2024年 F1 第5戦 中国GP 開催概要

 

お咎めなし『レーシングアクシデント』とは?

 

モータースポーツでは、レース中に順位を争っている車両同士が接触することは珍しくはありませんが、レギュレーションで車両同士をぶつけることが認められているわけではありません。

そのため、レース中の車両同士の接触に関しては、レースコントロールでどちらかのドライバーに過失はなかったか、違反性は無かったかなど、その都度検証されることになっています。

検証の結果、接触の原因がどちらかのドライバーの過失にあったと認められた場合は、そのドライバーにペナルティが科せられる場合があります。

例えば、オーバースピードでコーナーを曲がりきれなかったり、ブレーキングを失敗するなどしてマシンをコントロールできずに、他の車両に衝突してしまい、その結果、相手の車両をスピンさせてしまったり、大きなダメージを負わせてリタイヤを強いるなどしてしまった場合などです。

しかし、車両同士の接触の原因に違反性が無いと判断されたり、どちらか一方のドライバーに過失があったと認められないような場合は、どちらのドライバーにもペナルティが科せられることはありません。

このようなレースとして順位を争っている上で、問題が無いと判断された車両同士の接触については、『レーシングアクシデント』と判定されます。

いわゆる『おとがめなし』と言われる判定結果となります。

 

 

レーシングアクシデントの一例

サイド・バイ・サイドでの軽い接触

モータースポーツでは2台の車両が左右横並びの並走状態で走行していることを『サイド・バイ・サイド』と表現します。

サイド・バイ・サイドの状態では並走している車両同士の優先権は同等と扱われます。そのため、お互いの進路を妨害することなく走行をしなければなりません。

このサイド・バイ・サイドの状態で軽い接触があったとしても、順位の変動が無かったり、車両へのダメージが軽微であったりするなど、問題が無いと判断されるケースでは、レーシングアクシデントと判定されます。

ただし、軽い接触であっても、接触の結果、どちらか一方の車両がコースの外へ押し出されるなどして、クラッシュしてしまったり、順位を大きく落とすなどしてしまった場合は、危険なドライブ行為があったとしてペナルティが科せられる場合があります。

 

出典:youtube.com

テール・トゥ・ノーズでの軽い接触

サイド・バイ・サイドと同様に車両が前後に並んで接近して走行している状態のことをモータースポーツでは『テール・トゥ・ノーズ』と呼びます。

テール・トゥ・ノーズの状態では、前を走行している車両に進路の優先権があります。そのため、後ろを走行している車両は前の車両の走行を妨害してはならないことになっています。

稀に、後ろを走行している車両が前を走行している車両に軽く追突してしまう場面があります。追突の結果、順位の変動が無かったり、前を走行している車両にダメージが無かったりするなど、軽微な接触と判断された場合は、レーシングアクシデントと判定されます。

追突の結果、前を走行している車両がスピンをしてしまったり、大きなダメージを負ってしまい走行できなくなってしまった場合などは、危険なドライブ行為があったとしてペナルティが科せられる場合があります。

 

双方のドライバーに過失が認められる場合

車両同士の接触の結果、どちらかの車両がストップしてしまったり、大きなダメージを負ってしまいリタイヤを強いられるような場合でも、レーシングアクシデントとして判定される場合があります。

一例として、接触の原因が双方のドライバーの過失によるものと判断された場合が挙げられます。

例えば、サイド・バイ・サイドの状態では、お互いの走行スペースを確保しながら走行しなければなりません。イン側の車両はアウト側に車両1台分以上のスペースを空ける必要があります。アウト側の車両はイン側に車両1台分以上のスペースを空ける必要があります。

接触によって、コースの外へ押し出されてしまい順位を大きく落としてしまったとしても、並走する相手の車両に対してスペースを1台分以上空けていなかったと判断された場合は、押し出された車両にも過失があったと判定され、押し出した車両にはペナルティが科せられないこともあります。

 

接触の原因となったドライバーが順位を落とした

車両同士の接触によって相手の車両を押し出したり、スピンさせたりすると、ペナルティを科せられる場合があります。

ただし、接触の原因があったと判断されるドライバーがスピンしたり、クラッシュしてリタイヤとなってしまった場合などはペナルティが科せられないこともあります。

例えば、ブレーキングミスによって前を走行する車両に追突してしまったものの、追突した方がスピンするなどして、大きく順位を落としてしまった場合が挙げられます。

ただし、相手をリタイヤさせてしまうなど、大きなダメージを与えるような接触については、悪質と判断され、ペナルティが科される場合があります。

 

どのドライバーにも過失が認められない場合

レースのスタート直後など、複数台の車両が接近して走行している状態での接触については、やむを得ないと判断され、レーシングアクシデントと判定される場合があります。

複数台が接近して走行していると、コーナリング中など車両が通るスペースが無くなり接触が避けられない場合があります。接触の結果、複数台のドライバーがリタイヤを強いられたとしても、過失があったとされるドライバーを特定できない場合は、レーシングアクシデントと判定されます。

 

 

レーシングアクシデントの一例

2019年 F1 第9戦 オーストリアGP

2019年のF1オーストリアGPでは、マックス・フェルスタッペン選手とレッドブル・ホンダの勝利を決めたオーバーテイクで、レッドブルのマックス・フェルスタッペン選手とフェラーリのシャルル・ルクレール選手が並走したとき、わずかな接触がありました。

また、マックス・フェルスタッペン選手がシャルル・ルクレール選手のスペースを1台分以上空けておらず、コースの外へ押し出したようにも見えます。

レース後、スチュワードはマックス・フェルスタッペン選手に対してヒアリングを行ったり、様々なアングルで記録されたカメラの映像を使って審議を行いました。

審議の結果、最終的にスチュワードは双方のドライバーに非が認められなかったと判断して、レーシングアクシデントと判定されました。

 

 

2020年 F1 第9戦 トスカーナGP

ムジェロで開催された2020年のトスカーナGPではレーススタート直後のターン2でレッドブルのマックス・フェルスタッペン選手、アルファタウリのピエール・ガスリー選手、アルファロメオのキミ・ライコネン選手、ハースのロマン・グロージャン選手ら4名のドライバーが関係するアクシデントが発生しました。

アクシデントの結果、マックス・フェルスタッペン選手とピエール・ガスリー選手がリタイヤを強いられてしまいました。

このアクシデントについて、スチュワードが審議を行った結果、どのドライバーにも過失が認められなかったと判断され、最終的にレーシングアクシデントと判定されました。

 

 

 

まとめ

モータースポーツを観戦していると『レーシングアクシデント』というワードをよく聞きます。車両同士の接触で問題が無いと判定されたケースをレーシングアクシデントと呼ぶのですが、モータースポーツの初心者にとっては、どうして問題が無いと判定されたのか、よく分からないと思います。

特に車両同士の接触については、アウトなのかセーフなのかを決定する判定基準が明確にされていないのが原因なのではないかと考えます。

判定基準はブラックボックス化されており公開されていません。そのため、観客だけでなく、チームやドライバーも判定に至る経緯を知ることができません。また、判定基準には多少のバラツキがあり、似たようなケースであってもアウトと判定されたり、セーフと判定されたりします。

時には判定結果に納得ができないケースもあるかと思います。しかし、この車両同士の接触における判定基準の曖昧なところがモータースポーツの一部なのではないかと考えます。

車両同士の接触に対して、どちらのドライバーが悪いのかを判断できるようになってくると、モータースポーツ観戦がより面白くなるのではないかと思います。

 

 

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