オレンジディスク旗は『オレンジボール』などとも呼ばれ、車両に機械的な欠陥があり、自身や他の車両に危険を及ぼす可能性がある場合に提示されます。
国際モータースポーツ競技規則 付則H項ではオレンジディスク旗は『オレンジ色の円形(直径40cm)のある黒旗 Black Flag with Orange Disc』と記載されています。
本サイトでは一般的に呼ばれている『オレンジディスク』と表記することとします。
オレンジディスク旗は対象車両を示すゼッケンボードと共に不動(静止)で提示されます。
レギュレーション
オレンジディスク旗が提示されるとき
オレンジディスク旗は、以下に示すような車両トラブルによって、自車や他の車両の走行に危険を及ぼす可能性がある場合に提示されます。
- パーツ破損
- 液体漏れ
- 白煙走行
- ボンネットが開いている
出典:youtube.com
パーツ破損
車両同士の接触やタイヤバリアへの接触などによってボディがへこんだりしただけでオレンジディスク旗が提示されることはほとんどありません。
破損したパーツが外れそうな状態で走行を続けることで、パーツがコース上に落下してしまい、他の車両に危険を及ぼすと考えられる場合に提示されます。
バンパーなど大きな部品を引きずっていたり、破損したパーツがバタついていたりして、今にも外れそうな場合が該当します。
リアライト脱落
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液体漏れ
エンジンオイルがコース上に流れ出ると路面が非常に滑りやすくなるため、エンジンオイルが漏れていることが確認された車両に対してオレンジディスク旗が提示されることがあります。
ただし、漏れている量が少なかったり、クーラントやミッションオイルなどの滑りにくい液体であった場合は様子見となることもあります。
白煙走行
白煙を上げて走行している車両はエンジン系に何らかのトラブルを抱えている場合が多いことから、エンジンが壊れてオイルがコースに流れ出る前にオレンジディスク旗が提示される場合があります。
白煙が少量の場合は様子見となる場合がありますが、エンジンが壊れるとコース上にオイルが撒かれることになり、他の車両に大きな危険を及ぼす可能性があります。
ボンネットが開いている
ボンネットピンの装着し忘れなどにより、ボンネットが浮いて走行している車両は、走行風によりボンネットが完全に開いてしまいドライバーの視界が失われることが考えられるため、オレンジディスク旗が提示される場合があります。
完全にボンネットが開いてしまった場合は、ドライバーの視界が大きく損なわれ、周囲の車両に大きな危険を及ぼすことが考えられることから、オレンジディスク旗が提示される可能性が高いと言えます。
出典:youtube.com
SUPER GTにおける車両火災の場合
SUPER GTにおいては、車両火災が発生した場合、オレンジディスク旗とゼッケンが書かれたボードに加えて『FIRE』と書かれたボードが同時に提示されます。
この場合、当該車両はピットインではなく、最寄りのファイアーステーションに停止しなければなりません。
ファイアーステーションは消火のためのファイアーカーが配置されており、場所はドライバーブリーフィングなどで事前に周知されます。
第26条 一般安全規定
5. オレンジ色の円形のある黒旗(オレンジディスク)と火災を示す「FIRE」と書かれたボードが同時に提示された車両、およびGTA無線により車両火災の通告を受けた車両は、最寄りのファイアーステーションに車両を停止しなければならない。また、消火確認前に自己のピットに入ることは禁止される。
オレンジディスク旗は複数のポストで提示される場合がある
オレンジディスク旗はブラックフラッグや黒白旗と同様にコントロールライン付近のチェッカーフラッグが提示されるオブザベーションポストで提示されます。
ただし、オレンジディスク旗に限っては複数のオブザベーションポストで提示される場合があります。
通常は2〜3ヶ所のオブザベーションポストで提示されることが多いですが、ドライバーにはレース前に実施されるドライバーブリーフィングにてオレンジディスク旗が提示されるオブザベーションポストの位置が周知されます。
オレンジディスク旗を無視すると
オレンジディスク旗が提示されているにも関わらず、ピットインせずに走行を継続すると、ブラックフラッグを提示され失格となる可能性が高くなります。
国際モータースポーツ競技規則 付則H項では提示された次の周回でピットインするように記載されていますが、無線機を使用できないレースにおいてはオレンジディスク旗を見落とす場合があるため、2〜3周以内にピットインすれば違反とみなされないことが多いです。
トラブル修復後は走行を再開しても良い
オレンジディスク旗が提示されても、ピットインをして車両トラブルを修復し技術委員長が認めた場合はピットアウトをして走行を継続することができます。
このとき、タイヤ交換などな通常のピット作業を同時に行っても構いません。
オレンジディスク旗が提示されたにも関わらず、ピットインしない場合はブラックフラッグが提示され、失格となる場合があります。
2022年 F1 第8戦 アゼルバイジャン グランプリ
バクーシティサーキットで開催された2022年F1第8戦アゼルバイジャングランプリでは、レース終盤にアルファタウリの角田裕毅選手のマシンのリアウイングのエレメントの一部が脱落しました。
F1マシンはリアウイングのエレメントが無い状態では正常にドライブすることができず、高速走行中にリアウイングの他のエレメントが脱落することによってコントロール不能な状態に陥ることも考えられます。
レースコントロールは安全性を鑑みたと考えられますが、角田選手に対してオレンジディスク旗を提示しました。角田選手はピットインを強いられましたが、メカニックがテープでリアウイングのエレメントを補強し、レースへ復帰することができ入賞圏内から脱落したものの完走を果たしました。
Running repairs to Yuki's car 👀#AzerbaijanGP #F1 pic.twitter.com/IQYMLhbGWW
— Formula 1 (@F1) June 12, 2022
2022年 F1 第9戦 カナダ グランプリ
ジル・ヴィルヌーヴ・サーキットで開催された2022年F1第9戦カナダグランプリでは、レーススタート直後の順位争いでハースのケビン・マグヌッセン選手とメルセデスのルイス・ハミルトン選手が並走した際に2台が軽く接触しました。
マグヌッセン選手のマシンは接触によってフロントウイングの右翼端板にダメージを負ってしまったものの走行を継続しました。しかしながら、レースコントロールは安全性を考慮してマグヌッセン選手に対してフロントウイングを修復させるためにオレンジディスク旗を提示しました。
ダメージを負ったフロントウイングがさらに破損することで更なるアクシデントの原因になり得る可能性があったためではないかと考えられます。
The tiniest bit of contact was enough to put K-Mag out of contention on Sunday 💥
A huge shame after his P5 in qualifying#CanadianGP #F1 pic.twitter.com/wFv7yTbjDc
— Formula 1 (@F1) June 20, 2022
フラッグの意味
赤旗 | 黄旗 |
オイル旗 |
青旗 |
白旗 |
緑旗 |
黒白旗 |
オレンジディスク |
黒旗 |
チェッカー |
国旗 |
(2021年12月23日発行版)
2.5.4.1 競技長旗信号
e) オレンジ色の円形(直径40cm)のある黒旗:
この旗は、該当するドライバーが以下のことを認識するための情報提供のために使用される。
「該当するドライバーに対し車両に機械的欠陥があり、そのドライバー自身あるいは他のドライバーが危険に瀕しており、当該ドライバーは次の周回時に自己のピットに停止しなければならない。」
技術委員長が承認できる程度まで機械的欠陥が修理された場合は、当該車両は決勝レースに復帰できる。