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ホンダがF1撤退の理由とした『カーボンニュートラル』とは?

 

10月2日、ホンダはオンラインで記者会見を開き、八郷社長が2021年のシーズン終了をもって2015年から行ってきた第4期のF1活動を休止することを発表しました。

ホンダはF1活動休止の理由を『2050年カーボンニュートラルの実現』のためと説明しました。カーボンニュートラルというワードは聞き慣れない馴染みの無い言葉だと思います。

今回は、モータースポーツと少し離れてしまいますが、カーボンニュートラルとは何かを簡単に解説したいと思います。

 

 

カーボンニュートラル

カーボンニュートラルとは、CO2(二酸化炭素)の排出量と吸収量を同じに(中立化)しようという考えで、ヨーロッパを主体として企業全体が2050年の実現に向けて取り組もうとしている活動のことです。

自動車業界では、クルマを開発、生産するために排出したCO2だけでなく、販売したクルマが排出するCO2の量も中立化する必要があります。また、2050年にカーボンニュートラルを達成するためには、2030年代に販売するほとんどの自動車の電動化を実現する必要があります。

そのため、現在の自動車メーカーはCO2を排出しない電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)の開発を急いでいます。

カーボンニュートラル実現のために植樹などを行うことによって、CO2の吸収を行うのですが、やむを得ずCO2の排出量が吸収量を超えてしまった場合は、『クレジット』と呼ばれる他の企業が達成したCO2吸収の権利を購入することで中立化を満足することができます。

 

CAFE規制

いきなり、自動車が排出するCO2をゼロにしましょうという規制をスタートするには無理があります。そこで自動車が排出するCO2を段階的に規制するために、現在は『CAFE規制』という環境規制を守らなくてはなりません。自動車の燃費を改善すれば、排出するCO2も削減されるだろうという考えです。

CAFEとは『Corporate  Average Fuel Efficiency』の略で『企業平均燃費』を意味します。自動車メーカーごとに生産している自動車の平均燃費を算出して、決められた燃費の数値を満足しなければなりません。

ヨーロッパ各国が主導でCAFE規制を推進していますが、アメリカや日本においても同様の規制を推進しようとしており、日本では2030年に企業平均燃費25.4km/L (WLTCモード)の達成を求める方向性を示しています。

もし、平均燃費が基準を満足できなければ、ペナルティとして『クレジット』を支払わなければならない仕組みとなっています。電気自動車しか販売していないテスラはCAFE規制を満足できていない自動車メーカーにクレジットを売ることができます。また、フェラーリやランボルギーニのようなスーパーカーを販売する自動車メーカーはクレジットを支払うことでCAFE規制に対応すると考えられます。クレジットの支払いによって発生する金額は販売する車両の価格へ上乗せされることになりますが、ブランドの価値が高いことから、顧客は値上がりしても購入してくれるためです。

このような規制が行われると、自動車メーカーは燃費の良い車種しか販売できなくなるのではないかと思いますが、一概にはそうではありません。企業平均燃費には出荷台数が考慮されるため、燃費の良いクルマをたくさん販売していれば、燃費の悪いクルマを販売してもCAFE規制を満足できるためです。

例えば、燃費の良いハイブリッド車(HV)やプラグイン・ハイブリッド車(PHV)をたくさん販売しているトヨタ自動車は、燃費の悪い大排気量、高出力のクルマを販売してもCAFE規制を達成することができます。

現在は電気自動車の普及段階で、たくさん売れる状況ではありません。それに、電気自動車の開発や生産には莫大な費用がかかります。それでも、自動車メーカーが電気自動車を開発している理由はクレジットを購入することなく、CAFE規制を満足できるようにするためです。CO2を排出しない電気自動車は販売台数が少なくても、企業平均燃費を大きく上げることができるためです。

 

ホンダの対応

ホンダはカーボンフリー社会を実現するための技術の核として、従来のガソリンエンジンではなく、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)の開発へ資源を集中させる必要があると判断したとのことです。

自動車メーカーがカーボンニュートラルを実現するのは簡単ではありません。CAFE規制を満足しながら、カーボンニュートラルを実現するには高い技術力と長い月日が必要になるのは間違いありません。ただし、この目標はすでに決定されており、すべての自動車メーカーが達成しなければならない課題であるため、ホンダだけが達成しなければならないことではありません。

フェラーリ、ルノー、メルセデスのような自動車メーカーはF1への参戦を継続しながら、カーボンニュートラルを実現していくことになるのだと考えます。メルセデス・ベンツの親会社であるダイムラーは2039年にカーボンニュートラルの実現を目指す方向性を明らかにしています。

 

まとめ

ホンダのF1撤退の本当の理由は新型コロナウイルスによる景気後退と将来の先行きが不透明となったことによる経費削減と考えるのが適切ではないかと考えます。景気後退が理由と発表すれば、世間は『またか』となることが目に見えており、ホンダのブランド力が低下することを避けられなくなります。カーボンニュートラルは言い訳にすぎないと考えます。

不透明な将来に向けて、企業存続のためにF1撤退を決定したことは、経営者の判断としては仕方がありませんが、F1撤退によりホンダの夢がなくなるのは間違いありません。

F1参戦をしていたホンダのファンだった人は失望して離れてしまう可能性が高く、カーボンニュートラル実現の考えに賛同し、ホンダのファンになる人は少数だと考えます。カーボンニュートラルをすべて技術力で実現できればカッコいいのですが、お金で解決することもできてしまうためです。

また、ホンダがF1に代わる人々を引き寄せる魅力をつくり出せなければ、ホンダのブランド力は確実に下がると考えます。今回のようなF1活動のやめ方をしては、もうF1には戻れないと考えるのが妥当です。F1の無いホンダがこれからどのようなホンダになっていくのか注目したいです。

 

 

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