減速をする必要があるときに導入されます。

バーチャルセーフティカーの導入が決定されると、コース各地に設置してあるFIA灯火パネルに”VSC”が表示されると共に、レースコントロールから各チームへ”VSC DEPLOYED”のメッセージが配信されます。TV国際映像においても同様のメッセージが表示されます。

VSC中は全ての競技車両は減速しなければならず追い越しは禁止されます。そして、マーシャルセクター区間を予めFIAによって決められたタイムよりも遅いタイムで走行しなければなりません。

速度はGPSにより15メートルの移動毎の所要時間から算出され随時監視されています。違反したドライバーに対して、スチュワード(レース審査委員会)はペナルティを科すことができます。

マーシャルセクター区間とはコースの各所に設置されているFIA灯火パネル(VSCと表示されるデジタルフラッグ)から次のFIA灯火パネルまでの区間のことです。

レース中においてはタイヤ交換以外の目的でピットインすることが禁止されます。セーフティカー同様にバーチャルセーフティカー導入中もレースの周回数としてカウントされます。

バーチャルセーフティカーの終了手順は、まずレースコントロールから各チームへ”VSC ENDING”のメッセージが配信され、それから10〜15秒後にFIA灯火パネルが”VSC”から緑色に変わりVSC解除となります。

バーチャルセーフティカーは2014年第15戦F1日本グランプリで発生した、ジュール・ビアンキ選手の事故を受けて導入が検討されました。第17戦アメリカGPのフリー走行で試験的に導入され、2015年シーズンからバーチャルセーフティカーの運用が開始されました。

国際モータースポーツ競技規則付則H項ではダブルイエロー(黄旗2本振動)区間においては十分な減速をする必要がありますが、徹底されていない事実があるため、強制的に競技車両を減速させることを目的としています。

2017 F1 SPORTING REGULATIONS - 40) バーチャルセーフティーカー(VSC)

 

無線機の使用

F1では規則で無線機の使用が禁止されていないため、レース中に無線機を使用してチームとドライバーが通話を行うことができ、マシンやタイヤの状態、ピットインのタイミング、順位を争っているライバルとの差など様々な情報のやりとりをすることができます。

2016年のF1では競技規則第27.1項にある『ドライバーは、1人で援助なしに運転しなければならない。』の内容を厳格化することがFIAよりアナウンスされ、無線機を使用したチームからドライバーへの援助が規制されることになりました。

実際に無線機を使ってチームがドライバーに援助したとして、ペナルティが科されるケースもありましたが、マシンにトラブルが発生したときの対処方法を無線でチームに聞くといったことも規制の対象となり、安全性が低下するとの声が高まったため、シーズン途中で無線通信の規制は撤廃されました。

2017 F1 SPORTING REGULATIONS - 27) 運転

 

ピットロード

ピットロード制限速度

F1ではピットロードの制限速度は80km/h以下です。制限速度を超過したときのペナルティはセッションにより変わります。

フリー走行、公式予選

  • 1km/h毎に100ユーロ(最大1000ユーロ)の罰金が科せられます。

決勝

  • レース中にペナルティ(ドライブスルーペナルティなど)が科されます。

2017 F1 SPORTING REGULATIONS - 22) 一般安全規定

 

ピット作業

F1ではピットイン時の作業に関わることのできるチームクルーの人数に制限はありません。タイヤ1本交換するためだけに3名のクルーが配置されています。

また、F1ではレース中の給油が禁止されているため、ピットストップ時の作業は実質タイヤ交換だけになります。そのため、最近のF1では非常に早いタイヤ交換作業が行われており、ピットストップの時間はたった2〜3秒程度です。

 

ピットアウト時の危険なリリースの禁止

ピットロード上ではファストレーンを走行する車両に優先権があります。ファストレーンに走行している車両がいる場合は、ピットストップ中の車両は発進することはできません。

ファストレーンに走行車両がいるにも関わらず、ピットから車両を発進させた場合は危険なリリースとしてペナルティの対象となります。

unsafe_release

2017 F1 SPORTING REGULATIONS - 28) ピット入口、ピットレーンおよびピット出口

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赤旗によるセッションの中断

天候の悪化や大きなアクシデントの発生により、競技の続行が困難と判断された場合、全てのオブザベーションポストで赤旗が振られ、シグナルブリッジではレッドライトが点灯されます。

フリー走行、公式予選

フリー走行および公式予選において赤旗が提示された時、全ての競技車両は減速してピットインしなければなりません。赤旗が提示されてセッションが中断されても残りの走行時間は延長されることなく、カウントダウンを続けます。

セッション再開の時間についてはタイミングモニターなどによってチームに伝えられます。残りの走行時間がわずかしか無い時は、赤旗をもってそのセッションが終了となる場合があります。

赤旗の提示により走行が妨げられ、タイム計測ができなかったとしても抗議は受け付けられません。

 

決勝

決勝において赤旗が提示された時、ピットロード出口のシグナルが赤となり、全ての競技車両は追い越しをすることなくピットインしなければなりません。ピットインした車両はピットロード出口ライン(赤旗ライン)手前からファストレーン上に1列に整列し停止し、レースが中断されます。レース中断中はファストレーン上でチームスタッフによる作業が認められています。

タイミングモニタ等でレース再開の時刻がチームへアナウンスされ、10分前からカウントダウンが始まります。また、セーフティカーが隊列の先頭に着きます。

 

レース再開 内容
3分前 全ての競技車両はタイヤを装着
2分前 トップ車両の前にいる周回遅れ車両がピットアウトしコースを1周走行する
1分前 エンジン始動

 

レース再開の時間になるとグリーンライトが点灯されレースはセーフティカー先導により再開します。レース再開2分前にピットアウトした車両が隊列の後ろに合流し、セーフティカーを先頭とした隊列が形成されます。その後の手順はセーフティカー運用ルールのセーフティカー解除の手順に従ってレースが再開されます。

 

赤旗中断のままレース終了

赤旗でレースが中断したまま再開できずに、そのままレースが終了となる場合もあります。F1では、この場合、レースが中断された周回の1周前の順位がレース結果となります。

 

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接触

競技車両同士がコース上で接触した場合は様々な角度から映像による検証が行われ審議されます。どちらか一方のドライバーに明らかな非がある場合はレース中でもペナルティが科されますが、判断が困難な場合はレース後に時間をかけて審議されます。当該ドライバーからの聴取やオンボードカメラの映像、必要に応じてテレメトリーデータの解析などが行われます。

ペナルティの内容はレース結果にタイム加算や周回数の減算といったものから、次のレースでのグリッド降格、出場停止処分など様々です。

 

2017年から接触に対するジャッジが緩和

2017年シーズンから接触に対するジャッジが緩和され、ペナルティとなるケースが減りました。どちらか一方のドライバーに明らかな過失があると考えられる場合以外のケースでは、少しくらいの接触は大目に見てもらえるようになりました。これはペナルティを恐れてオーバーテイクをためらってしまうことにより、F1の魅力が下がってしまうことを避けるための判断と考えられます。

 

【参考】2017年F1スペインGPでの接触

2017年F1スペインGPではフェリペ・マッサ選手がストフェル・バンドーン選手を追い越そうとして接触が発生しました。マッサ選手がバンドーン選手を追い越そうとイン側から並びかけますが、バンドーン選手はマッサ選手に気づかずに通常時と同じラインを走行してしまったためにイン側のマッサ選手の進路を妨害する形となり接触しました。



この接触によってバンドーン選手は車両にダメージを負い、アウト側のグラベルにストップしリタイアとなってしまいましたが、レース審査委員会はレース後にバンドーン選手に対して次戦の第5戦モナコGPでの3グリッド降格ペナルティを課しました。

複数台の車両が左右に並んでコーナーに進入するときは、相手の走行するスペースを1車身分以上空けて走行しなければなりませんが、これに違反したことによって接触が発生したために、バンドーン選手に過失があったとしてペナルティが課せられたと考えられます。

 

2017 F1 SPORTING REGULATIONS - 38) レース中の事件

 

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