2022年11月25日、FIAは『国際モータースポーツ競技規則 付則H項』の改定版を発行しました。国際モータースポーツ競技規則 付則H項は一般的に『H項』と呼ばれ、H項には四輪モータースポーツのフラッグのルールやセーフティカーの運用手順などが定められています。
四輪のモータースポーツでは長らく、フラッグの種類に変更はありませんでしたが、今回のH項の改定で『コード60フラッグ Code 60 Flag』が追加されました。
コード60フラッグの運用方法の詳細は各レースカテゴリーの競技規則で定められることになるかと思いますが、コード60フラッグの運用方法を説明します。
フルコースイエロー時に提示
FIAやJAFからのコード60フラッグの運用に関する詳細な発表はありませんが、レギュレーションを読み解くと、コード60フラッグはフルコースイエロー(FCY)導入時に振られるとのことです。
これまでフルコースイエローが導入されている間、『黄旗の振動』と『FCYボード』が提示されていましたが、これらをコード60フラッグで代替できるようになります。
フルコースイエローの運用手順はこちらの記事を参照ください。
コード60フラッグ運用手順
コース全域で60km/hの速度制限となる『コード60』が導入される理由は、フルコースイエロー導入時と同等と考えられます。アクシデントによりストップしてしまった車両の撤去やコース上やコース脇にある落下物などの撤去といった作業を安全に行うなどの理由が挙げられます。
コード60フラッグの振動
コース全域で60km/hの速度制限が課せられる場合、つまりレースコントロールがフルコースイエローの導入を決定した時、コース全域でコード60フラッグが振られます。
コード60フラッグが振られるとコース全域で60km/hの速度制限が課せられると共に、追い越しが禁止されます。
振動から静止へ
コード60フラッグは少なくとも1周の間、コース上の車両の速度が目に見えて減速するまで振られ続けます。その後、コード60フラッグの振動は静止へ切り替わり、コード60が解除されるまでの間、静止での提示が継続されます。
コード60は緑旗提示で解除
レースコントロールがコード60の解除を決定すると、それまで提示されていたコード60フラッグが撤去され、グリーンフラッグの振動が提示されます。この時点から60km/hの速度制限は解除され、レースは再開となります。
まとめ
フルコースイエローは国内でもSUPER GTやスーパー耐久での運用が一般的となり、もはや特別なルールではないと言えます。
フルコースイエローが導入されている間、すべてのオブザベーションポストではFCYボードを提示しイエローフラッグを振り続ける必要がありますが、コード60フラッグの導入により、ボードの提示が不要になり、フラッグを振り続ける必要もなくなることからコースマーシャルの負荷は低減されることになるかと思います。
しかしながら、コード60フラッグの運用にはドライバーへの周知が必要と考えます。すべてのドライバーがレギュレーションを正しく理解していなければ大きなアクシデントの原因になり得るため、まずは、コード60フラッグの周知が必要と考えます。
安全を最優先に考えると国内では、これまでの『黄旗の振動』と『FCYボード』での運用がしばらく続くのではないかと思います。
どのようにコード60フラッグが浸透していくのか見守りたいです。
レギュレーション
翻訳:わかりやすいモータースポーツ競技規則
(2022年11月25日発行版)
2.5.5 マーシャルポストで使用される信号
c) コード60旗:
この旗は数字の60が含まれた白丸のある紫色で、コース全域で60km/hの速度制限が課せられることを意味する。
– レースディレクター(任命されている場合)、もしくは競技長の指示において、スタートラインと同時にサーキットのすべてのポイントで旗が振られる。
– 旗は少なくとも1周、かつ、すべての車両が目に見えて減速するまで振られ続け、その後レースディレクター(任命されている場合)、もしくは競技長がコード60を解除するまで旗は静止で提示される。
– インシデントの手前のポストでは黄旗が振られ続けるが、緑旗は振られない。
– レースディレクター(任命されている場合)、もしくは競技長がレースを再開するためにコード60の解除を指示した場合、コード60フラッグはすぐに緑旗の振動へ置き換えられる。
– 緑旗の振動はレースディレクター(任命されている場合)、もしくは競技長が撤去を指示するまですべてのポストで同時に提示される。
– 緑旗が提示されるとすぐにレースは再開する。緑旗が提示されるまで追い越しは厳密に禁止される。いかなる違反はペナルティが科せられる場合がある。
– 報告されたあらゆる違反はスチュワードへ通告される。
– コード60が導入されている間の各周回は、イベントの競技規則に特に規定されていない限り、レース周回としてカウントされる。
– 車両間の速度と(もしくは)差をライブで監視できる場合にのみ、コード60を運用することを推奨する。
– このフラッグシグナルの提示のためにライトパネルを使用してもよい。
フラッグの意味
赤旗 | 黄旗 |
オイル旗 |
青旗 |
白旗 |
緑旗 |
黒白旗 |
オレンジディスク |
黒旗 |
チェッカー |
国旗 |
(2022年11月25日発行版)
2.5.5 Signals used at marshal posts
c) Code 60 flag:
This flag is purple with a white circle containing the number 60 to indicate a single speed limit of 60 km/h to be imposed on the full course.
– On the instruction from the Race Director (if appointed) or Clerk of the Course, the flag will be waved at the start line and simultaneously at all points around the circuit.
– The flag will continue to be waved for a minimum of one lap and until all cars have visibly slowed down, following which the flag will then be held stationary until the Race Director (if appointed) or Clerk of the Course withdraws the Code 60.
– Yellow flags will continue to be waved at the post prior to the incident but green flags will not follow.
– When the Race Director (if appointed) or Clerk of the Course instructs withdrawal of the Code 60 in order to resume racing, the Code 60 flag will then immediately be replaced by a waved green flag.
– The waved green flag will be shown simultaneously at all posts until the Race Director (if appointed) or Clerk of the Course instructs it to be withdrawn.
– Racing will resume as soon as the green flag is displayed. Overtaking is strictly forbidden until the green flag is displayed. Any infringements may be penalised.
– Any reported infringements will be referred to the Stewards.
– Each lap covered while the Code 60 is in operation will be counted as a race lap unless specified otherwise in the event regulations.
– It is recommended Code 60 only be used if the speeds and/or gaps between Automobiles can be monitored live.
– Light panels may also be used to display this flag signal.