2022年
『MotoGP』とは?
二輪(バイク)のレースカテゴリーとしては、1949年にスタートした国際モーターサイクリズム連盟『FIM』が公認している『FIMロードレース世界選手権 (FIM WORLD CHAMPIONSHIP)』が最も有名です。特に最高峰クラスの『MotoGP』クラスは世界一のライダーを決定する選手権として、世界中で広く人気があります。
出典:motogp.com
MotoGPクラスのマシンはレギュレーションの範囲内であれば、自由に開発することができるため、激しい開発競争が繰り広げられています。日本を代表する『ホンダ』、『ヤマハ』、『スズキ』がメーカーが直接レース活動を行うワークスチームとしてMotoGPクラスへ参戦しています。
四輪(クルマ)のモータースポーツではF1が最高峰クラスに該当しますが、二輪(バイク)のモータースポーツではMotoGPが最高峰クラスに該当します。
FIMロードレース世界選手権では最高峰クラスのMotoGPクラスだけでなく、ステップアップカテゴリーの『Moto2クラス』と『Moto3クラス』も併催されています。
FIMロードレース世界選手権は日本ではツインリンクもてぎ(現在はモビリティリゾートもてぎ)で日本グランプリとして開催されています。残念ながら、新型コロナウイルス『COVID-19』の感染拡大による影響のため、2020年と2021年の開催は中止となりました。また、以前は鈴鹿サーキットで開催されたこともありました。
スペインの『Dorna Sports (ドルナ・スポーツ)』がFIMロードレース世界選手権を統括し、商用権やTVの放映権などを管理しています。
MotoGP ロゴマーク
『MotoGP』『Moto2』『Moto3』クラス
FIMロードレース世界選手権は、車両の違いによって、上位クラスから『MotoGP』、『Moto2』、『Moto3』の3クラスで選手権が開催されています。
MotoGPクラス
MotoGPクラスの車両に搭載されるエンジンは『排気量1000cの4ストロークで最大4気筒』と定められています。
2022年シーズンのMotoGPクラスはホンダ、ヤマハ、スズキ、ドゥカティ、KTM、アプリリアといったバイクメーカーがMotoGPのテクニカルレギュレーションに準拠したオリジナルのバイクで参戦しています。
MotoGPクラスのタイヤは『ミシュラン』のワンメイクです。
MotoGPクラスに参戦するライダーは18歳以上である必要があります。また、参戦できるのは50歳に達したシーズン終了時までと定められています。
出典:honda.racing
Moto2クラス
Moto2クラスの車両はトライアンフ製の公式エンジンを搭載しなければなりません。2022年シーズンの公式エンジンは排気量765ccの4ストローク3気筒エンジンとなっています。
Moto2クラスは2010年にスタートしました。2010年から2018年までホンダが市販車のCBR600RRの改良したエンジンを公式エンジンとして供給していましたが、2019年からトライアンフがMoto2クラスへエンジンを供給しています。
Moto2クラスのマシンはワンメイクの公式エンジンと、シャシービルダーが製作するMoto2用のオリジナルシャシーで構成されています。2022年シーズンでは『カレックス』、『ボスコスクロ』、『GASGAS』、『MVアグスタ』がシャシーを製作しています。
Moto2クラスのタイヤは『ダンロップ』のワンメイクです。
Moto2クラスに参戦するライダーは16歳以上である必要があります。また、参戦できるのは50歳に達したシーズン終了時までと定められています。ただし、2023年から最低年齢が18歳以上へ改められます。
出典:honda.racing
Moto3クラス
Moto3クラスの車両に搭載されるエンジンは『排気量250cの4ストローク単気筒』と定められていますが、Moto2クラスのようにエンジンはワンメイクではありません。
2022年シーズンのMoto3クラスのマシンは『ホンダ』、『KTM』、『ハスクバーナ』、『GASGAS』、『CFMoto』が製作しています。
Moto3クラスのタイヤは『ダンロップ』のワンメイクです。
Moto3クラスに参戦するライダーは16歳以上かつ28歳以下となっており、新規にMoto3クラスに参戦できるのは25歳までと定められています。ただし、2023年から最低年齢が18歳以上へ改められます。
出典:honda.racing
FIM ロードレース世界選手権
『MotoGPクラス』
2022年 エントリーリスト
No. | ライダー | チーム | コンストラクター |
43 | ジャック ミラー | ドゥカティ レノボ チーム | ドゥカティ |
63 | フランセスコ バニャイア | ||
23 | エネア バスティアニーニ | グレシーニ レーシング MotoGP | ドゥカティ |
49 | ファビオ ディ ジャンアントニオ | ||
5 | ヨハン ザルコ | プラマック レーシング | ドゥカティ |
89 | ホルヘ マルティン | ||
10 | ルカ マリーニ | ムーニー VR46 レーシングチーム | ドゥカティ |
72 | マルコ ベツェッキ | ||
20 | ファビオ クアルタラロ | モンスターエナジー ヤマハ MotoGP | ヤマハ |
21 | フランコ モルビデリ | ||
04 | アンドレア ドビツィオーゾ | WithU ヤマハ RNF MotoGPチーム | ヤマハ |
40 | ダーリン ビンダー | ||
36 | ジョアン ミル | チーム スズキ エクスター | スズキ |
42 | アレックス リンス | ||
44 | ポル エスパルガロ | レプソル ホンダ チーム | ホンダ |
93 | マルク マルケス | ||
30 | 中上貴晶 | LCR ホンダ | ホンダ |
73 | アレックス マルケス | ||
12 | マーベリック ビニャーレス | アプリリア レーシング | アプリリア |
41 | アレイシ エスパルガロ | ||
33 | ブラッド ビンダー | レッドブル KTM ファクトリー レーシング | KTM |
88 | ミゲール オリベイラ | ||
25 | ラウル フェルナンデス | テック3 KTM ファクトリー レーシング | KTM |
87 | レミー ガードナー |
FIM ロードレース世界選手権
2022年 開催スケジュール
ラウンド | 日程 | グランプリ | サーキット |
第1戦 | 3/4~3/6 | カタール | ロサイル インターナショナル サーキット |
第2戦 | 3/18~3/20 | インドネシア | マンダリカ インターナショナル ストリート サーキット |
第3戦 | 4/1~4/3 | アルゼンチン | テルマス デ リオ オンド |
第4戦 | 4/8~4/10 | アメリカズ | サーキット オブ ジ アメリカズ |
第5戦 | 4/22~4/24 | ポルトガル | アルガルヴェ インターナショナル サーキット |
第6戦 | 4/29~5/1 | スペイン | ヘレス サーキット |
第7戦 | 5/13~5/15 | フランス | ブガッティ サーキット |
第8戦 | 5/27~5/29 | イタリア | アウトドローモ インテルナツィオナーレ デル ムジェロ |
第9戦 | 6/3~6/5 | カタルーニャ | カタロニア サーキット |
第10戦 | 6/17~6/19 | ドイツ | ザクセンリンク |
第11戦 | 6/24~6/26 | オランダ | TT サーキット アッセン |
第12戦 | 7/8~7/10 | フィンランド | キュミリング |
第13戦 | 8/5~8/7 | イギリス | シルバーストーン サーキット |
第14戦 | 8/19~8/21 | オーストリア | レッドブルリンク |
第15戦 | 9/2~9/4 | サンマリノ | ミサノ ワールド サーキット マルコ シモンチェリ |
第16戦 | 9/16~9/18 | アラゴン | モーターランド アラゴン |
第17戦 | 9/23~9/25 | 日本 | モビリティリゾートもてぎ |
第18戦 | 9/30~10/2 | タイ | チャーン インターナショナル サーキット |
第19戦 | 10/14~10/16 | オーストラリア | フィリップアイランド グランプリ サーキット |
第20戦 | 10/21~10/23 | マレーシア | セパン インターナショナル サーキット |
第21戦 | 11/4~11/6 | バレンシア | バレンシア サーキット |
MotoGPのフラッグルール
MotoGPに代表される二輪(バイク)レースのフラッグルールは四輪(クルマ)レースのフラッグルールと共通点が多いですが、いくつかのフラッグにおいては意味や提示の方法が異なります。レッドクロス旗など二輪にしか無いフラッグもあるため注意が必要です。
FIM ロードレース世界選手権
タイムスケジュール
FIM ロードレース世界選手権では、各大会ごとのMotoGPクラス、Moto2クラス、Moto3クラスそれぞれの走行セッションのタイムスケジュールが決められています。
基本的に各大会は以下のようなタイムスケジュールで走行セッションが開催されます。木曜日は車検が行われます。
金曜日
時間 | クラス | セッション |
9:00~9:40 | Moto3 | Free Practice 1 |
9:55~10:40 | MotoGP | Free Practice 1 |
10:55~11:35 | Moto2 | Free Practice 1 |
13:15~13:55 | Moto3 | Free Practice 2 |
14:10~14:55 | MotoGP | Free Practice 2 |
15:10~15:50 | Moto2 | Free Practice 2 |
土曜日
時間 | クラス | セッション |
9:00~9:40 | Moto3 | Free Practice 3 |
9:55~10:40 | MotoGP | Free Practice 3 |
10:55~11:35 | Moto2 | Free Practice 3 |
12:35~12:50 | Moto3 | Qualifying 1 |
13:00~13:15 | Moto3 | Qualifying 2 |
13:30~14:00 | MotoGP | Free Practice 4 |
14:10~14:25 | MotoGP | Qualifying 1 |
14:35~14:50 | MotoGP | Qualifying 2 |
15:05~15:20 | Moto2 | Qualifying 1 |
15:30~15:45 | Moto2 | Qualifying 2 |
日曜日
時間 | クラス | セッション |
9:00~9:10 | Moto3 | Warm Up |
9:20~9:30 | Moto2 | Warm Up |
9:40~10:00 | MotoGP | Warm Up |
11:00~ | Moto3 | Race |
12:20~ | Moto2 | Race |
14:00~ | MotoGP | Race |
MotoGPクラスの公式予選
MotoGPクラスの公式予選は15分間のQP1 (Qualifying Practice 1)と15分間のQP2 (Qualifying Practice 2)の2回のセッションで構成されます。
公式予選に出場するための資格
QP1およびQP2へ出場するためには、公式予選の前に行われる4回のフリー走行(FP1、FP2、FP3、FP4)のいずれかで、そのときのセッションで記録された最速タイムの105%以内のタイムを記録する必要があります。
QP1およびQP2へ出場する資格が与えられたライダーは自動的に決勝へ出場することが認められます。
急遽、3回目のフリー走行(FP3)以降から参加することになったライダーに関しては、FP3とFP4で最速タイムの105%以内のタイムを記録することができなかったとしても、QP1へ出場することが認められます。ただし、決勝に出場するためには、QP1で最速タイムの105%以内のタイムを記録する必要があります。
公式予選『QP1』、『QP2』
公式予選の前に行われるFP1、FP2、FP3の3回のフリー走行でそれぞれ記録されたベストタイムを合計し、上位10名のライダーに対してQP2への出場資格が与えられます。
QP2への出場資格が与えられなかったライダーはQP1へ出場します。QP1で上位2名のライダーに対してQP2への出場資格が与えられます。
QP1で上位2位以内に入れなかったライダーの公式予選の順位は上位から順に13位、14位、15位・・・となります。
QP2は12名のライダーで争われ、記録したラップタイムの速い順に1位から12位の順位が決定します。
決勝のスタート手順
サイティングラップ
決勝のスタート時刻の25分前 (Moto2、Moto3は15分前)になると、ピットレーン出口のシグナルがグリーンとなり、ピットレーンはオープンの状態となります。各ライダーはピットからコースインをして、公式予選結果で決められた自身のグリッドに着きます。
F1では、この周回を『レコノサンスラップ』と呼びますが、二輪レースでは『サイティングラップ (Sighting Lap)』と呼びます。
ピットレーンは5分間オープンの状態となり、各ライダーはこの間にコースインする必要があります。もし、コースインすることができない場合は、ウォームアップラップから合流することができます。ただし、決勝のスタートは最後尾からのスタートとなります。
サイティングラップ中はピットレーンを通過することで複数の周回を走行することができます。マシンセッティングの調整や給油が認められます。MotoGPクラスにおいては車両を変更することも認められています。
決勝のスタート時刻の20分前 (Moto2、Moto3は10分前)になると、ピットレーン出口のシグナルがレッドとなり、ピットレーンはクローズの状態となります。
スタート進行
グリッド上では決勝に向けて、マシンセットアップの調整やタイヤ交換を行うことができます。タイヤウォーマーの使用も認められています。
MotoGPクラスではピットロードの出口がクローズした後は、天候に関するタイヤ交換は認められていません。天候に関するタイヤ交換を実施した場合は、ウォームアップラップをピットレーンからスタートしなければならず、さらにレースがスタートした後、3周以内にライドスルーペナルティを消化する必要があります。
グリッド上での作業は決勝のスタート時刻の3分前までに完了しなければなりません。
各ライダーはスタート時刻の30秒前までにエンジンを始動しておく必要があります。
ウォームアップラップ 開始 |
内容 |
3分前 | 全ての車両はタイヤの装着を完了 3名のメカニック以外を除き、グリッドから退去 |
1分前 | タイヤウォーマーを外さなければならない メカニックはグリッドから退去 |
30秒前 | エンジン始動完了 この後グリーンフラッグが振られ、ウォームアップラップ開始 |
ウォームアップラップ
四輪レースのフォーメーションラップのように二輪のレースにおいても、決勝のスタートに先立ち『ウォームアップラップ』が行われます。
フォーメーションラップと異なり、ウォームアップラップでは他の車両を追い越すことが認められています。
ウォームアップラップが開始となり、グリッド上の車両がすべてピットロード出口付近を通過したらピットロード出口のシグナルが30秒間グリーンとなり、ピットスタートの車両はコースインをして、最後尾からレースをスタートすることができます。
レーススタート
ウォームアップラップが完了し、各ライダーは自身のグリッドに着きます。グリッド前方にはレッドフラッグが提示されます。すべての車両がグリッドに着くと、グリッド後方でグリーンフラッグが振られます。
そのあと、グリッド前方で提示されていたレッドフラッグが撤去され、スターターはレッドシグナルを点灯させます。
スターターによって、レッドシグナル点灯から2~5秒後にレッドシグナルが消灯され、消灯のタイミングでレーススタートとなります。
『ドライレース』『ウェットレース』
二輪レースの場合、ドライ用のスリックタイヤでは濡れた路面を安定して走行することができません。また、車両の構造上、四輪レースのようにレース中にピットインしてウェット用のタイヤへ交換することも困難であったりします。
そこで、決勝前にレースが『ドライレース』で行われるのか『ウェットレース』で行われるのかレースディレクションからアナウンスがあります。
ドライレース
路面がドライの状態の場合、『ドライレース』となります。ドライレースもしくはウェットレースのアナウンスが無かった場合、自動的にそのレースはドライレースとなります。
ドライレースでレースがスタートした場合、レース中に雨が降ってくるなどしてタイヤを交換する必要が発生したときには、MotoGPクラスではホワイトフラッグ (白旗)が振られ、ピットインをしてウェット用にセッティングされた車両に乗り換えることが認められます。
Moto2クラスおよびMoto3クラスでは、レッドフラッグが振られ、レースは中断されます。ウェットコンディション用にタイヤ交換やセッティングを調整した後、再度レースが再開されます。
ウェットレース
ウェットレースでレースがスタートした場合、路面コンディションが変わるなどして、タイヤを交換する必要が発生した場合でもレースは中断されません。タイヤ交換をする場合はピットインをしなければなりません。
MotoGPクラスのタイヤルール
MotoGPクラスのタイヤは『ミシュラン』のワンメイクです。
ドライタイヤ
MotoGPクラスでは各大会で使用できるドライタイヤの本数はフロントタイヤが10本、リアタイヤが12本の合計22本と定められています。ただし、供給されるタイヤの本数はタイヤサプライヤーやテクニカルディレクターなどによる協議の結果、変更される場合があります。
フロント:最大10本
リア:最大12本
コンパウンドはグリップレベルが異なる『ハード』、『ミディアム』、『ソフト』の3種類から選択することができます。
10本のフロントタイヤの内、ハード、ミディアム、ソフトの各コンパウンドはそれぞれ最大で5本までしか使用することができません。
12本のリアタイヤの内、ハードは3本まで、ミディアムは4本まで、ソフトは6本までしか使用することができません。
公式予選でQP1とQP2の両方のセッションに参加する2名のライダーについては、任意のコンパウンドのフロントタイヤ1本とソフトコンパウンドのリアタイヤ1本が追加で供給されます。QP1、QP2がウェットコンディションで行われた場合は、ドライタイヤの追加供給は行われません。
レインタイヤ
MotoGPクラスでは各大会で使用できるレインタイヤの本数はフロントタイヤが6本、リアタイヤが7本の合計13本と定められています。コンパウンドは2種類から選択することができます。
フロント:最大6本
リア:最大7本
ポイント
複数台のエントリーがあるチームに対しては、最上位の順位に応じたポイントが与えられます。
MotoGP、Moto2、Moto3それぞれのクラスのライダーとチームにタイトルがあり、シーズンを通して最も多くのポイントを獲得したライダーとチームがチャンピオンとなります。
同ポイントの場合は、ベストリザルトの回数が多い方が上位となります。もし、ベストリザルトの回数が同じになった場合は、ベストリザルトを記録した日付が新しい方が上位となります。
ワイルドカードで出場したライダーにはポイントが与えられません。
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 | 7位 | 8位 |
25 | 20 | 16 | 13 | 11 | 10 | 9 | 8 |
9位 | 10位 | 11位 | 12位 | 13位 | 14位 | 15位 |
7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
関連サイト
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