モータースポーツを観戦していると、ピットロードを走行している車両はコースを走行している車両よりも遅いスピードで走行しているのが確認できるかと思います。
これは、ピットロードには制限速度が設定されているためであり、ピットロードを走行するすべての車両は制限速度を守らなければならないことになっています。
ピットロードを走行するすべての車両の速度が計測されており、わずかにでも制限速度をオーバーしていると、ペナルティが科せられる場合があります。
ピットロードの制限速度
ピットロードの制限速度は国際モータースポーツ競技規則 付則H項に『時速60kmを超えてはならない』と定められています。
ただし、すべてのレースシリーズにおいてピットロードの制限速度は60km/hに設定されているわけではありません。
レースシリーズごとにピットロードの制限速度が異なるため、その都度、各レースシリーズごとのスポーティングレギュレーションや特別規則書を確認する必要があります。
また、F1とオーバルコースでのレースに関しては、60km/hを超えても構わないことになっています。
主なレースシリーズのピットロード制限速度
ピットロードの制限速度は国際モータースポーツ競技規則 付則H項で定められている60km/hが一般的です。
F1ではピットロードの制限速度は『80km/h』とスポーティングレギュレーションに定められていますが、サーキットごとに制限速度を変更することができます。
SUPER GTやスーパー耐久ではピットロードの制限速度は60km/hよりも遅い『50km/h』と定められています。
FIA Formula 1 World Championship (F1)
80km/h
34)) PIT ENTRY, PIT LANE AND PIT EXIT
34.7 A speed limit of 80km/h will be imposed in the pit lane during the whole Event. However, this limit may be amended by the Race Director following a recommendation from the Safety Delegate.
AUTOBACS SUPER GT SERIES
50km/h
第26条 一般安全規定
11. 各ドライバーは本シリーズに定められたピットレーン通過速度(最高50km/h)を遵守しなければならない。ファストレーン走行中、意図的な加減速や蛇行運転は厳重に禁止される。
全日本スーパーフォーミュラ選手権
60km/h
スーパーフォーミュラの規則書である『全日本スーパーフォーミュラ選手権 統一規則』にはピットロードの制限速度が明記されていません。そのため、国際モータースポーツ競技規則 付則H項で定められている60km/hが適用されます。
ピレリ スーパー耐久シリーズ
50km/h
第18条 ピット作業
(3) 大会期間中、ピットレーンの通過速度は50km/h 以下を遵守しなければならない。ピットレーンにおける優先権はファストレーンを走行中の車両が有する。ファストレーン走行中の意図的な加減速や蛇行運転をしてはならない。
ピットロード制限速度の監視方法
ピットロードの制限速度の監視方法は、光電管を2箇所に設置して、2点間を通過するのに要した時間から速度を算出する方法が一般的です。
制限速度が始まるピットロード入口と制限速度が解除されるピットロード出口で制限速度をオーバーすることが多いことから、光電管はピットロード入口と出口に設置されること多いです。
ピットロードにループコイルが埋め込まれているサーキットもあります。その場合は、光電管を設置することなく、ピットロードを通過する車両の速度を計測できるようになっています。
ピットロードの制限速度を違反すると
ピットロードの制限速度を超えるとペナルティが科せられます。どのようなペナルティが科せられるのかはレースシリーズごとに異なります。
一般的には、フリー走行や公式予選でのピットロードの制限速度違反は、罰金で済まされるケースが多いです。
決勝でのピットロードの制限速度違反はドライブスルーペナルティが科せられる場合が多いです。ドライブスルーペナルティはレースを失ってしまうほどの大きなタイムロスとなるため、ピットロードの制限速度違反は重大な違反であると言えます。
F1では、フリー走行と公式予選でのピットロードの制限速度違反については罰金が科せられることになっています。制限速度を1km/hオーバーするごとに100ユーロの罰金が科せられることになっています。
昔はピットロードに制限速度はなかった
今ではピットロードに制限速度があることは常識ですが、昔はピットロードに制限速度はありませんでした。
過去のF1のピットストップの映像を観ていただければわかるのですが、ピット作業を終えたマシンが全開でピットロードを加速していく光景が当然のように繰り広げられていました。
F1では度重なる大きなアクシデントの発生を鑑み、安全への意識が高まっていた1994年のモナコGPからピットロードに制限速度が設定されるようになりました。
その後、他のレースカテゴリーにも展開され、制限速度も段階的に下げられていきました。
まとめ
現在のモータースポーツでは常識かもしれませんが、ピットロードには制限速度が設定されており、ピットロードを走行するすべての車両は制限速度を守る必要があります。
レースカテゴリーごとにピットロードの制限速度が異なりますが、どのカテゴリーにおいても違反するとペナルティが科せられます。
ピットロードの制限速度に関するレギュレーションはモータースポーツを観戦するうえで、基本的な内容だと思いますので、ぜひ理解しておいてはいかがでしょうか。
(2021年12月23日発行版)
2.3 ピットレーン
2.3.1 スピード制限
F1世界選手権およびオーバルサーキットを除くすべての国際サーキット競技において、プラクティスまたは決勝レースでピットレーンを使用する車両は、時速60kmを超えてはならない。これはピットレーン全体に適用され、速度超過についてのチェックが行われなければならない。