決勝のスタート時間になると、フォーメーションラップが始まり、ポールポジションの車両からコースを1周走行し、公式予選の順位から決められた自身のグリッドに到着します。その後、レッドシグナルの合図によってレースがスタートします。
モータースポーツを観戦したことがあれば、このようなレースのスタート手順についてはご存知かと思います。
フォーメーションラップが行われる前に、どのように各車両がコースインをして、グリッドに着いているのかご存知でしょうか?
スターティング・グリッド
決勝のスタートに先立ち、スタート順となる『スターティング・グリッド』が発表されます。
グリッド降格のペナルティ
また、F1のようにパワーユニットやギアボックスのシーズンを通して使用できる数がレギュレーションで定められているレースシリーズがあります。その場合、規定の数を超えてパワーユニットやギアボックスを使用すると、グリッド降格のペナルティが科せられる場合があります。
決勝前のリタイア
車両のトラブルを修復できなかったり、ドライバーの体調不良などの理由によって、決勝への出場を断念する場合もあります。
スターティング・グリッドが発表される前にリタイアの申告を行っていれば、通常は、そのグリッドは詰めてグリッドが決められます。
スターティング・グリッドが発表された後に決勝への出走を断念する場合、そのグリッドは空きの状態のままとなります。
レコノサンスラップ
決勝が始まる前、各車両は自身のピットで待機しています。そして、フォーメーションラップの開始時刻の前にピットロード出口のシグナルがレッドからグリーンに変わり、コースがオープンとなります。
各車両は自身のピットからコースインし、コースを1周走行した後にメインストレートにある自身のグリッドに着きます。
到着するグリッドはスターティング・グリッドに基づきます。このグリッドのことを『ダミー・グリッド』と呼び、フォーメーションラップが開始するまでここで待機します。
レコノサンスとは『偵察』を意味します。また、MotoGPに代表される二輪のレースでは、この周回を『サイティングラップ』と呼びます。
レコノサンスラップの時間は事前に決められています。レコノサンスラップの終了時刻になるとピットロード出口のシグナルがレッドに変わり、コースインすることができなくなります。
レコノサンスラップの終了時刻までにコースインすることができなかった車両はピットスタートとなります。
グリッドへの試走
国内のモータースポーツでは、決勝前のピットアウトしてグリッドに着くまでの周回のことを『グリッドへの試走』と呼びます。
レコノサンスラップと異なり、グリッドへの試走では、何度も周回を重ねることができず、1周のみの走行と定められている場合が多いです。
スタートの手順やタイムスケジュールはレースごとにドライバーズブリーフィングなどでドライバーやチームに周知される場合が多いです。この事前に周知された手順でレースのスタート進行が行われます。
決勝前の最終確認
レコノサンスラップはピットアウトをしてグリッドに着くだけの周回ですが、決勝前に走行できる重要な走行となります。
公式予選から天候や路面のコンディションが変化した場合は、どのタイヤで決勝をスタートするのかといった判断をしたり、ブレーキングポイントの確認といったことを、わずかな走行だけで見極める必要があります。
また、ピットロードの出口付近ではスタート練習を行うことが認められています。
このようにレコノサンスラップは短い時間ではありますが、決勝のスタートに向けて重要な最終確認の走行であると言えます。
2020年 F1第3戦ハンガリーグランプリ
2020年にハンガロリンクで開催されたF1第3戦ハンガリーグランプリでは、レッドブルのマックス・フェルスタッペン選手がウェットコンディションとなったレコノサンスラップでクラッシュしてしまいました。
浅溝のインターミディエイトタイヤでコースインをしましたが、濡れた路面でコントロールを失い、タイヤバリアにクラッシュしてしまいました。その結果、フロントウイングと左フロントのサスペンションを大きく損傷してしまいました。
フェルスタッペン選手はピットには戻らずに自走でグリッドに着き、メカニックはスタート進行が行われるグリッド上でマシンの修復作業を行いました。レギュレーションで規定されているフォーメーションラップ開始の3分前までに、メカニックは修復作業とタイヤの装着を完了させました。
フェルスタッペン選手は無事にレースをスタートすることができ、最終的にレースを2位でフィニッシュしました。
2022年 F1第2戦サウジアラビアグランプリ
2022年にジェッダ市街地コースで開催されたF1第2戦サウジアラビアグランプリではアルファタウリの角田裕毅選手がレコノサンスラップ中にマシントラブルが発生し、コース上にマシンを停めました。
角田選手は公式予選もマシントラブルで走行することができませんでした。スチュワードによって決勝への出場が認められましたが、決勝でも走行することなくレースを終えました。