2024年 SUPER GT 第1戦 岡山国際サーキット 開催概要

 

セーフティカーが導入されるとき

 

セーフティカーはコース上に車両がストップしているなどの危険な状態が存在し、レースを中断するまでもないときに導入されます。どのようなときに、セーフティカーが導入されるのか、セーフティカーが導入されたらどのようなルールを守らなければいけないのかなどを解説します。

最近は、セーフティカー以外にも、F1ではバーチャルセーフティカー(VSC)、WECではフルコースイエロー(FCY)の運用が始まり、SUPER GTでは独自のセーフティカー運用があるなど、モータースポーツのルールが複雑化しています。

 

 

 

セーフティカーが導入される時

コース上に車両がストップするなどの危険な状態が存在したり、大雨などによってレーシングカーが安全に走行できないと判断された場合に、セーフティカーが導入されます。

セーフティカーが導入される具体的な例としては以下のようなケースです。

 

  • アクシデントや車両のトラブルによりコース上に車両が停止した
  • スピンなどによりエンジンストールし再スタートできない車両がコース上に停止した。
  • 車両火災が発生した
  • 大雨によりレースの続行に危険がある
  • 停止車両がコース上でなくても、車両回収にあたりコースマーシャルに危険が及ぶ可能性がある
  • コース上に大きな落下物があり、コースマーシャルが回収するのが困難と考えられる場合

 

 

例:アクシデントでコース上に車両が停止した

アクシデントによって走行できなくなった車両がコース上に停止するような場合、セーフティカーが導入される可能性が高いです。最近ではコース上ではなくても、車両撤去のためにホイールローダーのような作業車がコース脇に介入するような場合でもセーフティカーが導入されることが多くなっています。

 

出典:youtube.com

 

例:コース上に車両が停止した (エンジン停止)

アクシデントではなくても、スピンなどによってコース上に停止した車両のエンジンが止まってしまった場合も、車両を安全にコース上から撤去するために、セーフティカーが導入される場合があります。

 

出典:youtube.com

 

2015年 FIA Formula 1 第13戦 シンガポールGP

2015年F1シンガポールGPではコース上に侵入者が現れたため安全を考慮しセーフティカーが導入されました。コースへの侵入者によるセーフティカー導入は2003年イギリスGPや2000年ドイツGPでも発生しています。

 

出典:youtube.com

 

セーフティカーが導入されると

セーフティカーが導入されると、コース脇にある全てのオブザベーションポストで『イエローフラッグ』が振られ、『SC』ボードが提示されます。この時点で、コース全域で追い越しが禁止されます。セーフティカーを追い越すことも禁止されます。

 

全てのオブザベーションポストでイエローフラッグが振られ、SCボードが提示される。
コース全域で追い越し禁止

出典:youtube.com

 

セーフティカーがコースイン

セーフティカーが導入されると、セーフティカーがピットロード出口からコースインします。セーフティカーは無作為にコースインするのではなく、トップの車両の前にセーフティカーが入ることが多いです。これは、セーフティカーを解除するとき、レース展開を考慮して、トップの車両が隊列の先頭の状態で再スタートするようにしたいためです。

 

競技車両はセーフティカーを先頭とした隊列を形成

セーフティカーは速度をコントロールして走行するため、周回を重ねると、セーフティカーを先頭とした競技車両の隊列がつくられます。車両と車両の間隔は5車身を目安に走行しなければならず、不必要に前後の間隔を空けて走行することは禁止されています。

出典:youtube.com

 

セーフティカー導入中は減速走行

セーフティカー導入中はコース全域がイエローフラッグ区間と同じように扱われます。そのため、スピンやコースアウトしたりすると『セーフティカー運用手順違反』としてペナルティを科される場合があります。

 

セーフティカーがピットロードを走行する場合がある

メインストレートでアクシデントが発生し、ドライバーの救出や車両回収などの作業を行う場合は、セーフティカーはメインストレートではなく、ピットロードを走行する場合があります。

その場合、セーフティカーはピットインし、ピットロードを走行するため、後続の競技車両もセーフティカーに続いて、ピットロードを走行しなければなりません。

 

 

順位は変わらないがタイム差はなくなる

セーフティカーが導入されると、コース上での追い越しは禁止されますが、セーフティカー先導となることにより走行速度がスローとなるため、セーフティカー導入前に築いてきた後方車両とのタイム差は無くなります。そのためセーフティカーが解除された後、レースは仕切り直しとなります。

F1で導入されているバーチャルセーフティカー(FCY)やWECなどで導入されているフルコースイエロー(FCY)はすべての車両の区間タイムや速度を一斉に制限することによって、各車両のタイム差をキープしたまま、レースを中断することなく減速させることに成功しています。

 

 

セーフティカーを追い越しても良い場合

セーフティカーが導入されている間はセーフティカーを先頭とした隊列を形成して走行しますが、先頭のセーフティカーを追い越してもよい場合があります。

 

  • セーフティカーから合図された場合
  • セーフティカー導入時、ピットアウトしたセーフティカーが第2セーフティカーラインを超えていない場合
  • レース再開時、ピットインするセーフティカーが第1セーフティカーラインを超えた場合

 

セーフティカーの後方の車両がトップの車両ではない場合、セーフティカーはその車両を先に行かせるように合図することがあります。これは、そのままレースを再開するとトップの車両の前に周回遅れの車両が存在する状態となるため、レース展開を考慮した対応です。

セーフティカーが緑色の回転灯を点灯させているとき、これがセーフティカーを追い越しても良い合図となります。この時、セーフティカーの後ろを走行している車両はセーフティカーを追い越しても構いません。

 

セーフティカーラインとは?

 

 

セーフティカー中でも追い越しが許可される場合

セーフティカーが導入されている間はコース全域で追い越しが禁止されます。ただし、セーフティカーが導入されている間でも追い越しが認められるケースがあります。

  • ピットインする車両が第1セーフティカーラインを超えた場合
  • セーフティカースタートのとき、グリッドを離れる際に少し出遅れた車両は追い越して元の順位に戻ることができます。

 

 

セーフティカー中のピットイン

国際モータースポーツ競技規則付則H項に準拠しているレギュレーションの場合、セーフティカーが導入されている間にピットインすることができます。SUPER GTなど、カテゴリーによってはセーフティカー導入中のピットインが禁止されている場合もあります。その時は特別規則書に規定されます。

セーフティカーが導入されると、車両同士のタイム差はなくなります。ピットインをしてピット作業を行っても、失ったタイムはすぐに取り戻すことができます。そのため、セーフティカーが導入されるとピットストップを行っていなかったドライバーは一斉にピットインすることが多いです。

セーフティカーが導入されると多くのドライバーがピットストップをするので、このときに、ピットストップをしなければ、大きく順位を上げることができます。その代わり、セーフティカーが解除された後でピットストップをする必要があります。セーフティカーが導入される前にすでにピットストップが完了していれば大きく順位を上げることができるので有利になります。

 

ピットロード出口のクローズ

セーフティカーを先頭とする隊列がメインストレートを通過するときはピットロード出口のシグナルが赤色に変わります。シグナルが赤のときはピットアウトすることができません。シグナルが緑色になるまで、ピットロード出口で待たなければなりません。

セーフティカーを先頭とする隊列が通過すると、シグナルが緑色に変わり、コースインすることができます。

 

 

2台のセーフティカーが導入される場合

1周の距離が7kmを超えるサーキットにおいては、2台のセーフティカーを使用すること認められます。2台目のセーフティカーのコースインはピットロードではなく、あらかじめ決められたコースの中間地点付近からコースインします。

セーフティカーが解除されるとき、2台目のセーフティカーはピットロードへ入るのではなく、中間地点のポイントからコースアウトします。この中間地点にまセーフティカーラインがあり、このラインは『インターミディエイトセーフティカーライン』と呼ばれます。

 

 

セーフティカーの速度

TV中継を観ているとセーフティカーの速度はレーシングカーと比べてかなり遅いように感じますが、実際は100km/h前後の速度で走行しています。F1のように非常に速い速度で走行するカテゴリーではセーフティカーも競技車両に合わせて速い速度で走行する必要があります。

セーフティカードライバーにはひどい雨の中でもコースアウトやスピンしたりせずに走行し続ける必要があるため、高いドライビングスキルが求められます。

セーフティカーの速度は常に一定ではなく、セーフティカーが導入された直後は隊列を形成するために速度を落としたり、レースの再開が近づいてきたら競技車両のタイヤの温度を下げすぎないように速度を上げたりするなど、レースコントロールの指示に従い状況に応じて速度を変えて走行しています。

特にレース再開時にセーフティカーの回転灯が消灯した後は、競技車両との間隔を広げるために全開で走行する必要があります。

 

 

セーフティカー解除の手順

セーフティカーによる先導走行の間に、レース再開に向けて、ストップした車両の回収作業などが行われます。コース上の危険が取り除かれたら、セーフティカーが解除となりレースが再開されます。セーフティカー解除の手順についてはこちらを参照ください。

 

 

 

セーフティカー導入中の違反

 

 

関連リンク

 

 

国際モータースポーツ競技規則 付則H項

(2021年12月23日発行版)

2.10 セーフティカー運用手順
決勝レースの非競技化

2.10.8 セーフティカー配備の命令が下された場合、セーフティカーの活動中、すべてのマーシャルポストは黄旗の振動表示と「SC」のボードを表示し、スタートライン上ではオレンジライトが点灯される。

2.10.9 セーフティカーはオレンジライトを点灯させながらピットレーンからスタートし、レースの先頭車両の位置に関係なくトラック上に合流する。

2.10.10 その後、すべての競技車両はセーフティカーの後方に隊列を作って整列し、その隊列はセーフティカーから車両5台分の距離で続き、以下の例外を除いて、セーフティカーがピットレーンに戻った後車両がスタートライン(もしくは次の決勝レースの非競技化終了地点)に到達するまで追い越しは禁止される。
次の状況においては、追い越しが許される。

  • セーフティカーから合図された場合
  • 後述2.10.18の場合
  • ピットに進入する車両は、2.10.2 に規定される第1セーフティカーラインを超えた後、他の車両およびセーフティカーを追い越すことができる。(※1)
  • トラック上を走行する車両は、ピットを離れる車両が2.10.2に規定される第2セーフティカーラインを超えるまではピットを離れる車両を追い越すことができる。(※2)
  • トラック上の車両は、セーフティカーがピットレーンまたは各中間配置地点に戻る時、セーフティカーラインを通過すればセーフティカーを追い越すことができる。(※3)
  • - セーフティカーがピットレーンを使用している間、指定されたガレージエリアに停車している車両を追い越すことができる。
  • - 明らかに問題を抱えて車両がスローダウンしている場合。

JAF公認競技会における措置:
JAF公認競技会においては前述の(※1)~(※3)については、これを適用しない。ただし、国際格式競技については当該条項を適用することができる。その際には、当該競技会に関連する競技規則(選手権規定、シリーズ統一規則、競技会特別規則書など)に明記されなくてはならない。

2.10.11 セーフティカーが活動中、必要以上の減速走行、異常走行、またはいつなんどき他のドライバーへ危険が及ぶかもしれない走行をしている車両がある場合、審査委員会に報告するものとする。これにより当該車両がトラック、ピット入口、ピットレーン、またはピット出口のいずれを走行しているかを把握するものとする。

2.10.12 競技長から指示があった場合、搭乗するオブザーバーは、セーフティカーと先頭車両の間にいる車両に対してグリーンライトを使ってセーフティカーの前に出るよう合図する。これらの車両は減速したまま他の車両を追い越したりせず走行を続け、セーフティカー後方の隊列につく。
セーフティカーの後部にはレース先頭車両のゼッケンを表示する電気式制御パネルを取り付けることもできる。その表示がなされている時、セーフティカーと、表示されたゼッケンのレース先頭車両までの間の車両は、セーフティカーを追い越せる。

2.10.13 セーフティカーは、少なくとも先頭車両がその後方につき、残りの全車両がさらにその後方に整列するまで活動を続ける(なお、複数のセーフティカーが活動している時は、当該セーフティカーが受けもつ区間にいる全車両がその後方に整列するまで)。
セーフティカーの後方についたら、レース先頭車両(またはその区間の先頭車両)は車両5台分以内の車間距離で続き(後述 2.10.15の状況下では除く)、残りの車両はできる限り詰めて隊列を保たなければならない。

2.10.14 セーフティカーが活動中、競技車両はピットレーンに進入できるが、ピットレーン出口の緑色灯火が点灯している時に限りトラックに再合流することができる。
セーフティカーならびにそれに続く隊列がピット出口を通過中、または通過しようとしている時以外は、緑色灯火は常に点灯している。トラックに再合流する車両は、セーフティカーに続く車両の隊列の末尾に到達するまで適切な速度で走行しなければならない。
特定の状況下では、競技長はセーフティカーにピットレーンの使用を要請できる。この場合、セーフティカーのオレンジライトが点灯していることを条件として、全車はセーフティカー後方に続いて追い越しをすることなくピットレーンに進まなければならない。この状況でピットレーンに入った車両は自己のガレージエリアに停車することができる。

2.10.15 競技長がセーフティカーを呼び戻す時は、セーフティカーはオレンジライトを消灯するものとする。これはセーフティカーがその周回を終了した時点でピットレーンに入ることの合図となる。この時点でセーフティカー後方に位置する先頭車両が走行ペースを決定することができ、必要であればセーフティカーとの車間距離を車両5台分以上としても構わない。
セーフティカーがピットに戻るまでの間、事故の可能性を回避するために、車上のライトが消灯された地点から、各ドライバーは、加速、減速、または他のドライバーを危険に晒したり再スタートを妨げたりする戦術的操作といった異常な行為を行なうことなく一定の速度で走行しなければならない。
セーフティカーがピット入口に進入すると同時に、マーシャルポストの黄旗とSCボードが撤去され、それらに代わり緑旗が振動表示され、スタートライン上と非競技化終了中間配置地点で緑色灯火が点灯する。これらは最終の車両がスタートラインを通過するまで表示される。
セーフティカーが複数台ある場合、呼び戻しは正確に同時進行させなければならない。

2.10.16 セーフティカーが活動中の各周回は、決勝レース周回として数えられる。

2.10.17 最終周回の開始時点でもまだセーフティカーが出動中である場合、あるいは最終周回に出動した場合、セーフティカーはその周回の終了時にピットレーンに入り、競技車両は追い越しすることなしにそのままの状態でチェッカーフラッグを受ける。