レッドフラッグ『赤旗 Red Flag』はセッションの中断を意味します。安全上の理由のため、競技長が競技を中断または、中止にする必要があると判断した時に振られます。レッドフラッグの提示は振動(旗を振る)で行われます。
具体的には、大雨などの天候の急変や、大きなアクシデントの発生、コース上にストップした車両が後続の車両の進路を塞ぐなどして競技を安全に継続することが困難と判断されたときなどが挙げられます。
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レギュレーション
レッドフラッグが振られるとき
競技長が安全上の理由によって、セッションを中断する必要があると判断した場合に、全てのオブザベーションポストでレッドフラッグが振られます。
レッドフラッグは各オブザベーションポストの判断で提示することはできません。
大雨などの天候の急変
大雨による視界不良や路面の多量の雨水などによって、車両が安全に走行できないと判断された場合、セッションはレッドフラッグが振られて中断されます。
ドライバーが自力で降りられない
大きなアクシデントの発生によりドライバーが負傷するなどして、ストップした車両から自力で降りられない場合や、ドライバーの意識がなく、迅速な救出作業が必要と判断された場合は競技を続行することよりもドライバーが優先され、レッドフラッグが振られてセッションが中断されます。
ストップした車両がコースから離れている場合は、レッドフラッグが振られない場合もあります。この場合、セーフティカーの導入などによって、レースを継続したまま救出作業が行われることもあります。
火災が発生したとき
ガソリンに引火するような大規模な車両火災が発生し、ファイヤーカーによる消火作業が必要な場合は消火が優先されレッドフラッグが振られてセッションが中断されます。
消火器で対応できるような小規模な火災の場合はイエローフラッグやセーフティカーの導入によって消火作業が行われる場合もあります。
ストップ車両の回収に危険が伴う
コース上に車両がストップし、セーフティカーを導入したとしても、車両回収作業を行うコースマーシャルに危険が及ぶ可能性があると判断された場合はレッドフラッグが振られてセッションが中断されます。
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ストップ車両の回収に時間がかかる
複数台の車両がコース上にストップするなどした場合など、車両の撤去に時間がかかると判断されたときはレッドフラッグが振られてセッションが中断されます。
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安全設備の破損
大きなアクシデントの発生などにより、ガードレールやタイヤバリアなどのサーキットの安全設備が破損したとき、安全に競技を継続することが困難と判断され、レッドフラッグが振られる場合があります。
ガードレールが破損した場合は修復のために長時間の中断となる場合があります。
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濃霧による視界不良
大雨だけではなく濃霧の場合においても競技が安全に行えないと判断され、レッドフラッグが振られる場合があります。
ドライバーがフラッグを確認できないほど視界が悪くなるとレッドフラッグが振られます。そのため、コース上の隣り合ったオブザベーションポスト同士が目視で確認できるかどうかが、レッドフラッグが振られるかどうかの目安になります。
メディカルヘリコプターが飛べない場合
F1などメディカルヘリコプターの配備が求められるレースにおいてはヘリコプターが飛べないと判断された場合に、レッドフラッグが振られる場合があります。
サーキットの天候は良くても、搬送先の病院に到達できないと判断されると競技は継続できないと判断されます。
また、メディカルヘリコプターが飛べずにサーキットに到着できない場合は走行セッションを開始することができません。
2017年 F1 第2戦 中国グランプリ
2017年F1第2戦中国グランプリの金曜日フリー走行では天候不良のためメディカルヘリコプターが飛ぶことができずに、セッションの大半がレッドフラッグのため中断となりました。
このとき、メディカルヘリコプターがサーキット上空では飛行できても、搬送先の病院上空で視界不良のため飛行できないとの理由でした。
レッドフラッグが振られると
レッドフラッグが振られるとコース全域で追い越しが禁止されます。イエローフラッグと同様に、減速していないと判断された場合はペナルティが科せられる場合があります。
フリー走行および公式予選での運用
すべての車両はピットインしなければならない
フリー走行および公式予選ではレッドフラッグが振られると、すべての車両はピットインしなければなりません。
レッドフラッグが振られた後にピットインせずにメインストレートを立ち上がった車両については、ドライバーがレッドフラッグが振られているのを確認できたかどうかが審議されます。レッドフラッグを確認できたにも関わらずピットインしなかった車両はペナルティが科せられる場合があります。
また、レッドフラッグが振られた時点でピットロード出口のシグナルが赤に変わり、すでにピットインしていた車両はコースインできなくなります。当然、シグナルが赤の状態でコースインするとペナルティが科せられる場合があります。
決勝での運用
全ての競技車両は赤旗ライン後方に整列
決勝中にレッドフラッグが振られると、すべての車両は赤旗ラインの後方に整列します。全車両が整列した後、コース上の危険が取り除かれるまで競技が中断されます。
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コース上の危険が取り除かれると、レースコントロールで競技の再開時間が決定されます。再開の手順については特別規則書などに定められています。
赤旗ラインの位置
赤旗ラインの位置はサーキット毎に異なるため、特別規則書やブルテンで規定されます。コントロールライン付近に設定されるケースが多く、F1においてはピットロード出口付近に設定されています。
基本的に赤旗ラインは仮想のラインなので、実際にコース上にラインが引かれてはいません。
鈴鹿サーキット
(2016年 鈴鹿サーキット一般競技規則書)
富士スピードウェイ
(2016年 富士スピードウェイ一般競技規則書)
ツインリンクもてぎ
(2016年 ツインリンクもてぎ四輪一般競技規則書)
レースの再開手順
レース再開の手順はレースシリーズごとの特別規則書などによって定められています。
レーススタートのフォーメーションラップ開始に向けてのカウントダウンと同じように、レース再開に向けて、5分前、3分前、1分前といったようにボード提示と共にカウントダウンが行われます。
セーフティカー先導でレース再開
レッドフラッグによるレース中断後、コース上の危険な状況が解消されたと判断されたら、レース再開となります。
レースはセーフティカー先導によって走行が再開されます。セーフティーカーが動き出した後の手順はセーフティーカーの運用ルールに準拠します。セーフティーカー解除時の手順も同様です。
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レースの成立
レッドフラッグが振られた後は、レースの再スタートを待ちますが、レースコントロールの審議の結果によっては、レースを再開せずに、そのままレースが成立する場合があります。
レースを再開できない理由としては、以下のような場合が挙げられます。
- 中断による遅延のため日没となり視界不良のため。
- 天候が回復する見込みがない(大雨、濃霧)
- 破損したガードレールやタイヤバリアが修復できない
- コース上の危険が取り除かれない
レッドフラッグにより中断したままレースが成立となった場合は、順位は中断された時の順位どおりにはなりません。
順位の決定方法は特別規則書などに規定されますが、通常は中断した周回から2周回前のコントロールライン通過順といったように、セッション中断の数周前の順位が採用されます。
2016年 マカオ FIA GTワールドカップ
2016年マカオ・ギアサーキットで開催されたFIA GTワールドカップではレース終盤にマシンが横転する大クラッシュが発生しレッドフラッグが振られ、協議の結果、レースは再開されることなくそのまま終了となりました。
レギュレーションに則り、レース結果はレッドフラッグが振られる2周前のコントロールライン通過順が採用されローレンス・バントールが勝者となりましたが、バントールはレッドフラッグの原因となったクラッシュを起こしたドライバー本人で物議を醸しました。
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フラッグの意味
赤旗 | 黄旗 |
オイル旗 |
青旗 |
白旗 |
緑旗 |
黒白旗 |
オレンジディスク |
黒旗 |
チェッカー |
国旗 |
(2021年12月23日発行版)
2.5.4.1 競技長旗信号
b) 赤旗:
プラクティスセッションまたは決勝レースの中止が決定された時、スタートラインにおいて振動表示される。サーキット上のすべてのマーシャルポストでも赤旗を振動表示するものとする。中止の合図が与えられた際、
1) プラクティス中であれば、全車両、直ちに減速し、低速で各自のピットに戻らなければならない。
2) 決勝レース中であれば、全車両、直ちに減速し、低速で赤旗ライン※(本項末の注参照)に向かわなければならない。
3) 追い越しが禁じられるとともに、ドライバーは、レース車両およびサービス車両がトラック上に存在するかもしれないこと、サーキットは事故のための完全封鎖がされることがあること、天候により当該サーキットでレーススピードでの走行が不可能となることがあることについて留意していなければならない。
4) 決勝レースが中止となった場合、ドライバーは、レーススピードでの走行が以下の理由により、無意味となることについて留意していなければならない。
– 決勝レースの順位認定または再スタートにおけるグリッド順は、競技の各規則に則った赤旗提示直前の状況で確定するため。
– ピットレーン出口が閉鎖されるため。
全車両、決勝レースが再開されるか終了するかの情報が与えられ、マーシャルによる競技の各規則に則った適切な指示が与えられるまで、赤旗ライン※前に整列して停止するものとする。
コースを閉鎖するために、赤旗は競技長または競技長に指名された役員によって表示される(2.1.4 C)参照)。
※赤旗ライン:コースサイドからもう一方のコースサイドまで、トラックのセンターラインに対し直角で、トラックを横切る20cm幅の実線で、ノンスキッドペイント(すべり止め効果のある塗料)で示される。決勝レースが中止または中断した際に、その箇所の後方に全車両が停止しなければならない。この車両停止箇所は、決勝レースが再開した際に、セーフティカーが先導をするためのスターティンググリッド隊列を容易に編成することができるとともに、各車両が容易にその隊列に加わることができる場所とする。
2.5.5 マーシャルポストで使用される信号
a) 赤旗:
前述の2.5.4.1b)に従いプラクティスセッションまたは決勝レースを中止する必要が生じた場合、競技長の指示のみに基づいて振動表示される。