モータースポーツでは、レース中にピットインをして、自身のピット前の作業エリアでタイヤを交換したり、給油などの作業を行うことができます。
また、F1などのフォーミュラカーのレースでは、車両同士の接触によって損傷したフロントウイングを交換したり、車両のセットアップを変更するために、ウイングの角度を調整したりといった作業もあわせて行われます。
このような作業のためにピットインすることを『ピットストップ』と呼びます。
ピット作業に関してのレギュレーションは、FIAが定める国際ルールには特に定められていません。そのため、各レースシリーズが独自にピット作業に関するレギュレーションを定めています。
ピットクルー人数の制限
モータースポーツでは、ピットストップの間に行われるタイヤ交換や給油といった作業はチームのメカニックが行います。ピット作業を行うメカニックのことを『ピットクルー』と呼びます。
レースシリーズによっては、自身のピット前の作業エリアでピット作業を同時に行うことができるピットクルーの最大人数がレギュレーションによって規定されている場合があります。
例えば、F1では同時に作業ができるピットクルーの人数に制限はありませんが、SUPER GTやスーパーフォーミュラでは同時に作業ができるピットクルーの人数がレギュレーションによって制限されています。
同時に作業ができるピットクルーの人数を制限する最大の理由は、チームの運営費用を抑制するためであると考えられます。
多くのピットクルーを抱える運営費用の多い上位チームがピット作業で有利となり、運営費用が少なく多くのピットクルーを雇えることができない下位チームが不利になってしまうことを避けるためです。
ピット作業に関わることができるピットクルーの人数に制限がある場合は各レースシリーズの特別規則書に規定されます。
ピット内での作業は人数制限無し
接触やクラッシュなどによって損傷したマシンを修復する場合などは、ピット前の作業エリアではなく、自身のピット(ピットボックス)内で作業を行います。この場合、作業をすることができるピットクルーの人数に制限はありません。
同時に作業のできるピットクルーの人数
FIA Formula 1
規定無し
SUPER GT
最大7名
スーパーフォーミュラ
最大6名
スーパー耐久
最大7名
危険なリリース (アンセーフ・リリース)の禁止
ピットロードではファストレーンを走行する車両に優先権があります。ファストレーンに走行している車両がいる場合は、ピットストップ中の車両は発進することはできません。
ファストレーンを走行する車両の走行を妨害しないように、発進するタイミングを遅らせなければなりません。
ファストレーンに走行車両がいるにも関わらず、ピットから車両を発進させて妨害した場合は危険なリリース(アンセーフ・リリース)としてペナルティが科せられる場合があります。
出典:youtube.com
2019年 FIA Formula 1 第6戦 モナコGP
ファストレーンを走行していたメルセデスのバルテリ・ボッタス選手とピット作業を終えた直後のレッドブルのマックス・フェルスタッペン選手が接触しました。
レースコントロールは接触の原因はマックス・フェルスタッペン選手にアンセーフ・リリースがあったと判断し、5秒のタイムペナルティを科しました。
出典:youtube.com
ピット作業
ピットストップ中、チームのピットクルーが行う作業においても規則があります。内容はシリーズによって様々でそれぞれで異なります。
また、給油中にはタイヤ交換などの他の作業を同時に行うことができないといった制限のあるレースシリーズもあります。
出典:youtube.com
SUPER GTの例
- ピットクルーは規定された装備品を正しく着用していなければならない。
- ピットで車両を停止するときはエンジンを停止しなければならない
- コースインする際のエンジン始動はドライバーによって四輪が接地された状態で行わなければならない
- タイヤ交換の際、外したタイヤは平置きしなければならない。外したタイヤの手渡し禁止
- 外したタイヤを片付ける際はタイヤを転がしてはならない
- 燃料補給中は他の作業禁止
- ピット作業エリアに持ち込めるインパクトレンチは2個まで
第27条 ピットエリア
1. プラクティスセッションおよび決勝レース中に各サーキットで定められたラインから先の作業エリアに出ることができる作業要員(燃料補給要員、消火要員、タイヤ交換を行う作業要員等)は、登録されたチームクルーのうち最大7名までとする。車体側給油口と換気口が左右に離れて位置している車両については、この7名とは別に消火要員1名が燃料補給中に限り作業エリアに出て消火器を持って待機することができる。当該消火要員は他の作業を行ってはならず、専用の腕章を着用せねばならない。
ピット作業において、作業エリア外から長尺の道具等を使用して物品を受け渡しする行為は禁止される。