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2020年 SUPER GT 第6戦 鈴鹿サーキット セーフティカー導入のタイミング

 

今シーズン、鈴鹿サーキットで初めて観客を動員して開催されたSUPER GT第6戦ですが、今回もレース中にセーフティカーが導入され、レース展開に大きく影響を与えました。

周回数がレース距離の3分の1を過ぎ、ドライバー交代が可能となった頃、ピットインするチームがあらわれ始めました。そのような中、GT300クラスの52号車『埼玉トヨペットGB GR Supra GT』がピットアウト直後に、S字でコースオフし、スポンジバリアにクラッシュしました。

その影響により、セーフティカーが導入されましたが、クラッシュした52号車は自力でコースへ復帰しました。車両回収の作業が必要と判断され、セーフティカーが導入されましたが、結果として不要なセーフティカーの導入であったと考えられます。

 

 

 

レース展開への影響

GT500クラスはトップ争いをしていた、12号車『カルソニック IMPUL GT-R』と8号車『ARTA NSX-GT』はセーフティカー導入前にピットストップとドライバー交代を完了していたため、セーフティカー導入の影響は少なかったと言えます。

ただし、23号車『MOTUL AUTECH GT-R』がセーフティカーの導入によって大きなアドバンテージを得ることに成功しました。セーフティカー導入が決定したとき、最後尾スタートだった23号車はピットインをしていました。セーフティカーの導入により、コース上の車両が追い越し禁止と減速走行を強いられる中、23号車がピット作業を終えてコースインすると、トップ争いをしていた12号車と8号車の前に出ることができました。

23号車はセーフティカー導入により、タイムロスを最小限に抑えつつ、ピットインとドライバー交代を済ませることができたため、大きく順位を上げることができました。これにより、トップに立った23号車は最後まで順位を守り切り、最後尾スタートからの優勝を飾りました。

GT300クラスでは、トップを走行していた61号車『SUBARU BRZ R&D SPORT』は、走行位置の関係から52号車のアクシデントを確認してから、セーフティカーが導入されるまでの間にピットインをすることができませんでした。GT300クラスの後方のチームは、52号車のクラッシュを確認してから、セーフティカーが導入されるまでの間にピットインをすることができました。

62号車はセーフティカーが解除された後にピットインしなければならず、先にピットインを完了していたチームに対して、大きく順位を下げることになりました。

セーフティカーの導入による影響はこれだけではありませんが、今回もセーフティカーの導入によって、GT500クラス、GT300クラスの両方で、トップ争いに大きな影響を与えました。

 

セーフティカー導入の判断

アクシデントが発生したとき、当然ですが、セーフティカーを導入するかどうかの判断はすぐに行われます。ただし、今回の52号車のようなクラッシュでは、マシンへのダメージは大きくはなさそうであることは映像で確認できたため、セーフティカー導入の緊急性は低く、自力で復帰できそうかどうかが判断されることになると考えられます。

そのため、レースコントロールではストップした車両の様子を見るために、アクシデント発生からセーフティカー導入までに数十秒から1分程度の時間がかかる場合があります。ただし、その間、現場ではイエローフラッグが振られているため、コース上の安全性が大きく低下することは無いと考えられます。

最終的に、レースコントロールはセーフティカーの導入を決定しましたが、その直後に52号車は自力で復帰することができたため、結果として不要なセーフティカーの導入となってしまったと言えます。

 

なぜ、セーフティカーが導入されるのか

以前のSUPER GTでは、コース脇に車両がストップしたとしても、イエローフラッグが振られてコースマーシャルによる車両の回収作業が行われてきました。しかし、現在ではドライバーやコースマーシャルの安全性を特に考慮するようになり、コース脇で車両の回収作業が行われる場合は、セーフティカーが導入されることが多くなっています。

SUPER GTに限ったことではなく、他のレースシリーズにおいても同様の対応が見られ、F1でもセーフティカーが導入される機会が増えています。これは、2014年F1日本グランプリで発生したジュール・ビアンキ選手の事故を受けて、車両の回収作業時におけるドライバーやコースマーシャルへの安全への意識が高まったことが原因であると考えられます。

F1では、セーフティカーに代わるバーチャルセーフティカー(VSC)の運用が始まりました。しかし、SUPER GTではバーチャルセーフティカーに相当するフルコースイエロー(FCY)の運用が決定していますが、まだ実際のレースでの運用は始まっていません。

 

まとめ

2020年シーズンのSUPER GTにおいても、セーフティカーが導入されると、レース展開に大きな影響を与えるという状況は変わっていません。セーフティカーが導入されると、チームによって大きく有利となったり、大きく不利になってしまう原因として、SUPER GTではセーフティカーが導入されると、ピットストップができなくなることが挙げられます。ピットストップが禁止されている理由はスポーツランドSUGOのようなピットの狭いサーキットで一斉にピット作業を行うと、混乱の原因になるためであると考えられます。

SUPER GTではセーフティカーが導入された時の有利、不利を解消するために2020年シーズンからフルコースイエロー(FCY)の運用をスタートする予定でした。しかしながら、システムの不具合のため、フルコースイエローの運用はまだ始まっていません。

レースの世界に『たら』、『れば』は厳禁ですが、今回のレースでフルコースイエローが運用できる状況であれば、52号車のアクシデントはセーフティカーではなく、フルコースイエローで対応されていたと思います。もし、フルコースイエローが導入されていたら、レース展開に大きく影響することなく、GT500クラスは12号車と8号車のトップ争いが続き、GT300クラスは61号車がトップのままの展開になっていたのではないかと考えます。また、セーフティカー導入ではなく、イエローフラッグのままでの対応だったらと考えた場合も同様のことが言えると思います。

最近のSUPER GTは毎回のようにセーフティカーが導入されるため、運の要素が強くなっていると考えます。各チームの戦略もセーフティカーが導入されることを見越して、ピットインのタイミングをなるべく早めに設定しているチームも多くなっています。

セーフティカーが導入されることも含めて『レース』なのですが、今回の61号車のように重いウエイトハンデを載せているにも関わらずトップを走行し、良いレースをしていたにも関わらず、セーフティカーが導入されたことによってレースが台無しになってしまったチームもあります。

レギュレーションによってレースを台無しにされるのは非常に残念だと思います。SUPER GTでもフルコースイエローをなるべく早い段階で運用をスタートして、あまり運に左右されないようなレース展開になってほしいと感じます。

 

 

 

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