【6/15】2022年 F1レギュレーションの主な変更内容

 

モータースポーツにおけるカーボンニュートラル実現に向けての取り組み

 

2020年10月2日、ホンダがF1活動を終了することを発表しました。F1活動を終了する理由として『2050年カーボンニュートラルの実現』を挙げたことは記憶に新しいかと思います。

 

 

カーボンニュートラルとは排出するCO2の量をゼロにしようとする考えで、自動車が走行しているときにガソリンを燃やして排出するCO2だけではなく、自動車の開発や生産の工程において排出されるCO2の量もゼロにしなければなりません。

すべての工程で排出されるCO2の量をゼロにすることは実現困難であるため、排出したCO2の量だけ、植樹などによってCO2を浄化するなどして、プラスマイナスゼロを実現することでカーボンニュートラルを達成しようとしています。

モータースポーツはガソリンを使用して大量のCO2を排出しているイメージがありますが、将来に向けてモータースポーツが存続するためにもカーボンニュートラルの実現は避けては通れなくなっています。

各レースカテゴリーでパワーユニットの電動化による燃費の改善や新たな燃料の導入によって、カーボンニュートラルを実現しようとした取り組みが行われていますので、わかりやすくまとめてみました。

 

 

FIA Formula 1 World Championship

F1では2030年までにF1マシンから排出されるCO2の量を実質ゼロにする目標を掲げています。

CO2の排出量をゼロにするために、F1はフォーミュラEのような電動フォーミュラカーのシリーズへ変化していくのではありません。しばらくは現在のようにエンジンを主体としたパワーユニットの使用を継続すると考えられています。

どのようにしてCO2の排出量をゼロにしていくのかというと、パワーユニットの燃費の改善は当然として、使用する燃料がガソリンではなく、『e-Fuel (イー・フューエル)』と呼ばれる新たな燃料を導入していくと考えられています。

e-Fuelとは、水を電気分解して生成された水素(H2)と工場などから排出されたCO2を合成して製造される新たな燃料のことで、ガソリンと混合して使用されます。

e-Fuelを燃料とするF1マシンが走行するときにCO2を排出したとしても、e-Fuelの製造工程でCO2を吸収しているため、トータルのCO2の排出量がプラスにならなければ、CO2の排出量は実質ゼロとなります。

e-Fuelの導入に先駆けて、F1では2022年シーズンから、ガソリンに添加されているエタノールの混合率を現在の7.5パーセントから10パーセントに引き上げた『E10 (イー・テン)』と呼ばれる燃料が導入される予定です。これにより、わずかではありますが、ガソリンの使用量を削減することができます。

また、F1は2023年シーズンからe-Fuelの導入を開始する予定で、将来的にe-Fuelの混合比率を高め、目標としている2030年までにCO2の排出量ゼロの実現を達成すると考えられます。

カーボンニュートラルの実現に向けては、F1マシンの開発や製造の工程で排出されるCO2をゼロにしなければならないため、簡単なことではありません。

量産車においては、世界的にガソリンエンジン車から電気自動車へ移行する段階に来ていますが、F1では、新たな燃料を採用することによって、エンジンを主体としたパワーユニットの使用が継続されていくのではないかと考えられています。

 

 

インディカーシリーズ

北米で開催されているインディカーシリーズでは以前からメタノールやエタノールといったアルコール系の燃料が使用されてきました。

2021年のインディカーシリーズではエタノールが85パーセント、無鉛ガソリンが15パーセントの『E85』と呼ばれる混合燃料が採用されています。

E85は北米や南米のガソリンスタンドでガソリンよりも安価に購入することができ、E85を燃料として走行できる『フレキシブル・フューエル・ビークル (FFV)』が各自動車メーカーから発売されてます。

E85に添加されるエタノールはトウモロコシやサトウキビから生成され、『バイオエタノール』と呼ばれます。

ただし、e-Fuelと異なり、バイオエタノールの生成工程でCO2を排出するため、バイオエタノールを採用することが、排出されるCO2を削減できるわけではありません。

将来的に、バイオエタノールの生成工程で排出されるCO2の量が削減できるようになるかもしれません。また、インディカーシリーズがe-Fuelのような別の新たな燃料へシフトしていくのかもしれません。

そのため、インディカーシリーズのカーボンニュートラルの実現については、まだ課題があると考えられます。

インディカーシリーズのカーボンニュートラル実現に向けた第一歩として、2023年シーズンから2.4リッターのハイブリッドエンジンが導入される予定となっています。

ハイブリッドエンジンの導入により、燃費の向上、つまりCO2の排出量の削減が期待できます。

 

 

World Rally Championship (WRC)

WRC (世界ラリー選手権)では、カーボンニュートラルの実現に向けての具体的な取り組みについての発表は行われていませんが、排出されるCO2の削減に向けて大きく変わろうとしています。

WRCでは、2022年シーズンから技術規則が変わり、共通のハイブリッドシステムを搭載した『RALLY1』カーが導入される予定となっています。RALLY1カーはこれまでのWRカーに代わり、WRCのトップカテゴリーに位置付けられます。

また、WRCではRALLY1カーの導入に伴い、100パーセント・サステナブル燃料を導入することが明らかにされています。

P1レーシング・フューエルズが2022年から3年間にわたってe-Fuelとバイオ燃料を混合した化石燃料を使用しない新たな燃料をWRCに供給することが決定しています。

 

 

SUPER GT / スーパーフォーミュラ

SUPER GTでは2021年SUPER GT 第2戦 富士スピードウェイ大会の開催期間中に行われたGTアソシエイションの代表取締役の坂東正明氏が行った定例記者会見でSUPER GTのカーボンニュートラルについての取り組みについて説明がありました。

SUPER GTにおいてもF1と同様に2030年にCO2の排出量ゼロの実現を目標とし、2024年からe-Fuelを混合した新たな燃料を導入していく意向であることが語られました。

SUPER GTでは2024年シーズンからGT500クラスの技術規則が改訂される予定となっています。そこで、まずは、自動車メーカー3社による開発競争が行われているGT500クラスでe-Fuelが導入され、その後GT300クラスへ展開されていくと考えられます。

現在、SUPER GTで採用されている『NRE』と呼ばれる2リッターのターボエンジンはスーパーフォーミュラと共通仕様となっています。開発コストを鑑みると将来のパワーユニットにおいてもSUPER GTとスーパーフォーミュラは共通の仕様のものを採用し続けるのではないかと考えます。

スーパーフォーミュラを運営しているJRPからはカーボンニュートラル実現に向けての取り組みについての説明はまだありませんが、スーパーフォーミュラにおいても、SUPER GTと同様に早ければ2024年シーズンからe-Fuelを混合した燃料を導入していくかもしれません。

また、国内で開催されているレースカテゴリーで使用される燃料は開催サーキットにあるガソリンスタンドで入手することになっています。

e-Fuelのような新たな燃料が導入された場合、どのようにe-Fuelを保管するのか、どのようにガソリンへ添加するのか、といった課題が出てくるかもしれません。

 

 

まとめ

モータースポーツにおいてもカーボンニュートラルの実現に向けて、様々な取り組みがスタートしようとしています。

まずは、レーシングカーが走行している時のCO2の排出量をゼロにするために、パワーユニットの電動化などによる燃費の改善とe-Fuelのような新たな燃料の導入が検討されています。

走行時のCO2の排出量をゼロにすることができれば、次にレーシングカーの開発や製造の工程で排出されるCO2の量を削減していくのだと考えられます。

カーボンニュートラルの実現は困難であるため、将来に向けてモータースポーツが生き残るためにも必要なことだと認識しなければなりません。また、これから大きく変わっていくモータースポーツの世界を受け入れていく必要があると考えます。

 

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